発明王エジソンが創業した会社として知られているジェネラル・エレクトロニクス社、通称GEは世界最強の企業だと思う。なんといっても、激動の20世紀を常にトップ企業として生き抜いてきた。この実績は凄まじい。
そのGE社が大幅に経営方針を変更したことをご存知だろうか。なかでも顧客ターゲットの選定の変更は衝撃的だ。
従来は、第一グループとしてアメリカ、西側ヨーロッパ諸国、日本。第二グループとしてシンガポールや韓国、台湾などの発展途上国、そして第三グループとしてアラブ諸国やブルネイのような富裕国、そして最後はその他。この顧客選定に従い経営戦略を練ってきた。
ところが数年前にこのグループ分を大幅に変えた。第一グループは中国、インド、インドネシアなどの人口大国、第二グループは石油などの天然資源を持つ国であり、第三グループはその他。日本もヨーロッパも、この第三グループに入ってしまった。
これは何を意味するのか、そこが問題だ。
一言で言えば、18世紀後半以来世界の文明をリードしてきた西側先進国が衰退したことだ。それをアメリカのトップ企業であるGEが認めた。
西側先進国の一員である日本にとっても他人事ではなく、屈辱的に思われるだろうが、それはGEとて同じだろう。しかし、21世紀を生き延びるためにGEは決断した。衝撃的であると同時に、革新的な決断でもある。
この変革は経済の分野だけのことではない。既に政治の世界でも現在進行中のことだ。かつてのG7は、今やG20となっている。もはや西側先進国だけでは世界を動かせない。ブラジルや韓国などの経済発展著しい国々を加えなければ、物事が動かなくなっている。
この現実を受け入れ、この現実に対応していかなければ21世紀は生き残れない。この危機感がGEに大幅な経営方針の刷新を決断させた。
では、日本はこの21世紀をどう生き残るべきか。少子高齢化がますます進み、社会が穏やかに衰退していくことは必然でもある。その衰えを自覚した上で、何が出来るか、何をすべきかを考えていかねば、待っているのは惨めな結末だけであろう。
21世紀は資源と食糧、水が大きなテーマとなる時代だと考えている。日本列島は石油や天然ガスにこそ恵まれていないが、メタンハイブレードを始めとして膨大な海底資源は手付かずのままだ。石油の価格が上昇すればするほど、新化石燃料の開発は進むと考えられる。
食糧輸入大国ではあり、農業人口、耕地面積は減る一方ではあるが、工場での水耕栽狽ヘじめとして、手間隙かけた農業の名人撃揩ツ日本は、他国に真似できぬ農業の可能性を秘めている。
そして何よりも先進国中、トップクラスの水資源を持つ。これは二つの海流の間にある日本列島の地理的条件に恵まれていることが大きい。カナダやニュージーランド、スイスなどを除けば、これほど水資源に恵まれた先進国は稀だ。
そう遠くない将来、世界人口は100億を超えると予想される。この膨大な人口を支えられる食糧と真水の確保は、きわめて難しい課題となる。
そう考えると、21世紀の日本の将来は、そう悲観的なものではない。ただし、企業にせよ政府にせよ、意識改革は必要不可欠だと思う。ここが最大の難関だろう。
なぜなら太平洋戦争の敗北の廃墟から立ち上がり、経済的成長を果たしたという成功の記憶が色濃く残っている。とりわけ行政府は、失敗を認めない体質を持つが故に、21世紀という新しい状況に適応することが難しい。
いや、民間企業でさえ未だに20世紀の成功の記憶に縛られているケースは散見する。バブルが弾けても、なお、意識改革が出来ない企業は未だ多い。とりわけ20世紀において高収入が得られるとされた大企業に、その傾向は強い。
未だに再生計画がまとまらぬ日航なんぞ、その典型だと思う。そう考えると、アメリカのGEの経営方針の刷新が、いかに果敢な決断であるかが察せられる。
改革が必ず成功するなんて思わないが、なにもしないで既得権にしがみつく企業が生き残れるとは思わない。果たして日本経済を支えてきた企業のうち、どれだけが生き残ることが出来るのか。はなはだ興味深いテーマだと思います。