ヌマンタの書斎

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青色申告って(1)

2006-01-19 09:31:42 | 経済・金融・税制

もうすぐ確定申告の季節です。よく青色申告とか白色申告とか言われますが、どう違うのでしょう。以前からよく聞かれる質問ですが、私自身イマイチ良く説明し切れていない感があります。少し視点を変えて説明してみたいと思います。しばし、お付き合いください。

歴史的に看ると、税金は支配者がその支配する民衆から取るものであるのが実情であろうと思います。政治権力者にとって、いかに税収を上げるかは重要な問題で、農業に課税の力点を置いたがゆえに、計量方法が統一されたり、測量技術が向上したりしたものです。何に課税されるにせよ、それは上からの押し付け的なものであり、このような課税方法を賦課課税と言います。

ところが、ヨーロッパにおいて産業革命により、商工業が急速に伸びた結果、納税すれども政治的発言権のない階層が不満を抱き、その結果として民主主義が成立すると、課税のやり方も変わってきました。すなわち、利益を計算してその利益に対して税金を算定し、納税するやり方です。

商工業は、当然ながら景気の波に左右されますし、市場競争による敗者、勝者もあり、政府からの利益を推計されての課税には不満が出るのは当然のことです。そこで自ら利益を計算し、税金を申告して納付するやり方が採用されるようになりました。これを申告納税と言います。

そこで問題になるのが利益の計算方法です。15世紀のイタリア都市国家で開発された複式簿記が、ここで大いに注目されるようになりました。単に売った、買ったの利益なら収支計算で構わないのですが、産業革命の結果、工場施設、機械装置などが利用されるようになると減価償却による利益計算が必要になります。これは単式簿記(収支計算)では困難なので、ますます複式簿記が利益計算に採用されるようになりました。

また商業活動の広がりは、梼Yや詐欺、横領などの経済犯罪を招き、新しい法律による政府の統制が必要になり、その典型がドイツ商法典であり、ナャ激Iンによる民法の完成でした。

商法と民法を土台として、複式簿記による利益計算という共通ルールが出来たことにより、公正妥当な財務書類が作成することが可能となりました。この財務書類をベースに課税所得を自ら計算し、申告納税する方法が近代国家の税務行政の柱となったのは、欧米では19世紀後半のことです。

あっさりと書きましたが、申告納税は実際には納税者と国家との激しいやりとりの下、ようやく勝ち取った納税者の権利なのです。それゆえに民主主義政府の下では、納税は義務であると同時に権利の性格も持ち合わせているのです。

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