暗黒時代。
歴史に関する本を読んでいると、時折目にする言葉だ。若い頃はなぜに暗黒時代だと称されるのかが分らなかった。今なら分る。過去を貶め、理想を輝かそうとする意向のもとで使わる言葉こそが「暗黒時代」なのだと。
典型的なのが中世ヨーロッパを暗黒時代だとするケースだ。これは中世がキリスト教の価値観に縛られた時代であり、ルネッサンス以降の自由と理性を重んじる立場から、過去を誹謗し現在を誇るがゆえに使われる。
日本の場合だと明治末から昭和初期を称して暗黒時代だとすることが多い。この時代は日清戦争から太平洋戦争に至る時代であり、軍部優先の暗い時代であったと決め付けられる。
本当にそうなのか?
山本夏彦氏のエッセーなどを読めば分るが、この時代決して暗いばかりではなかった。むしろ、軍部(戦争)=暗いと決め付けるほうが、よっぽど時代を歪めて伝えている。
日清戦争は日本が大国へと成り上がる契機となった戦いであり、日本国中その勝利に沸きかえったのが実情だ。日露戦争は、大国ロシアに勝った歴史的勝利であり、当然に日本のみならず世界中から高く評価された。
もちろん、勝利に沸く歓喜の裏には、愛する家族の戦死を悼む哀しみもあった。だが、お国のために死して尽くしたのだと、その悲しみを塗布することも出来た。悲しみは哀しみとして存在したが、同時にいつか自分もお国のためにと胸に誓う青年も多かった。
でも、愛する人を戦場で失った悲しみにくれる母親や妻、恋人だっていた。そのことを忘れるべきではないが、だからといって暗黒時代だと一律に否定するのはおかしい。それでは事実がみえなくなる。
この時代は近代日本の第一期高度成長時代でもある。人々の気持ちは未来に向けて明るく華やいだものであった。相対的に評価するならば、まちがいなくこの面のほうが大きかったと思う。
もちろん、幾つもの戦争を経て勝ち得たものである以上、その犠牲となった若者の命を忘れるべきではない。でも、その犠牲の上に繁栄が築かれた現実も押し隠すべきではない。
表題の漫画は、私が十代の頃にヒットした。主人公が女性である以上、どうしても戦争を否定的に描くのは仕方ない。でも、主人公の明るく前向きな生き方は、あの時代の特徴でもあった。あの時代こそ、近代日本において女性の社会進出の第一歩が刻まれた。
本当に暗黒時代であったならば、決してあのような生き方はできるわけない。暗黒時代という言葉が使われているならば、よくよく注意してみる必要があると思う。
歴史に関する本を読んでいると、時折目にする言葉だ。若い頃はなぜに暗黒時代だと称されるのかが分らなかった。今なら分る。過去を貶め、理想を輝かそうとする意向のもとで使わる言葉こそが「暗黒時代」なのだと。
典型的なのが中世ヨーロッパを暗黒時代だとするケースだ。これは中世がキリスト教の価値観に縛られた時代であり、ルネッサンス以降の自由と理性を重んじる立場から、過去を誹謗し現在を誇るがゆえに使われる。
日本の場合だと明治末から昭和初期を称して暗黒時代だとすることが多い。この時代は日清戦争から太平洋戦争に至る時代であり、軍部優先の暗い時代であったと決め付けられる。
本当にそうなのか?
山本夏彦氏のエッセーなどを読めば分るが、この時代決して暗いばかりではなかった。むしろ、軍部(戦争)=暗いと決め付けるほうが、よっぽど時代を歪めて伝えている。
日清戦争は日本が大国へと成り上がる契機となった戦いであり、日本国中その勝利に沸きかえったのが実情だ。日露戦争は、大国ロシアに勝った歴史的勝利であり、当然に日本のみならず世界中から高く評価された。
もちろん、勝利に沸く歓喜の裏には、愛する家族の戦死を悼む哀しみもあった。だが、お国のために死して尽くしたのだと、その悲しみを塗布することも出来た。悲しみは哀しみとして存在したが、同時にいつか自分もお国のためにと胸に誓う青年も多かった。
でも、愛する人を戦場で失った悲しみにくれる母親や妻、恋人だっていた。そのことを忘れるべきではないが、だからといって暗黒時代だと一律に否定するのはおかしい。それでは事実がみえなくなる。
この時代は近代日本の第一期高度成長時代でもある。人々の気持ちは未来に向けて明るく華やいだものであった。相対的に評価するならば、まちがいなくこの面のほうが大きかったと思う。
もちろん、幾つもの戦争を経て勝ち得たものである以上、その犠牲となった若者の命を忘れるべきではない。でも、その犠牲の上に繁栄が築かれた現実も押し隠すべきではない。
表題の漫画は、私が十代の頃にヒットした。主人公が女性である以上、どうしても戦争を否定的に描くのは仕方ない。でも、主人公の明るく前向きな生き方は、あの時代の特徴でもあった。あの時代こそ、近代日本において女性の社会進出の第一歩が刻まれた。
本当に暗黒時代であったならば、決してあのような生き方はできるわけない。暗黒時代という言葉が使われているならば、よくよく注意してみる必要があると思う。