ヌマンタの書斎

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有限責任事業組合

2006-01-26 13:17:44 | 経済・金融・税制

昨年八月にベンチャービジネスの新たな展開を目指して導入された「有限責任事業組合」、通称LLPの活用が広がっているようです。

その内訳は、経営コンサルタント業が40%、ソフトウエア開発コンテンツ開発が18%、その他サービス業が14%と圧涛Iにソフト・サービス等の業種が占めており、まさに政府の目論見どおりの結果となっているようです。

ここで改めてLLPが広まってきた背景について述べたいと思います。実はこれまでも事業組合による協同事業方式は、様々な業界で利用されていました。しかし、営利事業を営む場合、その事業組合そのものに法人税が課税され、更に利益の配分に対して所得税等が課税されたため、あまり一般的なものではありませんでした。

しかし、この30年ほどで産業構造や企業のあり方もずいぶんと変わってきました。以前は多数の出資者から資金を募り、土地や生産設備に投資して、そこから収益を上げるのが一般的なビジネスモデルでした。従って出資者への利益配分も、その投資額に応じて分配されたものです。

ところが近年は、土地や工場といったハードウエアではなく、著作権や特許権といったソフトウエアが収益を生む主要な源泉としてクローズアップされてきました。アメリカでは30年前までは企業の資産の中心はキャッシュを除けば、建物や工場、機械といったハードウエアが半数を占めていましたが、今日では資産の多くはソフトウエアであることが珍しくありません。マイクロソフトやインテルなどは7割以上がソフトウエアで占められています。

つまり収益を上げる源泉は、ソフトウエアが主要な存在となったわけです。しかし、従来の株式会社や事業組合では、投資額の比率により利益が配分されるため、ソフトの開発者に対して相応の利益を払うことが難しかった。そこでアメリカで登場したのが、合同会社(日本ではLLCといいます)です。

ソフトの開発者、アイディアの発案者に対して権限や利益の配分を自由に決めることが出来る上、金を出資する投資家や企業に対する責任も、出資の範囲内(すなわち有限責任)となります。さらに合同会社の段階では課税されず(これをパススルー課税といいます)、その利益の配当を受けた投資家、企業、ソフトの開発者等に対して課税されるLLCは、現在80万社を超える勢いです。

おそらく、一番有名なのは映画の製作プロダクションである「ドリームワークス」かもしれません。映画やVTR、DVDで誰でも一度は目にしていると思います。

日本ではLLCは財務省の横槍でパススルー課税が認められませんでしたが、旧通産省がプッシュしたLLPにパススルー課税が認められるようになったので、今後はLLPがベンチャーの主役に躍り出るかもしれません。

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