2006年の税制は、昨年までの「景気対策型」から一転して「実質増税型」へ転換されます。影響が大きいと思われるものから列挙すると以下の通り。
① 定率減税の廃止 ② たばこ税の引き上げ ③ IT促進税制の廃止 ④ 酒税の見直し ⑤不動産取得税の軽減措置の縮小 ⑥ 登録免許税の軽減措置の縮小 etc
実は上記以外にも、とんでもない隠し玉がありました。昨年12月13日に自民党税調で突如飛び出したのが、「同族会社役員報酬の一部損金不算入」です。新聞等はほとんど取り上げていませんが、税理士業界では大騒ぎです。簡単に言うと、これまで当然のように行われていた「会社を作って節税」という手法を規制されたということです。
日本の所得税は、所得が多ければ多いほど税率の上げる、累進課税制度を採用しています。つまり、稼げば稼ぐほど税金が重くなるのです。そこで多くの個人事業者は、会社を作って、会社から給与(役員報酬)を貰う形での節税を図っていました。この法人化のメリットは、どんなに稼いでも一定税率であることと、給与所得控除という領収証のいらない必要経費相当額が認められることでした。さらに家族へ給与を払うことで、所得の分散という節税も可能でした。
通常、個人事業者の所得は、「総収入金額&K要経費」で算出されます。ところが給与の場合は、「収入金額°距^所得控除額」で算出されます。必要経費ならば、領収証が必要(一部例外あり)ですが、給与所得控除額は国が定めた必要経費相当額ですから、領収書が不要の必要経費になるわけです。
実際問題、日本の企業の9割は中小企業・・・というより零細企業ですから、本当は会社でなくとも構わないのです。しかし、節税になるという理由で法人化(会社を作る)してきたのが実情なので、自民党税調(もちろん、主役は財務省)の言い分は判らなくもない。
高い税率で悪名高かった日本の所得税も、近年は次第に税率が低下してました。私どもの事務所では、本当に会社にしたほうが得かどうかを診断してから、会社設立をアドバイスしていたので、その意味ではあまり驚いていません。実際シュミレーションしてみると、会社より個人が得(税金の面だけですが)な場合も少なく、最近では会社設立を断念するよう話したこともあります。
ただ、それでも驚いている理由は、事前にほとんど情報がなく、いきなり税制改正大綱に入り込んでいたことです。やはり故・山中氏ら自民党税調の長老たちが引退した影響が出ていると、言わざる得ません。昔と違って、族議員の力が弱まり、代わって官僚の力が増しているようです。