二銭銅貨

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残菊物語

2006-11-14 | 邦画
残菊物語  ☆☆☆
1939.10.10 松竹、白黒、普通サイズ
監督:溝口健二、脚本:依田義賢、原作:村松梢風
出演:花柳章太郎、森赫子、高田浩吉

セットだと思うんですが、夜の土手を歩くお徳と菊之助のシーンは、
子供を抱いたお徳が菊乃助に、控えめに意見をする場面です。
通りすぎる通行人や物売りとすれ違いながら、風鈴を買ったりして、
ゆっくりと、間合いをとって会話が進んで行きます。
2人のなれそめの、恋のからまりあいを、土手の様な所を下から、
ゆっくりと落ち着いた横移動の長回しで追いかけて行きす。

義理のお父さんに謝る菊之助は、それでも受け入れられず檄昂し、
出て行きそうになる所を、隣の部屋でおじさんおばさんになだめられ、
もう一度と義理の父に向かうのですが、すぐに言い争い、
バタンと音を立てて出ていってしまいます。出て行った後の
開いた障子の跡を見るおじさんおばさんの場面まで、
ダイナミックに動くカメラアングルの長回しで、
すっと続く長い緊張を、滑らかに表現しています。

歌舞伎興行の宣伝のため、屋形船の先頭で、菊之助は
御ひいきに向かって、大きい身振りで大きく両手を広げ、そして
何度も何度もお辞儀をし、お礼をしています。
どうもありがとう、どうもありがとう、
どうもありがとう、
お徳、どうもありがとう。
屋形船はゆっくりと進んで行きます。

森赫子(かくこ)の純情な声質は、菊之助の人生だけでなく、
映画全体の純情さを支え、
また、主役の花柳章太郎の端整さは、
映画にきっちりした秩序を与えていました。

長回しが特徴の、長回しで有名な映画だそうです。
06.11.04 NFC
コメント
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