紙製ストローは、救世主ではないかもしれないが、もっと普及するべきだと思う。
アメリカでスターバックスなどの外食産業が、プラスティック製のストローから、紙製のストローへと変更をしていることは、報道されていると思う。
でも、このニュースで一番大事なのは、なぜなのか、であろう。
先に結論を書いてしまうと、マイクロプラスティックのこれ以上の拡散を防ぐためである。石油から作られるプラスティックは現代文明を象徴する存在である。プラスティックは可変性に富み、製造コストも安いため、建材、食器、服飾品など多種多様な製品の原材料となっている。
問題は、このプラスティックは容易には分解されないことである。特に海に流出した場合、次第に分解されるのだが、比較的大きなプラスティック破片は海岸近くを漂うが、小さく分解されたプラスティック破片は沖合に漂い、時間をかけて海底に沈降する。
この小さいプラスティックは波の力や、太陽光線による破壊で更に小さくなり、それが直径5ミリ以下となったものをマイクロプラスティックと呼ぶ。
このマイクロプラスティックが海洋生物の体内に摂取されて蓄積していることが分かったのは、比較的最近のことだ。以前からその存在を疑われてはいたが、本格的な研究がスタートしたのは10年ほど前からである。
海洋生物学者らを中心に大西洋、太平洋などでこのマイクロプラスティックを採取してみたところ、想像を超えて世界中の海を漂っていることが分かった。そして、魚、鳥、貝、アザラシなど海獣などの体内で、このマイクロプラスティックが蓄積されていることも分かってしまった。
未だ研究途上ではあるが、これらの石油化学製品の残骸が、生物の健康に有益な訳はない。もっとも、どのくらい有害なのかさえ、未だに判明してはいない。それでも危機感を覚える学者は多い。そして、魚介類を人間が食べている以上、我々にもこのマイクロプラスティックの健康被害が及ぶ可能性が否定できない。
我々人類は、この分解されにくいプラスティックという材料をあまりに多量に使い過ぎた。それが今、マイクロプラスティックという形で海を漂い、生物の体内に潜んでいる。未だ研究途上ではあるが、体内に蓄積されたプラスティックが、人体に害をなさないと考える人はあるまい。
かつて、PCBをはじめとして人類が合成して作り上げた化学物質が、人体に有害であることが判明し、公害という言葉が作られた。この公害に、マイクロプラスティックが加わったと考えて、ほぼ間違いないと思う。
ただ海洋を漂うプラスティックゴミのうち、ストローはせいぜい1%程度だと言われている。一番多いのは、漁船が使い、放棄する網である。巻き上げ用から、千曳網まで多数の廃棄された化学繊維製の網が海を漂っている。
にもかかわらず、今回ストローがやり玉に挙がったのは、生活に身近であり、安易に捨てられやすく、人々の意識されやすいからだと思う。そして、人々の意識を変えるには、まず身近なものからやってみよう。
そう考えないと、アメリカに於いて急に紙製のストローが出てくる意味が分らなくなる。コストも高く、企業にとっては負担となる紙製ストローの採用は、プラスティックを多用し過ぎてきたことへの警鐘だと私は捉えています。
でも、過剰に反応するのも問題。マイクロプラスティックに対する科学的研究を進展させることこそ、今必要とされていることだと思います。