整理整頓が好きではない。
どちらかといえば、とっ散らかっている方が安心できる。さすがに仕事に関してはファイルにまとめ、ボックスにまとめ、時系列的に整理する。これは効率と効用を考えた上での選択であり、当然のことだ。
しかし、私生活に関する限り、いたってずぼらだ。聡恷ゥ体は嫌いではない。台所のシンクはいつも空にしてから外出するし、ゴミも小まめに捨てる。冷蔵庫だって、隅っこにミイラ化した野菜があることは滅多にない。
ただ、家財の大半を占める本だけは、あまりほめられた状態ではない。本棚にしっかり納めてある本もあるにはあるが、部屋のいたるところに本が山積みになっているのが問題だ。
以前は、その山のどこにお目当ての本があるかが、漠然とではあるが分かっていた。ただし3年以上前の話である。あの東日本大震災により本棚が爆発したあの日以来、どこのどの山にお目当ての本があるかが、どうにも分からないのが現状なのだ。
まァ、そのうち引っ越すのだからイイやと思っていたが、公私ともに忙しく、なかなか引っ越す時間がとれない。特に地方に引っ越してしまった妹の荷物がある二階の一室なんぞは、まったく手をつけてない。
しゃあねえな、とため息ついて、仕方なく一階の片づけを、時折さぼりさぼりやっている。これでは引っ越しが進む訳がない。
私生活がこの様なので、仕事だけはしっかりやりたいが、このところ雑多な仕事が多く、しかも同時並行で進んでいるので、机の周りの混雑ぶりがひどい。当然に私の頭のなかも、複数の仕事が入り混じっており、なかなか集中できない。
それでも、なんとかやらねばならぬ。まずは気が付いたところから、着実にこなす。とにかく地道に一件、一件小まめに片づける。少し減ったと思っても、後から後から追加の仕事が来るが、苦しい台所事情を考えれば断ることも出来ず。
よって、仕事の山の高さはあまり変わらないこととなる。それでも、仕事があるだけマシ。そう思いながら、日々の多忙さを慰める毎日である。
だからだろう、私はフロスト警部の仕事ぶりが気になって仕方ない。
デントン署の名物警部ではあるが、どんな悲惨な現場でも場違いな猥談をかます無節操ぶり。「俺の勘がクロだと告げている」と勇ましく捜査に出かけて、空振りに終わるのも何時ものこと。規則を守らない警官であることを自覚し、横紙破りの無節操な捜査は、むしろ現場を混乱させる迷警部である。
しかし、事件解決に賭ける情熱は本物であり、人命救助をなにより重んじ、法を守ることよりも傷ついた心を守ることも忘れない。だからこそ、呆れられ、軽蔑されつつも、フロスト警部が頼む無理難題を引き受ける部下は少なくない。
表題の作は800頁近い大作であり、上下二巻もあるのだが、内容の濃さはそれ以上。いったい幾つの事件が同時並行で捜査されていたのか、読んだ直後の私でさえ思い出せない。そんな大混乱のなかで、人質事件の解決に向けて七転八唐キるフロスト警部。
私はこの本を、先月末の多忙な中に読んでいたので、殊更フロスト警部の奮闘ぶりに共感せざるを得なかった。法人決算、個人調査、相続相談と複数の仕事を同時並行で進める混乱のなかで、自分だけじゃない、フロスト警部だってそうなんだと、自分を慰めていたものです。
後書きで知ったのですが、著者のウィングフィールド氏は既に故人とのこと。フロスト警部の活躍が読めるのも後2冊。それだけが残念です。