「THE BIG FELLAH」

2014-06-13 21:19:38 | うらけん
謎だらけ…。

なんかもう、観客に易しくない脚本だった。IRAのことよく分かってないから余計謎だらけ。

果たして、IRAの背景や経緯を知ってたら謎が解けたのか?っていうそんな単純な内容でもなかったと思う。

ということを前提で感じたことを書きます。

一番に感じたことは、浦井氏演じるマイケルが一番の平和主義者だったってこと。

平和主義という観点から考えると、その次が、家族想いの成河君演じるルエリ。

そして次が、その二人に影響を受けた(と思われる)、ウッチー演じるコステロかな。果たして本当にコステロが裏切り者だったのかが一番の謎だったね。マイケルは何もかも知っていて、ただ黙っていただけだと想像した。

観るまでは、アイルランドの問題とアメリカの同時多発テロとどう絡んでくるのかが一番の関心事だったんですが、ほとんど関係ないのに、イスラムとの比較という意味において重要でしたね。負の連鎖をどう断ち切るかという意味においても比較対照になったかもね。

無差別殺人テロ。関係ない人達の命が犠牲になる。やってることは戦争と同じ。

愛国心を謳いながら、やってることは人殺し。そんなのなんの愛国心でもない。愛する人達が殺されて、黙ってられず報復し、そしてまた報復される。永遠に報復合戦。どこに愛国心があるていうわけ?国を愛する前に人を愛せよ!じゃないの???それが本当の宗教の存在じゃないの?

じゃあ黙って指を咥えて見てろと言うのか!?と反論する気持ちも分かるけど、優劣を決めたら平和になるわけ?そんなわけないやん。どこかで終止符を打たないといけないわけやん。

って考えると、コステロは本当に裏切りものだったのか?殺されるべきだったのか?はいささか疑問。

そういう意味での一番の謎は、なぜコステロがマイケルに自分を殺させようとしたのかが腑に落ちない。私がコステロなら、マイケルにだけは血に染めさせたくないから。

って考えると、あのバスルームの銃声は…?ってなる。

あえて私の推理は書きませんが、もし想像通りなら、9月11日の悪夢の数分前のマイケルの日常が全てを語っていたと思う。数分後は闇だけど、あのごくありふれた平和な日常を考えると、あの日常を取り戻していることを考えると色々推理してしまいました。

メキシコが死の床の象徴になっていたのも印象的でしたが、あのマイケルの恋人は本当にメキシコに連れていかれたのか?も疑問。これはパンフレットの年譜通りなら、まだ救いがある。台詞にエリアスって名前が出ていたなら救いはないけど…。

私には本当に易しくない脚本だったのでちんぷんかんぷんでしたが、もう一回観てもきっと謎のままだと思う。

ということで、ウッチーと浦井氏の競演。めちゃ楽しみにしてました。ウッチーの生舞台を観るは「欲望という名の電車」以来だから10年以上前です。ドラマの「JIN」の竜馬がめちゃ良かったから本当に楽しみでした。組織のトップのコステロをウッチーの持つ骨太な素材が活かされていてめちゃ渋かった!最後の演説はちとウルッときた。私は嘘だと思っているから。そうであって欲しい…。

マイケルの浦井氏はストレートプレイでは珍しく低音でのアプローチでしたね。声フェチとしては、腹から声が出ていて良かったです。ルエリの成河君がめちゃウザキャラで良くも悪くも存在感が強くて彼に圧され気味でしたが、マイケルは平和主義キャラで基本静かな印象なのでストレートプレイの浦井氏としてはめちゃ良かった。

今だから書きますが、演技派の役者さんと共演するときの浦井氏って、シャルルみたいな天然キャラは別にして、大抵引き立て役に回って地味な演技になる印象が強かったけど、今回はそうでなかったのが良かった。前回の「シャーロック・ホームズ」からかなり見せ方が上手くなった。←超上から目線m(__)m

浦井氏のエロシーンも新鮮だったけど、やはりラストの沈黙の演技がわざとらしくなく自然だったのが良かった。あの日常の演技がマイケルの人間性を象徴していたと思うし、救いを感じる演技だった。数分後は大惨事だけど、バスルームの銃声からのストーリーが見えてくる演技で、たくさん想像力を掻き立てられた。非常に良かった!浦井氏の化けの皮はまだまだこんなもんじゃないと思っているのでこれからが益々楽しみやな。

ルエリの成河君。まじウザイ!(笑)何度心の中で、黙れ!って叫んだことか(笑)一見頭が弱そうなルエリなんだけど、実は腹黒いというか計算高いというか、でも憎めないキャラを上手く演じてました。裏切り行為にも同情できる部分があって私の中の道徳心が揺らぐ役柄でした。夢のためならなんでもしていい訳ではないけど、気持ちも分からないでもない…みたいな複雑な感情。彼の家族想いの気持ちはコステロを動かしたと思う。

仲間のトム役の黒田さんは、肉食系的な感情剥き出しの演技が迫力があって良かった。

殺人鬼マシーンのような存在の小林さんがリアルに恐かった。電気ドリルの演出がリアル過ぎ。この人もきっとプラスの方向に改心されたことを祈る。

ルエリに言い寄る町田さん演じる女性が実は曲者なんですよね~。演技も個性的でしたね。

マイケルの愛人役の明星さん(名前間違えましたm(__)m)はエロシーンにしか出ないけど、マイケルの人生観を変える重要な役柄なのでリアルに可哀想でした。暗転直前ルエリの台詞が印象的でした。

演出が意外とリアリティーがあって、暴力関係は、血糊の見せ方・細工が上手くてへんなとこに感心してしまった(汗)

個人的にはカンディンスキーの絵に驚いた。あれは何の象徴だったのか?亡命?
追記:もう一つの絵はモンドリアンの「コンポジション」ですね。検索して調べました。この方も亡命してますね。このお芝居の裏テーマは“生き続けろ!”だと思う。

マイケルの部屋はほぼ同じ模様だけどラストが印象的だった。照明が良かった。で、あのタイマーは何???めちゃ気になった(笑)

今日のまとめ:この作品、ほんと謎だらけで困る。