ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

南総里見八犬伝

2006-01-04 11:26:24 | 

年末年始のテレビ番組で「八犬伝」をやるとの話を聞かされて、思い出しました。私が中学生当時、NHKで夕方から放送していた番組で人形劇がありました。辻村ジュサブロー(でしたっけ?)のおどおどしい人形に惹かれて見ていました。そこで初めて知ったのが「八犬伝」でした。大変に面白かったので本で読みたいと思い、探したのが滝沢馬琴の「南総里見八犬伝」でした。

講談社か平凡社か忘れましたが、ハードカバーの高価な本で、誕生日のプレゼントということで親にねだって買ってもらった記憶があります。本屋さんに届いてすぐに読み出しましたが、序盤から中段までは面白かったのですが、クライマックスに近づけば近づくほど盛り下がり、なんとも締まらないエンディングにがっかりしたものでした。

で、懲りずに滝沢馬琴がパクッた元ネタである「水滸伝」を読んでみたところ、非常に面白くて、以降「三国志演義」「金瓶梅」「史記」「西遊記」といった中国ものにはまっていくのですが、それはまた別の機会に書きたいと思います。

その後、歴史を学ぶうちに滝沢馬琴が、「八犬伝」を面白く書けなかった理由が分かるようになりました。徳川幕府は、その政権の維持のため、しばしば思想統制や文化統制を行っています。水滸伝を元ネタにして、それを日本を舞台に書けば、どうしたって幕藩体制にひびをいれるようなエンディングになることは必然です。当然それは幕府による弾圧を招きかねないものであり、滝沢馬琴は断腸の想いで終盤をツマラないものとせざる得なかったのでしょう。

言論の自由が当然の現代の常識で、過去に書かれたものを判断する危うさに、当時中学生だった私はまったく気がつきませんでした。もっとも今読み返しても、多分面白いとは感じないであろうことも分ります。でも、少しだけ読み返したい気持ちはあります。中学生当時は、読書が実に新鮮だった。あの頃の感性をもう一度味わえたらな・・・叶わぬことなれど、つい願ってしまします。

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