数年前、同じタイトルで漫画家のいしいひさいちが単行本を出している。そっちは「ののちゃん」にも出てくる藤原先生が、学校の先生から小説家へと転進する四コマ漫画である。
いしいひさいちも物騒なタイトルを付けるものだと感心していたら、元ネタではないかと指摘されたのが表題の作品だ。ただし、こちらは漫画ではなくミステリー小説。
実はジェイムズ女史のミステリーを読むのは久しぶり。寡作な作家で、作品数は多くないが、どれも評価は高い。にもかかわらず敬遠していたのは、どの作品も長編だからではない。
敬遠した原因は、いささかうんざりするほど状況描写が緻密に過ぎるからだ。大半は単なる細かすぎる描写なのだが、そのなかに犯罪解明につながる伏線が紛れているので、読み流すのがことが出来ない。それゆえ、気軽に読みづらい作品ばかりなのだ。
たしかに実際の犯罪捜査でも、緻密で厳格な現場調査は欠かせない。その調査により得られた情報の大半はゴミだが、そのなかに解明につながる鍵が紛れていることは珍しくない。
それゆえに、ジェイムズ女史の作品にはリアリティがあるのは確かだ。でも、あそこまでしつこく緻密に書かれると、読み手としては、いささか辛い。だから、積極的に読む気になれなかった。
ただ、表題の作品はジェイムズ女史の作品としては、読み易いと聞いていたので今回久々にトライした次第。で、結論から言うと、読み易い作品に仕上がっていたので、私としては満足。
おまけに他の作品の主人公が徐々に姿を現してきて、最後の最後でいい場面を演じていくあたりに予想外の好感を得ました。
相変わらず、いささか懲り過ぎの感もなくはないのですが、初めてジェイムス女史の作品を読む方にも十分楽しめると思います。ミステリーがお好きでしたら、機会があれば是非どうぞ。