十代の頃、私はけっこう映画にはまっていた。
当時住んでいた三軒茶屋という街には、安さが売りの映画館があったので、しばしば通っていた。そのなかで、理解しがたいというか、えらく中途半端な印象ながら妙に記憶に残った映画に「キャッチ22」があった。
戦争をネタにしたコメディ映画なのかと思ったが、それにしては笑いが乾き過ぎ。反戦映画かと思いきや、戦争そのものを否定しているようには思えなかった。結局最後まで理解できなかった。
その映画の原作が表題の作品である。
まず、最初に言っておく。いや、叫んでおく。
読みにくい!
時系列がバラバラなせいもあるが、おそらくは作者が意図的に混乱を起こすような配置になっている。上下二巻で1000ページを超す大作なのだから、前半だけで、苛立たしいほどに困惑する。
下巻の終盤に至り、ようやく主人公の置かれた立場の悲惨さと、それを笑い飛ばすことでしか心のバランスを保てなかった苦しみが分かってくる。ここに至り、この作品が20世紀のアメリカ文学における金字塔として賞される価値があるのだと理解できる。
ここで白状しよう。私がこの作品を読むのにかかった時間は半年を超える。途中で嫌気が差して、読むのを中断した回数は4回である。よくぞ最後まで読めたものだと自分を褒めてやりたい気分である。
そのくらい、読みにくい本であるのだから、映画化された作品が、十代の小僧っ子に理解できなくて当然なのだろう。この本、かなりの本読みでないと、最後まで読むのは無理だと思う。そのくらい、読みにくい作品なのだ。
何故にこれほど読みにくいのかといえば、やはりこれは作者の意図的な時系列の混乱が一因ではないかと思う。戦争がもたらす恐浮ゥらくる混乱と苦悩により狂気を彷徨う主人公。その苦悩と狂気を読者にも追体験させようとの思いがあるように思えてならなかった。
正直、やり過ぎだと思う。でも、この作品が傑作だとされたのも理解は出来る。時間が十分にある方なら、読んでみる価値はあると思います。