二銭銅貨

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折鶴お千

2006-11-20 | 邦画
折鶴お千  ☆☆
1935.01.20 第一映画社、白黒、無声、普通サイズ
監督:溝口健二、脚本:高島達之助、原作:泉鏡花「売食鴨南蛮」
出演:山田五十鈴、夏川大二郎

木枯らし吹く、夜の鬼子母神の境内の木立の、
その下で寒風に吹き散らされる枯れ葉の上に、
ドサッと倒れこむ山田五十鈴。

不幸な運命の山田五十鈴は、これもまた薄幸の青年、
夏川大二郎が自殺しようと手に持つ剃刀を取り上げて、
何とか心の親となって助けてあげようと心に誓う。
強い気持ちは剃刀の刃に託される。

上野駅のセット。やけにしょぼい上野駅に、
バサバサと薄情な雨が降りかかる。
薄情な人々は故障で不通の電車を待ちながら悪態をついている。
夜遅く、電車は来ず、雨だけが降る。
けむる上野の山。けむる鬼子母神。
その停車場の、駅舎の中の混雑した椅子に腰掛けている山田五十鈴。
外では、茫然と上野の山を見上げて、山高帽を被って佇む夏川大二郎。

病院の病室で、過去の記憶と現在を重ね合わせるシーンは幽玄で、
時空を超えた超自然的な感じがして、
悲しい物語をそれだけに終わらせない、
この世を超えた不思議な力を感じさせる場面でもあります。

山田五十鈴の剃刀のような強さ鋭さが主役の映画です。
相手役のやさしい夏川大二郎は夏川静江の弟だそうです。

弁士:片岡一郎
06.11.05 NFC
コメント
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