黙ってみているしかないのが辛い。
日本人のお風呂好きは世界的に有名だ。私も家に風呂があるにもかかわらず、子供の頃は銭湯によく行ったものだ。そこで出会う人々から、銭湯の流儀を教わり、浮「大人との付き合い方を学んだ。
現在、銭湯は次第に数を減らしている。燃料費の高騰や、経営者の高齢化などが背景にある。その一方、私の子供の頃にはなかったような大規模な入浴施設が人気を博している。
俗に言う、スーパー銭湯とか健康ランド、スパという奴だ。厳密にどう定義されるのか知らないが、私もたまに行くことがある。間接的ではあるが、仕事の上での関りもあるので、他では聞けない話を耳にすることがある。
24時間営業というか、深夜から早朝まで営業している健康ランドには、そこで寝泊りする人たちがいる。ホテルや宿に泊まるよりも安上がりであり、広々とした入浴施設で寛ぎ、翌朝の仕事に備えるには絶好の場だからだろう。高速道路のインターの近くや、幹線道路にあることが多いので、見た事がある人も多いと思う。
このような終夜営業の健康ランドは、長距離運転のドライバーや出張のサラリーマンが多く使う。一方、このような仕事上のものではなく、交友の場として健康ランドを使う人たちもいる。
多くの場合、年金生活の高齢者が多い。家にいるよりも、広くて暖かく、風呂は大きく清潔で、なにより友人知人が多くて楽しい。時には大衆演劇の公演もあれば、歌謡ショーもあり、手軽な値段で楽しめる。
健康ランドは、このような常連客を数多く抱えることで経営が成り立っている。だが、時には変った常連客を見かけることがある。
私はたまにしか行かないが、行けば必ずその親子を見かけた。親が障害を負っているため、目立つためだが、私が気になるのは、その子供さんだ。
最初は気にしていなかったのだが、やはりその健康ランドによく遊びに行く知人の子供が、あの子供は宿題をやらないと不平をもらしていたことがきっかけだった。
まあ、健康ランドの宴会場の片隅で、冬休みの宿題をやらされている子供からすると、宿題なんてないよと口にする、その件の子供さんの科白が気になったのだろう。宿題がない学校なんてあるのかな?と不思議に思った。
新年早々、仕事がらみでその健康ランドを訪れて、顧客に会って書類を渡し、休憩室で顧客と雑談している時だ。既に平日だというのに、件の親子がいるのに気がついた私が、同席していた健康ランドのマネージャーにもう学校は始まっているよね、と話を振ると、彼は顔を曇らせた。
彼が言うには、普段から平日でもその件の親子は頻繁にやってくるらしい。どうも子供は学校に行っていないらしい。マネージャーとしては、常連客は大切にしなければならないが、平日に子供を連れて翌日朝遅くまで健康ランドにいることには疑問を持たざる得ないと嘆く。
経営者としてはともかく、一人の人間として悩まざる得ないのは当然だと思う。さりとて、親が了承してのことだけに、第三者は口を出しにくい。親が障害者であることが、殊更言い難い雰囲気となっていることも事実だ。
どうも、私のみたところ子供にも問題がありそうだ。なんとなく、いじめられやすそうな雰囲気があるのだ。そのせいか、健康ランドでも一緒に遊ぶ子は、明らかに年下の子供ばかりだ。
子供たちの話では、家は健康ランドから1時間半以上かかる遠方で、わざわざこちらに来るらしい。だが、こちらのほうが、元々住んでいた場所らしい。でも、そのわりには同級生と遊んでいる感じはしない。
想像だが、おそらくは登校拒否児童なのだろう。私も話したことがあるが、どうも学力が低い。大人に甘えたがるが、勉強の話になると、すぐに黙りこみ、消え去る。既に小学校高学年なのに、九九も満足にできない。
この調子では、大人になったら苦労することが目に見えている。親も悪いと思うが、障害という目に見えぬ壁をうまく使っているらしく、他の人たちの忠言には耳を貸さないと聞いている。
そんな親を見て育ったせいか、件の子供も自分の耳に痛い話(学校とか勉強)だと聴こえないふりをする。そのくせ、自分が興味ある話だと、馴れ馴れしく近づいてくる。困った子供だと思う。
だからといって、第三者としては積極的には関れない。深入りするには、責任や覚悟を要するからだ。私は善意の押し売りは好きではないが、さりとて黙っているのも辛い。
先が見えているのに、結果が分っているのに黙っていることは、結構辛いと思う。
