先月のことだが、俳優のショーン・コネリーの訃報を目にした。
私が最初に観た007の映画が「ロシアより愛をこめて」であった。初代ボンドとして世界中に知られたコネリーであるが、原作者のイアン・フレミングはイメージと違うと文句を言っている。
フレミングにとって理想はロジャー・ムーアであったようだが、映画の世界的大ヒットで支払われる莫大な印税には、押し黙るしかなく、その後は映画のために007シリーズを書く羽目に陥っている。
これは私見だが、たしかに原作のジェームズ・ボンドとショーン・コネリー演じるボンドはイメージは違うと思うが、作品としての印象度は原作以上ではないかと思っている。これはダニエル・グレイグにも云えることだ。
一方、フレミングのお気に入りではムーア(私生活でコネリーと親しい友人)は、あくまで原作のイメージを超えることはなかったと思う。実際、アクションが苦手だと公言するムーアにとって、ボンドはいささか荷が重かったらしい。
007シリーズから離れたコネリーは、固められたボンドのイメージからの脱却にけっこう苦労していた。それでも「風とライオン」や「エントラップメント」などで見せた、若い頃はさぞかしモテたであろう老人を演じさせると絶妙であったと思う。
「インディ・ジョーンズ最後の聖戦」ではジョーンズ博士の父親をコミカルに演じてみせて楽しませてくれたのが忘れがたい。再び観たかったが、コネリーは老人役が厭で、その後はあまり映画に出ていない。
スコットランド人としての矜持が強く、独立するまで戻らないと公言し、最後はバハマ島で亡くなっている。
ちなみに「ロシアより愛をこめて」で共演した絶世の美女ダニエラ・ビアンキはイタリア人で、英語が喋れず、覚える気もなく、世界的な知名度を得たのに事実上、これ一作で引退している。
監督や映画プロデューサーは怒っていたが、なにかのインタビューでコネリーは「美人の我儘は可愛いものだよ」と、さらっと流している。この人、本当にモテモテだったのだろうと思ったのが私的には一番記憶に残っています。