ヌマンタの書斎

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プロレスってさ リック・フレアー

2010-11-04 12:37:00 | スポーツ
チャンピオンらしからぬが、それでもチャンピオン。それがリック・フレアーだった。

チャンピオンらしからぬと書いたが、それはダーティな振る舞いが多いからではない。実はプロレスラーらしからぬ風貌であることが問題だった。でも、体つきは決して貧相ではない。むしろ筋骨逞しいと評してもおかしくない。

ただし、一般の人ならばだ。フレアーの体格は普通に逞しい程度で、筋肉怪獣が珍しくないプロレスラーの世界では相対的に小柄に見えてしまう。デビューしても、しばらくはパッとしないプロレスラーであったことは否定しがたい。

もっといえば、フレアーはロックバンドのメンバーが似合う。美形とまでは言わないが鼻骨が高く、金髪を伸ばしたフレアーは、カルフォルニアの明るい太陽の下で、ロックを演奏していてもおかしくない風情があった。つまり普通のスメ[ツマンの域を出ない逞しさなのだ。

ただ、気は強かった。必死で成り上がろうとする気概が隠せないほどの野心家でもあった。ヘビー級のレスラーとしては小柄であったが、その小柄さを恥じず、むしろ武器にした。狂乱の貴公子の呼び名は伊達ではない。

身長は180センチあったと思うが、白人としては短足であった。これが彼の武器であった。プロレスには数多くの技があるが、足の短いレスラーなればこそ使いこなせる技が、かの四の字固めであった。

この足の脛と脛を重ね合わせる拷問技は、技をかける側の足が短ければ短いほど、相手の痛みが増す。この技の名手であったデストロイヤーは、体格のわりに短足であったため、彼の四の字固めは目から火花が散るほど痛かったそうだ。

フレアーは自らの短所であった短足を利用して、四の字固めの名手として名を上げた。そしてチャンピオンに相応しく見えるように、派手な衣装をまといゴージャス感を強くアピールした。

気障でハデで、目立ちたがり屋。それは観客からブーイングを浴びせられる要素であったが、そのブーイングさえもフレアーは活用した。要は観客の目を曳き付けられればイイ。

フレアーが当初、NWFのチャンピオンになった時、多くのプロレス・ファンは短命だと予測した。しかし、彼はその予測を見事に覆した。

フレアーは決して強いチャンピオンではなかった。しかし、観客を沸かせ、試合を盛り上げることでは超一流のパフォーマーであった。はっきり言えば、ダーティ・チャンプだった。勝つためならリング上で土下座だってしてしまう。呆れるほどのリングでの振舞いであった。だが、どれほど批難されようと、彼はベルトを巻き続けた。

しかも、何時の間にやら狡猾さや、しぶとさを身につけ、反則には反則を返し、正統なレスリングにはレスリングで応える度量まで備えるチャンピオンに成長した。

フレアーよりも強くて才能あるプロレスラーは結構いたと思うが、彼ほどチャンピオンであろうと努力した者は、ほとんどいなかった。それゆえに彼は長くチャンピオンを勤め上げた。

彼こそプロレス界におけるアメリカン・ドリームの体現者であったと思うのです。

コメント (3)
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