うろ覚えではあるが、幼い私が漫画を読んで、初めて怖いと思ったのが、表題の作品に登場する人間モドキである。
マグマ大使は、多作な手塚治虫の作品としてはTVの実写版が有名なのだが、少年画報に連載された漫画のほうが私は印象が強い。ちなみにTVとは異なり、怪物などはあまり出てこない。
だが、宇宙の数多の星を征服した魔人ゴアが、地球征服のためにばら撒いた人間モドキが極めつけに印象的というか、ぶっちゃけ怖かった。TVの実写版ではさして怖いと思った記憶がない。
怖かったのは漫画版のほうだ。小学生の頃、近所の銭湯に家族で行った帰り、商店街の一角にあった小さな貸し本屋で、「マグマ大使」全二巻を借りた。一晩で読み切ってしまったが、まさかこれほど怖いとは思わなかった。
全体としては怖かった訳ではない。あの人間モドキが怖かった。
学校から家に帰り、母や妹たちがあの人間モドキであったらどうしよう?そんな妄想に怯えてしまった。
実を言えば、手塚治虫の漫画で、怖いと思ったのはこれ一作である。決してホラー漫画ではないのに、これほど怯えたのは、当時祖父母の元を離れて、母と妹たちだけで暮らしたことの不安感の裏返しであったのだと思う。
TV版では、魔人ゴアとその部下である怪物たちと、マグマ大使とのバトルがメインなのだが、漫画版はいささか趣が異なります。TV版しか知らない方が読んだら、少し驚かれると思いますよ。