日本人のお風呂好きは世界的に有名だ。私も家に風呂があるにもかかわらず、子供の頃は銭湯によく行ったものだ。そこで出会う人々から、銭湯の流儀を教わり、浮「大人との付き合い方を学んだ。
現在、銭湯は次第に数を減らしている。燃料費の高騰や、経営者の高齢化などが背景にある。その一方、私の子供の頃にはなかったような大規模な入浴施設が人気を博している。
俗に言う、スーパー銭湯とか健康ランド、スパという奴だ。厳密にどう定義されるのか知らないが、私もたまに行くことがある。間接的ではあるが、仕事の上での関りもあるので、他では聞けない話を耳にすることがある。
24時間営業というか、深夜から早朝まで営業している健康ランドには、そこで寝泊りする人たちがいる。ホテルや宿に泊まるよりも安上がりであり、広々とした入浴施設で寛ぎ、翌朝の仕事に備えるには絶好の場だからだろう。高速道路のインターの近くや、幹線道路にあることが多いので、見た事がある人も多いと思う。
このような終夜営業の健康ランドは、長距離運転のドライバーや出張のサラリーマンが多く使う。一方、このような仕事上のものではなく、交友の場として健康ランドを使う人たちもいる。
多くの場合、年金生活の高齢者が多い。家にいるよりも、広くて暖かく、風呂は大きく清潔で、なにより友人知人が多くて楽しい。時には大衆演劇の公演もあれば、歌謡ショーもあり、手軽な値段で楽しめる。
健康ランドは、このような常連客を数多く抱えることで経営が成り立っている。だが、時には変った常連客を見かけることがある。
私はたまにしか行かないが、行けば必ずその親子を見かけた。親が障害を負っているため、目立つためだが、私が気になるのは、その子供さんだ。
最初は気にしていなかったのだが、やはりその健康ランドによく遊びに行く知人の子供が、あの子供は宿題をやらないと不平をもらしていたことがきっかけだった。
まあ、健康ランドの宴会場の片隅で、冬休みの宿題をやらされている子供からすると、宿題なんてないよと口にする、その件の子供さんの科白が気になったのだろう。宿題がない学校なんてあるのかな?と不思議に思った。
新年早々、仕事がらみでその健康ランドを訪れて、顧客に会って書類を渡し、休憩室で顧客と雑談している時だ。既に平日だというのに、件の親子がいるのに気がついた私が、同席していた健康ランドのマネージャーにもう学校は始まっているよね、と話を振ると、彼は顔を曇らせた。
彼が言うには、普段から平日でもその件の親子は頻繁にやってくるらしい。どうも子供は学校に行っていないらしい。マネージャーとしては、常連客は大切にしなければならないが、平日に子供を連れて翌日朝遅くまで健康ランドにいることには疑問を持たざる得ないと嘆く。
経営者としてはともかく、一人の人間として悩まざる得ないのは当然だと思う。さりとて、親が了承してのことだけに、第三者は口を出しにくい。親が障害者であることが、殊更言い難い雰囲気となっていることも事実だ。
どうも、私のみたところ子供にも問題がありそうだ。なんとなく、いじめられやすそうな雰囲気があるのだ。そのせいか、健康ランドでも一緒に遊ぶ子は、明らかに年下の子供ばかりだ。
子供たちの話では、家は健康ランドから1時間半以上かかる遠方で、わざわざこちらに来るらしい。だが、こちらのほうが、元々住んでいた場所らしい。でも、そのわりには同級生と遊んでいる感じはしない。
想像だが、おそらくは登校拒否児童なのだろう。私も話したことがあるが、どうも学力が低い。大人に甘えたがるが、勉強の話になると、すぐに黙りこみ、消え去る。既に小学校高学年なのに、九九も満足にできない。
この調子では、大人になったら苦労することが目に見えている。親も悪いと思うが、障害という目に見えぬ壁をうまく使っているらしく、他の人たちの忠言には耳を貸さないと聞いている。
そんな親を見て育ったせいか、件の子供も自分の耳に痛い話(学校とか勉強)だと聴こえないふりをする。そのくせ、自分が興味ある話だと、馴れ馴れしく近づいてくる。困った子供だと思う。
だからといって、第三者としては積極的には関れない。深入りするには、責任や覚悟を要するからだ。私は善意の押し売りは好きではないが、さりとて黙っているのも辛い。
先が見えているのに、結果が分っているのに黙っていることは、結構辛いと思う。