ヌマンタの書斎

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マンガ家田中K一がゆく! 田中圭一

2010-11-10 12:47:00 | 
意外な感動。

漫画家・田中圭一といえば、手塚治虫の画風をもろにパクッたお下劣なギャグ漫画で有名だ。手塚治虫が絶対描かないであろう、どうしようもないシモネタを描く、真面目な手塚ファンの天敵として悪名高い。

実際、くだらねぇと思いつつも、ゲラゲラと笑ってしまう、お下劣ギャグ漫画の名人だ。あまりに下劣過ぎて、人に薦める気にはなれないが、読んだ人にだけ分る共感は分かち合いたいと、密かに願ってしまう困った漫画家でもある。

衝撃的だった話題作「神罰」を読んだ時から感じていたのだが、この作者日頃は真面目な顔を装っているのだろうなってこと。人間の二面性というか、真面目な人ほどふざけたり、スケベだったりする落差が激しく、それが傍目には面白かったりする。


ギャク漫画家の大家であった赤塚不二夫は、日常生活においてもギャクを演じようとして、逆にギャグ漫画を描けなくなった。ギャグ漫画だけを描き続けることは、精神に過大なストレスをかけるようで、長続きする漫画家は稀だ。

だからこそだろう。田中圭一が史上稀に見るオ下劣なギャグ漫画を20年にわたり描き続けている秘訣は、日常生活において真っ当な会社員としての顔を持っているからだと思う。

玩具メーカーのタカラ(作品中ではヨイコトーイ)の正社員として営業に奔走する多忙な日々の中で、マンガを描き続けた苦労を綴ったのが表題の作品だ。

副業を禁止している規則に反してマンガを描き続ける苦労。なによりも大好きな仕事を優先し、心身ともに疲弊しながらもマンガを描き続けた。

このマンガに描かれるサラリーマンの苦労と喜びこそが、彼に二足の草鞋を履き続けさせた原動力だと分る。なかでも彼が敬愛する先輩社員の栄転の話には思わずホロリとさせられる。

まさか田中圭一のマンガでこんな気持ちを味わえるとは思わなかった。まさに新境地を拓いたと評してもいい。だが、きっと田中圭一は、これからもオ下劣なギャク漫画を描き続けるだろう。

既に転職して、現在は某企業の中間管理職らしい。彼が真面目なサラリーマンとしての顔を持ち続ける限り、彼はギャグ漫画を描き続けることが出来るはずだ。

あまりにオ下劣なので人には薦められないが、是非とも描き続けて欲しい漫画家である

コメント (3)
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