ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

影の兄弟 マイケル=バー・ゾウハー

2010-04-16 12:36:00 | 
そろそろ訊いておいたほうがいいかもしれない。

離婚してから、父は数年間を海外で過ごしている。祖父母の死を知らずにいるほど、現地で夢中で仕事をしていたらしい。

実を言うと、私は父が何をしていたのか良くは知らない。父が自ら語ろうとしなかったのも事実だが、私が父の私生活を知りたがらなかったのも確かだ。

私は父の経済的支援があったからこそ高校にも大学にも進学できた。そのことは感謝しているが、見捨てられた数年間を忘れることは出来なかった。そのため、父を「おとうさん」と呼ぶことにさえ抵抗が強く、その言葉を口に出来たのは、おそらくは20代後半か、30過ぎだと思う。

どうしても、無意識に一線を父との間にひいた距離のとり方をしてしまうので、父の人生については呆れるほど無知だ。

だが、この冬に母が病に倒れて闘病生活に入った姿をみて、このままじゃ拙いとも思い返すようになった。父がいかなる人生を送ってきたのか、息子として訊いておいたほうが良いようだ。

父と距離を置きたがる私と異なり、妹たちはかなり無邪気に娘として父に甘えていたようだ。当然に私よりも会話は多く、私が知らないことも知っているようだ。

しかし、この年になって分ったことがある。どうも親という奴は、息子と娘に対しては語る内容が異なるようだ。これは子供のいない私でも、なんとなく分る。おそらく妹たちには話していないこともあるのだろう。

おそらく父はあと10年は持たないだろう。既に片目は見えず、大好きだった車の運転もできないようだ。だから最近は連絡もよこさない。

私も依怙地さを捨てて、父に話す機会を与えてあげるべきなのだろう。別に相続財産なんて欲しくないが、父の人生の一端を知ることぐらいは必要だろう。多分、嫌がらないはずだ。

でも、ちょっと怖い。あいつ海外で何してたんだ?いや、どんな暮らしをしていたんだろう。まさか・・・とは思うが、異母兄弟がいるなんてことはないだろうなぁ?

表題の作品は、冷戦の最中にアメリカとロシアで別々に育てられ、やがてそれぞれの情報機関の一員として再会してしまった兄弟の半生を舞台としている。

イスラエル出身の異色のスパイ小説作家であるゾウハーが本領発揮した大作だ。読み応え十分なので、機会がありましたら是非どうぞ。
コメント
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