(1)日本がNATOとこういうつながりを持つのは意味はないとは思わないが、地政学(geopolitics)的に必要なのかは別の問題だ。岸田首相は米国で開催のNATO首脳会合に出席して、中国への対抗としてインド太平洋地域への関心を強めるNATOと情報共有を強化する日本とNATO間の秘匿回線を設置する方針を表明した。すでにNATO東京事務所の開設も表明しており、中国の軍事強化による海洋進出に対して岸田首相は急速にNATO接近を進めている。
(2)NATOは欧州、EU、米などによる露と対峙する北大西洋条約機構の軍事同盟であり、岸田首相は今日のウクライナは明日の東アジアだとしてNATO接近を強めている。NATO東京事務所の開設表明にはそこまでやるのかの懸念はあったが、今回さらに日本とNATO間で秘匿回線を設置し情報共有するとなると、日本がNATOのインド太平洋進出の拠点化となることを意味してアジア情勢に緊張を高めることも考えられる。
(3)まさかこの先日本がNATOに拠出金を提供するとなれば、NATO体制に組み込まれることになり、今は静観の中国の反発、対抗は強くなることが考えられる。日本は中国とは隣国であり政治、外交、軍事、経済で懸案事項、問題は抱えているが、アジア経済をともに支えアジアの安定、成長には欠かせない国同士であり、米国トランプ前大統領時代の米中貿易経済戦争激化では習主席も日本に接近して関係強化を目指して当時習主席の国賓待遇の訪日も決まりかけていたことがある。
(4)中国の香港強制統治で延期されて話は立ち消えとなったが、やはり日本と中国が対立を越えて直接話し合える関係強化はアジアの安定、成長あるいは世界的な中国包囲網の中での日本の役割はあり大きく、岸田首相の過度なNATO寄り姿勢は問題がある。
さらに今年11月の米大統領選で現在優位が伝えられるトランプ前大統領は当時、米国のNATO拠出金の占める割合の多さに不満を示してNATOと一線を置く姿勢を示しており、仮にトランプ大統領再登場ということになれば米中貿易経済戦争、米国のNATO離れが再現される可能性は大きく、日本としてもNATO寄り姿勢があつれきになる懸念は考えられる。
(5)日本が中国を取り巻く国際情勢にどういうスタンス、姿勢を持ち、望むのかは、日本の安全、政治、外交、軍事、経済に大きく影響することであり、岸田首相の本来地域、関係性、地政学的に異なるNATO前のめり姿勢には違和感、危険性は大きい。