トラ、トラ、トラ。(我、奇襲に成功せり)
これは、日本帝国海軍がハワイを攻撃した際の成功を伝える暗号である。ハワイはオアフ島の真珠湾内に停泊中のアメリカ海軍戦艦4隻を沈没させ、17隻を大破させた。対アメリカ戦争の初戦としては大成功であるとされている。
本当か?
私はむしろ失敗だったと思っている。少し細かく言えば、戦術的には成功、戦略的には失敗、そして政略的には大失敗だと判じている。
まず戦術的には、航空機による戦艦攻撃の最初の成功例である。これは戦術史上に残る成功だと言ってよい。肝は航空機からの魚雷攻撃(雷撃)である。水深の浅い真珠湾は、本来、航空機からの雷撃は不可能とされていた。
しかし、日本帝国海軍は新型の魚雷を作って、浅い深度で攻撃できる方法を編み出した。命中率の低い投下爆弾とは異なり、魚雷は命中率が高い。ただ、雷撃に使用する航空機には細心の操縦が求められる。レーダー測定器もない時代であり、パイロットの勘で、超低空飛行により目標を定めての魚雷投下は、技術的にかなり高度なもので、そのための訓練を鹿児島湾で繰り返した成果でもある。
ただ、この攻撃の最大の失敗は、一番潰したかった航空母艦が不在であったことだ。これは偶然なのだが、アメリカ太平洋艦隊に所属する空母3隻は、その日は他の海域に赴いており、この三隻を沈められなかったことが、後のミッドウェイ海戦での敗戦に直結する。
更に付け加えるなら、アメリカの主力艦船である戦艦を大破させたことで、日本軍司令本部はアメリカの戦意を挫くと予想していた。しかし、ワシントンの日本の外交官が、寝坊して宣戦布告が遅れたことで、卑怯な不意打ちだとアメリカが宣伝したことで、アメリカ市民は激高した。志願兵が続々と軍に集結して、その前日までアメリカに蔓延していた厭戦気分を吹き飛ばしてしまった。
これが日本軍による真珠湾攻撃の結果である。これを成功だと記載している歴史教科書が、戦後一貫して学校で使われているのだから呆れてものが言えない。
たしかに戦闘としての面を見るならば成功である。しかし、戦争全体を俯瞰して考察するのならば、真珠湾攻撃は失敗であったと評価するべきだ。それなのに、戦闘面(戦術)だけで成功だと教えるのは、歴史教育としても好ましくない。
本当に平和の大切さを教えるのならば、戦闘ではなく戦争を教えなくてはいけない。大局的な視点で、全体を考察してこそ戦争は、その是非を正しく考えることが出来る。
現在、安倍首相の目指している憲法改正は、自衛隊の合法化と自衛権の公認を目指していると思う。それは必要なことだと思うが、真珠湾攻撃を成功だと学校で教えているような間抜けな教育をされている日本人に、本当に戦争を手段として平和を守ることが出来るのか、私は大いに疑問です。
余談ですが、寝坊して宣戦布告を真珠湾攻撃後にアメリカに伝えた日本の外交官様は、戦後どういう訳だが日米平和に貢献したと叙勲されています。このあたり、もう一度歴史を見直して欲しいものです。ちなみに、遅刻したのは前夜に転勤する同僚外交官の送別パーティで飲み過ぎたからです。ついでだから書き添えると、この不祥事を外務省は長く隠蔽しており、発覚したのはアメリカ側の歴史研究者の発表があったからです。
私には戦後の日本人が本当に戦争を反省しているとは思えないのですけどね。