9月末に飛び込んできたのが、アニマル・ウォーリアーの訃報であった。
既に相棒のホークが亡くなっており、なんとも寂しい気持ちにさせられた。ホークとアニマルのロード・ウォーリアーズはプロレス界に革命に近い激動をもたらしたとされる。
正直、少し褒め過ぎである。力は強いが、レスリングはあまり上手くなかった二人組を売り出すためにマネージャーのエラリングが選んだ短期決戦方式が、あまりに斬新であっただけだ。
嵐のように襲い掛かり、竜巻が吹き荒れるがごとくリングで暴れ、相手をブン投げ、殴りつけ、踏みつけてリングを去っていく暴れん坊の二人。いや~、恰好よかったんだな。
だが、それで終わらなかった。外見も育ちもアウトローな二人だが、仕事は真面目だった。それは酒場で用心棒をやっている時も、プロレスのリングで暴れん坊を演じているときも変らなかった。
次第にレスリングの技術を身に着け、相手にも見せ場を作らせるようになり、長時間の試合も出来るようになった。ホークは人脈作りが上手く、アニマルの欠場時に、日本で知り合った佐々木健介をパワー・ウォーリアーとしてデビューさせたりしている。
また先月取り上げたスコット・ノートンとは学生時代の知己であったようで、彼を引き込んで試合を盛り上げたりもした。寡黙なアニマルは喧嘩上手ではあったが、こういったプロレス的な人脈作りはホークに任せていた様だ。アウトローな外見に似ず、仕事には真面目な二人であった。
試合後のインタビューで、子供たちにも大人気ですねとふられると「俺たちに憧れるのはイイ、だが俺たちが育った環境には憧れるな」とドスの効いた声で真面目に答えていた場面が忘れがたい。
荒廃した街で育ち、生き延びるために身体を強く鍛え上げた二人が目指したのは、緑豊かな郊外の家で、週末は家族や友人とBBQを過ごすことであった。しかし、酒と薬物で荒れたホークは40代で亡くなっている。
ホークの死後になって分かったのだが、実は破天荒なのはアニマルではなくホークのほうで、けっこうなトラブルメーカーであったらしい。にも関わらず、彼らがプロレス界で一大勢力となれたのは、地味ながら信頼のおけるアニマルあってのものであったらしい。
ユーチューブが一般化してから、プロレスラーが番組を作って現役時代のエピソードを語るといったものを見ていると、ホークの暴れっぷりに苦労し、アニマルに慰められたと語るプロレスラーが少なくないことに驚いたものだ。
人を見かけで判断しちゃダメなのだなァ。でも、ホークもアニマルも、アメリカの裏通りで夜出くわしたら、速攻で逃げたくなるタイプ。特にアニマルは体つきが凶暴で、かつ顔も凶悪。でも中身は案外とイイ人だったみたいです。
合掌。