ヌマンタの書斎

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青色申告って(2)

2006-01-20 00:05:06 | 経済・金融・税制

前回、税金の賦課の歴史を簡単に書いてみましたが、ここで改めて日本における税金のあり方を、歴史的に簡便に書き記してみます。

日本では江戸時代までは、圧倒的に賦課課税です。これしか有り得なかった。まあ、実際は庄屋とお代官様との間の駆け引きもあったし、税金が高すぎれば一揆もありましたが、基本的に税金は、政府が決め付けるものでした。

明治維新により近代国家を目指し、民法や商法、刑法あげくに憲法まで翻訳して導入した明治政府も、こと税務に関しては、伝統的に賦課課税方式を採用してきました。ただし、商業活動から生じる所得に関しては、やはり申告納税方式を導入しています。ところが日本では複式簿記に基づき財務書類を作成する習慣はなく、商業帳簿(大黒帳って奴ですな)を外に出すことに抵抗感が強く、なかなか申告納税方式は普及しませんでした。

そこで考え出されたのが、業種ごとに利益率を統計的に推算して所得を申告する方法です。これは税務署が長年のデーターの蓄積から推計したもので、収益をえるための支出(必要経費)を統計上の平均値でもって、実際の必要経費とみなすやりかたです。一般的には、概算経費による申告とか、所得率による申告と言われていました。これが世に言う「白色申告」です。

この方法は、納税者のみならず税務署にとっても、極めて便利な方法でした。納税者にとっては、帳簿を作る手間を大幅に省けましたし、概算の経費よりも実際の経費が少なければ得をしたことになります。なかには、わざと概算経費を少なくして(つまり利益を多くだす)、税務署の実地調査を受けないよう申告をする輩もいたようです。税務署は提出された申告書を検討して、その業種ごとの所得率に比して、所得が少ないと怪しいと考え、実地に税務調査をする傾向があることを逆手に取ったやり方で、現在も稀に散見することがあります。

一方、税務署にとっても3月の繁忙期に、いちいち領収書等を集計して所得を計算する手間を省けるので、実務上極めて便利な手法でした。私も確定申告期の無料相談会に手伝いに行った経験からすると、あの忙しい時期に、大学ノートのメモ書きと領収証、請求書の山を整理して、実際の利益を計算するよりも、所得率で簡便に利益を推算するほうが遥かに簡単で短時間に出来ることから、積極的にやっていたものです。

しかし、所得率は統計上の平均値ですから、個別の事情に応じたものではありません。競業者の出現による利益率の低下や、仕入れ値の急な上昇等があり実際の利益が減少した場合、所得率を使うと納税負担が過大になる可能性も多々あるのです。

なにより、納税者の権利として自ら所得を計算し、それに基づいて申告納税するという民主主義の理念に適うものではないのは、否めない事実です。第二次大戦後、日本の統治を任されたGHQは、税法の専門家であるシャウプ博士を呼び、日本の納税意識を変えることを目論見ました。それが青色申告です。

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