垂直に離発着が出来る夢の航空機、それがヘリコプターである。
我が国でも軍事用、営林業、農業用、報道用、観光用と使用されている大変に便利な航空機である。
地面に対して水平に回転するメインブレードにより、浮上することができる。その軸を傾けることにより水平飛行が可能となる。ただし、機体そのものが回転してしまうことを防ぐだめ、もう一つの回転するブレードが必要となる。ヘリの尾翼に付いている小さな回転プロペラ(テイルローターと呼ばれる)がそれだ。
この小さなプロペラに動力を割かねばならず、それを避けるために生み出されたのが二軸式のヘリコプターだ。前後に大きなメインブレードを持ち、互いに反対方向に回転させて、機体が回転することを防いでいる。
この方式が最もエンジンの動力を効率よく使えるのだが、構造上機体が大型にならざるを得ない。そこで一つの軸に、段差を設けて互いに反対方向に回転するメインブレードを設けたタイプのヘリコプターも存在する。
その代表的な機種が、旧ソ連のKA(カモフ)27であった。たいへんに力強いヘリコプターであり、様々な派生型が登場した。その民生用がKA32であり、東側(旧ワルシャワ機構)の国だけでなく、西側でも数多く使われているベストセラー機である。
現在、ロシア以外で最も沢山保有しているのが、実は日本のお隣の南コリアである。
元を糺せば、冷戦末期に外貨不足で悩むソ連が、ノ・テウ大統領時代の南コリアから14億ドルあまりを借款したことに始まる。この借金の返済に、ソ連製の武器とすることが決まり、T82戦車やBPM兵員輸送車などが南コリアに大量に流れた。
南コリアの軍首脳は、これらのソ連製兵器にアメリカの最新電子機器を取り付けようとして、アメリカに断られたことが自主国産兵器への固執となったことは、案外と知られていない。
ソ連製の兵器はたしかに頑丈で、性能も決して低くはないが、メンテナンスが意外と難儀であり、またコスト高となって南コリア政府を困らせた。なかでも先に挙げたKA32ヘリコプターは全天候対応で、頑丈で高出力のエンジンで現場の評判は高かった。
その一方で燃費は悪く、部品の消耗が激しく、メンテナンスコストが高額なことが悩みの種であった。元々基礎的な工業力が低く、工業製品も西側からの指導を受けてのコピーが主流である南コリアには、ソ連製の兵器の部品は手に余った。
困ったことに今まで助けてくれたアメリカ、ドイツ、日本もソ連製の兵器部品は門外漢であり、また国防政策上も南コリアへの不信感を高める結果となり、助力は得られなかった。
更に困ったことに、借款を引き継いだロシアには、まだまだ貸付金がある。そしてロシアは又してもロシア製の兵器でその返済をすることを求めてきた。ロシアとしては新型兵器で借金の返済をしたいようだが、さすがにそれは断わり、使い慣れたKA32で受け入れを決めた様子である。
おかげで、南コリアはロシア以外では最も沢山KA32を保有する羽目に陥っている。
一応書いておくと、KA32自体はけっこう優れたヘリコプターである。だからこそ南コリアでは軍以外でも山林火災の消火任務で山林局が採用している。また優れた全天候性能が買われて海難救助でも活躍している。
ただ複雑な構造ゆえに、部品の消耗が激しく、そのコストが高い。自国の企業でなんとか部品を作ることを目指しているが、実はこれこそ南コリアが最も苦手な分野。
以前、アメリカ軍は軍用機のメンテナンス拠点を南コリア内に設けていたが、その仕事の雑さに閉口して、現在は日本でやっている。基礎工学や冶金学の水準が低いだけでなく、万事適当な作業を良しとする気風はなかなかに治らない。
またKA32を導入したことで、せっかくの国産ヘリコプターであるスリオンの居場所が狭まっているのもデメリットであろう。もっともこの国産ヘリは不具合が多過ぎて現在運用停止となっている。一部の軍人たちから、その性能の悪さ、故障の多さから非難轟々なので、KA32の再取得を良かったと安堵する現場の軍人も多いらしい。
だが最大のデメリットは、ロシア製の機体ゆえに、アメリカ軍の持つ情報統合機能にリンクが許されないことだろう。どうするのかねぇ・・・?
まァ、どうでもいいですけどね。ちなみに、このKA32は、日本にも数機ありますよ。赤城ヘリコプターという会社が所有しています。静岡の山林で活躍しているそうです。