令和4年6月8日 日本農業新聞
骨太方針閣議決定 食料安保の具体化急げ
政府は、7日に閣議決定した予算編成や政策の指針となる「骨太の方針」で、食料安全保障の強化を掲げた。肥料など資材価格の高騰や、水田活用の直接支払交付金の見直しは食料安保に大きく関わる問題だ。骨太の方針を、いち早く具体化することが政府に求められている。
骨太の方針は、岸田政権が重視する「外交・安全保障の強化」「経済安全保障の強化」などと並列する形で、「食料安全保障の強化と農林水産業の持続可能な成長の推進」を掲げた。骨子の段階では、食料安保は「地域活性化の推進」の一部としての記述にとどまっていた。
だが、ウクライナ危機を受けて国内の食料や生産資材の安定確保が危ぶまれる中、食料安保をより重視すべきだとの自民党内の声を踏まえ、位置付けを強めた。
骨太の方針では、日本の食料・農業が「輸入に大きく依存してきた中で、世界の食料需給等を巡るリスクが顕在化している」と指摘。食料安保強化の具体策として、生産資材の安定確保や国産の飼料や小麦、米粉の生産や需要の拡大を盛り込んだ他、肥料高騰対策の構築に向けた検討を進めるとした。将来にわたる食料の安定供給に必要な総合的な対策の構築にも着手する。
今後は、骨太の方針で盛り込んだ内容をどう実現させるかが焦点となる。特に肥料はJA全農によると、前期(春肥)に比べて秋肥は、高度化成肥料で55%高となり大幅に上がる。農家の負担軽減へ早急な対策が不可欠だ。
米の転作助成の柱である水田活用の直接支払交付金の見直しも課題だ。農水省は2022年産以降、5年間続けて米の作付けをしない農地は交付対象から外す方針を示す。
だが、この見直しによって条件不利地域からは「交付金があるから農地を引き受け、耕作してきた担い手がいなくなり、耕作放棄が増える」といった懸念の声が上がる。食料安保の基盤となる農地の維持、確保に逆行しかねない問題をはらんでいる。
今国会では農地関連の改正法が成立し、将来の農地利用像を明確化する「地域計画」の策定に農村現場は取り組むことになる。地域計画を実りあるものにするには、農地に何を作付け、どう維持していくのかという議論は欠かせない。だが、水田活用の交付金を今後も受けられるのか、水田活用の交付金に代わる対策が措置されるのか、見通しが付かなければ、地域計画の議論を進めることは難しい。
政府は、骨太の方針で明記した食料安保の強化に向け、農業現場にどんな施策を講じていくのか、早急に示す必要がある。参院選での各党の論戦を通じても、注視すべき課題となる。