二銭銅貨

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近松物語

2006-11-23 | 邦画
近松物語  ☆☆☆☆
1954.11.23 大映、白黒、普通サイズ
監督:溝口健二、脚本:依田義賢、
原作:近松門左衛門 「大経師昔暦」、川口松太郎 「おさん茂兵衛」
出演:長谷川一夫、香川京子、南田洋子、進藤英太郎、菅井一郎

夜の湿った緩やかな空気の中で、煙る川に浮かぶ一艘の船に
少し離れて座っている2人づれは、やがて、ひしと抱き合い、
もう離すまいと心に誓うのみならず、船の底へ、地底の底へ、
沈んで行くのです。2人だけで、2人だけで。

お歯黒姿の香川京子は別人のようで、貞淑な人の妻の形をして、
伸びやかな曲線とくっきりした直線からなる端整で豪華な美しい
着物を身にまとい、屋敷の中をなめらかに移動して行きます。
くっきりとした衣装。
でも、本当の気持ちは、奥底に、本人も知らない
はっきりとした思いが隠されている。

美男の長谷川一夫は太い線と細い線の混ざり合った美しい顔。
恋に落ちた後の香川京子は、いつものように汚れなく、
くりくりの無邪気な眼。
2人の美しい恋はかなわぬ恋。

美しい男優、美しい女優、美しい衣装、美しい映像。
落ち着いた構図、なめらかなカメラワーク。
きめ細かく、きちんとした仕上げの美しいセット。
なにもかにも美しい中に悲劇が隠されているのです。

2人はいつも一緒で離れない、
どんな事があっても、何が起ころと、
絶対に離れない。一緒に、死ぬまで、終わるまで、
いや、死んでも、離れることがない。
歩くときも、転ぶときも、寝るときも、喰うときも、逃げるときも、
いつでも、一緒に、ずっと離れない。ギュッと。
馬上で手をしっかり結びあう2人。
06.11.12 NFC

コメント
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