続きます。
さて999人の后達は善財王の宮殿に集まり、五衰殿御懐妊のお祝いを告げます。そして白々しく聞きます。「五衰殿様が御懐妊した子供は王子でしょうか、王女でしょうか」と。
続けて「私達は早くその事が知りたい。そこで人相見の占い師を連れて来ました。占ってもらたら如何でしょうか」と発言。善財王も「それは良い」と快諾。
占い師は書物を紐解いて占いを開始。やっぱり産まれてくるのは王子。大変尊い人物なのは確か。これ程の王子はこの世にいない。真実を申し上げるべきがどうか悩みます。
その時、占い師はふと視線を感じた。999人の后の目が光っている。自分を睨んでいる。予定通り「産まれて来る王子は鬼子であると告げよ」と視線を送っているのです。
占い師は根も葉もない大嘘を善財王に申さねばならない罪に慄くも、恐ろしくて后達には逆らえない。そして当初の計画通り善財王に告げます。「産まれて来る子供は王子だが、鬼子である事」を。
善財王は占い師の話を聞いて深く落胆するも「どんな因果を受けているのかは知らぬが、例え我が子が鬼子であっても構わない。一目我が子の顔が見れれば自分の命なんて惜しくはない」と答え、占いを退けます。
そこで999人の后達は次の謀略を練ります。999人のバカデカイ婆さん達を集め、足が9本、顔が8つある鬼の姿に変装させ、大声を上げながら太鼓をたたき五衰殿の館に毎夜毎夜通わせたのす。
これには流石の善財王も驚きます。999人の后達の女官は命令通り善財王に「王子の誕生が迫り、鬼の眷属が毎晩騒いでいる。このままでは都は鬼に焼き払われる。人は皆殺しになる」と嘆きます。
善財王は追い詰められた。999人の后達はここぞとばかり「五衰殿を一日も早く何とかしないと世の中は混迷する。人も大勢死ぬ。取りあえず五衰殿を隔離するべき」と進言。
善財王は大いなる悲しみで自分では判断がつかなくなり、全てを后達に任せる事になりました。まんまと后達の策略に嵌ったのです。
そして999人の后達は、摩訶陀国でも最も乱暴な武士を三名集めて命じました。「五衰殿を南の外れの鬼谷山へ連れて行き、その鬼持ヶ谷で首を刎ねよ」と。「これは善財王の命令だ」として。
武士達は五衰殿の宮殿に押し入り、五衰殿の髪の毛を掴み引っ立てます。五衰殿の女官を遮ってです。
五衰殿は善財王からの処罰をだとして嘆き悲しみ、裸足で引き立てられます。身重の体で。「早く歩け」と急かされて。偽りの善財王の命令の書簡を読み上げられ、素直に神妙に従います。
鬼谷山は大変険しく、五衰殿の裸足の足は血だらけ。五衰殿は痛さで何度も泣き崩れながら男の足でも7日はかかる険しい道を歩み、8日目の昼に目的地である鬼持ヶ谷に到着しました。
続く。
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