いのしし くん。

政治、経済から音楽全般の評論
ultimate one in the cos-mos

開門か閉門か。 open the gate and shut the gate

2013-11-13 19:43:42 | 日記
 (1)裁判には「一事不再理」の原則があって、ひとつの事件、事象について判決が確定したものについては原則として再び裁判で争うことはできない、訴える能力、訴因そのものを失うというものだ。

 長崎県諫早湾の政府が進めた干拓事業で、埋め立て農営地を守るために同湾内の潮受け堤防排水門を閉門(shut the gate)した結果、漁業関係者の養殖事業が被害を受けたとして同排水門の開門(open the gate)を求めて訴えた裁判で10年に福岡高裁で5年間の開門調査を命じる判決が出されて、当時の民主党政権(菅首相)がこれを争わずに上告を断念して判決は確定していた。

 (2)判決は同排水門を5年間開門して農業、漁業への影響度を調査するものだった。事はこれからややこしい経緯、展開となって、今度は干拓地の農業関係者が長崎地裁に求めた開門差し止めの仮処分裁判では、国側が福岡高裁判決の根拠とした「開門しないことによる漁業関係者の被害」を主張しなかったことから「判断の根拠とした重要な事実が大きく異なる」(報道)と司法判断して国に開門の差し止めを命じる逆転判決を下した。

 干拓地での農業関係者の被害だけが優先されてのあたらしい事実認定にもとづく判断と司法解釈した。

 (3)一度は漁業関係者の被害が認められての5年間の開門調査決定の判決確定だったが、今度は開門による農業関係者の被害をあらたな事実として認め(つまり国側が閉門による漁業関係者の被害を主張しなかったこと)、あわせて今のままでは漁業関係者の環境も改善する見込みはないと判断した。

 国側が福岡高裁で主張したことを今回の長崎地裁では主張しなかったことあげて、「判断の前提となる国の主張などが異なる」(報道)と指摘したのだ。

 (4)何か司法の「あげ足取り(catch their tripping)」のような論理展開で、5年間の開門調査を命じた福岡高裁の判決確定の裁判経緯がどうだったのか、双方被害の多角的検証でなかったのか、一事不再理との関係でもまことに不可思議な今回の判決結論だ。

 官房長官も定例会見で「(一方で5年間の開門調査命令、他方でそれを差し止める司法判断と)国は極めて難しい状況になった」(報道)とパロディ(parody)を見るがごとく困惑していることが、この問題の一連の司法取り扱い、判決のわかりにくさを物語っている。

 (5)やはり、当初の当裁判での漁業、農業の被害影響について司法として明確な判断、検証をしてこなかったことが事態を複雑怪奇にしてわかりにくくしている。
 政府の干拓事業は東北地方での沿岸部では定着しているが、そもそも湾内での干拓事業の開発性、妥当性、計画性、有効性に問題があったことはあきらかだ。

 

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