私は気に入った本は、何度も読み返す癖があります。ここで書いている本は皆、数回読み返したものばかりです。読み返したくなる本ほど、良い本だというのが、私の評価基準です。
で、最近読み返したのがロバート・マキャモンの「少年時代」BOY”S LIFEです。マキャモンがホラー脱却宣言をしてからの2作目です。うっすらとホラーの香が漂うものの、全体としてはアメリカの地方都市で少年期を過ごした思い出が、色鮮やかに描かれた佳作だと思うのです。
少年時代の思い出って奴は、ほろ苦くて、甘酸っぱい二度と口に出来ない味覚のようなものです。同じ夕日なのに、少年時代の思い出の夕日のなんと鮮やかなこと。感性の豊かさと、人格の未熟さが絶妙なシンフォニーを奏でるからこそだろうと思うのです。
小さな物事に感動を覚えた、その感受性の繊細さをもう一度味わいたい気持ちは今もあります。しかし、人生経験の未熟さからくる物事への対応の拙さは、二度と味わいたくない。相反する二つの気持ちが、殊更少年時代への郷愁を誘うのでしょうね。
少年時代を扱った小説に、S・キングの「スタンド・バイ・ミー」がありますが、両作品に共通するのは、最後に大人になった主人公の今を描いている場面があることです。キングのそっと流す涙も感慨深いものがありますが、マキャモンの空を見上げる明るさも素敵ですね。どちらも大好きです。