トルコライスをご存じだろうか。
私の記憶にあるトルコライスは、ピラフに豚カツが添えられ、デミグラスソースがかけられてある。そして付け合せにナポリタンとキャベツがワンプレートに乗っている定食だ。
私の母校の正門から徒歩1分ほどにあった喫茶店「ヤシ」の名物料理であった。私はこの「ヤシ」に四年間通い詰めた常連であった。下手すると昼食だけでなくオヤツに、あるいは朝食にと、一日に何度も通った。
先日のことだがネットであれこれ時間を潰していたら、トルコライスが長崎発祥だとありビックリした。気になってあれこれ調べてみたが、どうも神戸の米軍兵相手の食堂で生まれ、それが長崎の地に戻った方により広まったらしい。
当然ながらトルコとは全く関係のない料理である。
で、私が食べ続けたトルコライス、ヤシのおっちゃん、どこで覚えたのだ?いや、ふと思い出したのだが、トルコライスではなく、ヤシライスと呼んでいたような気もする。ただ、中身はトルコライスであるのは間違いない。
あのデミグラスソースと揚げた肉は美味かった。先に豚カツとかいたが、もしかしたら鳥カツかもしれない。私は美味しければ何でも良しの能天気食いしん坊なので、あまり気にしていなかった。
店に訊ねてみたいのだが、残念ながら既に閉店している。学生の頃、あれだけ通いつめた店が閉店しているのは寂しいものだ。つい先日も自転車で行ってみたが、私が知っている店は全滅であった。
いや、大学の校舎自体、本館がかろうじて残っているだけで、他の建物は全て建て替えられていた。金あるのねぇ・・・さすが安倍前首相も通った御坊ちゃまご用達大学である。
ちなみに、私がヤシの常連となったのは、私の短気が契機である。まだ5月で新入生として初々しい頃だと記憶している。同じWV部のMと少し遅めの昼食を食べて、いざ小雨降る外へ出ようとすると私の傘がない。
私はわりと物持ちの良いほうで、その傘も高校生の頃から愛用していたものだ。瞬間湯沸かし器並の速さで「誰だ、泥棒は!」と怒り出したところ、ヤシのおばちゃんが替わりの傘を絶妙なタイミングで渡してきたので、怒るに怒れなくなった。
その後、クソまじめなMから、お前は気が短すぎると説教されたので、「お前こそ講義中、眠り過ぎだ」と八つ当たりして気を晴らした。少し気不味いので、ヤシに行くのは躊躇われたが、Mの奴が執拗におばちゃんに礼ぐらい言って来いと五月蠅いので、仕方なく行った。以来、卒業まで数限りなく通い詰めた店だったのだ。
もう一度、ヤシでヤシライス食べたかったなァ。