ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

青色申告って(3)

2006-01-22 15:47:21 | 経済・金融・税制

アメリカから招聘されたシャウプ博士は、日本の税務行政及び納税者を調べ、これでは健全な納税者は育たないと考えたようです。

やはり納税者自らが、自分で帳簿を付けて収益と費用を認識して利益を計算し、それを元に税金を計算して納税することが、理想的な申告納税であると考え、その推進を日本の税務当局に求めました。

国税局(というか、大蔵省)は、この勧告を受入て、その推進のため設けられた制度が「青色申告」です。すなわち、帳簿を作成して、それを元に利益を計算し、税金を自ら申告納税してもらう制度です。
この制度を普及させるため、青色申告控除や、青色専従者控除、欠損金の繰越控除、その他減価償却の割り増し等さまざまな特典を付与し、更に青色申告会なども設けて指導、推進してきたものです。

しかし、納税者の意識はなかなかに変わりませんでした。今日でも白色申告が有利だと信じている人は、少なくありません。ちなみに、青色申告が認められるのは自らが事業主である人、不動産賃貸をしている大家さんなどに限られます。つまり給与所得者であるサラリーマン・OLには適用されません。

もっと言ってしまうと、青色申告であるにもかかわらず、概算経費を使って申告している人も、まま見かけます。今の若い人には信じがたいかもしれませんが、帳簿を満足につけない事業主は少なくないのです。帳簿を作っていても、それが備忘録程度のものもあるし、なにより他人に見せたくない人が多いのも特徴です。

実は青色申告という自己申告の適正化に抵抗を示したのは納税者だけではありません。なにより税務署の職員自体が、なかなかに意識を変えられなかった。「お上」意識とでもいうのか、賦課課税方式に慣れた税務職員には、納税者の自ら作成した申告など頭っから信じない人は少なくなかったのです。ひどい場合、世の中には「脱税をしている人」と「脱税に気がつかない人」の2種類しか、納税者は存在しないと思い込んでいる人もいたようです。

また税法そのものが、たいへん読みにくいものであり、理解しずらいものでもあるため、間違える納税者は数知れず。そのため申告後に税務署に呼び出され、不愉快な思いをした納税者は相当数にのぼったはずです。余談ですが、税理士という資格業が成立するのも、この複雑な税務あってのもので、税務署と不愉快な交渉をしたくないゆえに、顧問税理士を頼む納税者は現在も後を絶ちません。

なお、現在では所得率や概算経費を使った申告は、原則として認められません。すべて収支を明らかにしたうえで、損益を計算して申告納税することとなっています。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 青色申告って(2) | トップ | 青色申告って(4) »

コメントを投稿

経済・金融・税制」カテゴリの最新記事