ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

階級(ポール・ファッセル)

2006-02-02 09:26:44 | 

どの国、どの社会にあっても禁忌(タブー)は存在します。自由と民主主義の国アメリカにあって、タブーといえば、それは階級でしょう。

公式にはアメリカに階級はないはずです。誰に聞いても「階級」を否定するでしょう。でも、実際には階級が存在することを、皆知っているし、それに応じた行動をとっている。それは言葉遣いであり、生活慣習であり、また家や旅行、娯楽、食事と様々な分野で階級差が生じている。

人は皆平等であるの事がアメリカの国是ですが、貧富の差が何時の間にやら階級を生み出している。ロックフェラーやカーネギー、メロンらの超上流階級。その下の上流階級。次第に減少しつつある中流階級。そして下層労働者階級。更に統計上現れにくい最下層階級。

アメリカの気鋭の社会学者が、敢えて書いたアメリカの階級社会の実情。多分に皮肉を込めた文章が玉に瑕ですが、その鋭い観察眼と公表した勇気(蛮勇か?)には敬意を表したいと思います。

しかし、皮肉なものです。競争社会を是認する自由な国において、いつのまにか出来ていた貧富の差による階級。誰もがその存在を知りながら、表向き認めないがゆえに、深く静かに浸透してしまった社会問題。「アメリカン・ドリーム」は決して嘘ではないが、その一方歳月を重ねるごとに階級を上ることの難しさが実感せざる得ない、厳しい現実。希望が諦めに変わった時、「階級」が我が身にしがみ付いていることを知る。

理想を掲げて作られた人工国家アメリカ。その理想を侵食しつつある「階級社会」の現実。アメリカを分断しつつある民族問題(ラテン化)と相まって、21世紀のアメリカの変質の主役である気がします。


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10 コメント

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Unknown (jin rock)
2006-02-02 20:11:14
アメリカは 日本の400年前の 士農工商が 形を変えて いまだに生き続けてる国だと思います そしてなによりも戦争が好きです 軍事産業が根幹を成しています ドイツやソ連や アラブ 中国など 敵を作っていないと 国民がひとつに まとまらないのです そして内政の不満を 外に向けさせることで そらしています
アメリカは イギリスからの あぶれもの ならずものが作った国だからこそ 成金主義で 拝金主義で ハイクラスを渇望します オリンピックも自分たち白人が優位に立ちたいと思ってます 沖縄駐留軍人の不祥事を見ても 法の壁が立ちはだかり 日本人を下に見ているのが ありありとわかります  
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Unknown (ヌマンタ)
2006-02-02 22:45:15
多分、アメリカは世界で一番戦争に対して真面目な国だと思います。その国の属国的扱いをされている日本は、アメリカ側で生きていかざるえない立場です。見方を帰ると、そのアメリカの下位にあって、最もうまく立ちまわってる国が日本だと、未来の歴史家は記すかもしれません。だからといって、心まで売り渡したくはありませんがね。
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Unknown (だじょうだいじん)
2006-02-12 09:57:55
ヌマンタ様、おはようございます。ご無沙汰してます。だじょです。
ヌマンタさんの読書は楽しのスレッド読んで、こちらに遊びに来ました。
だじょ、この『階級』という本に興味持ちました。メ[ル・ファッセルという著者名をだじょはじめて知りましたが社会学者なら一度読んでみる価値ありそうだと思いました。だじょほんの少しですが社会科学興味あります。
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Unknown (アブダビ)
2014-12-17 21:28:03
階級社会と身分社会を混同してる人って多いてすね。日本も敗戦で大日本帝国が解体するまでは身分制だった。江戸時代に比べれば形だけに等しいですが。そのせいなのですかね、混同する方が多いのは。
資本主義が20世紀に果たしたことは、上の階級の下を引きずり下ろし、下層の上を引き上げて、中間層を拡大したことと思います。
この辺りは、昔々の長谷川町子氏の「サザエさん」を読むと、よく解ります。
商店主は布製の靴を履いて、サラリーマンは革靴を履いている。
波平さんやマスオさんは、しがない会社員ではなく、高給取りのプチプル。
服装や靴で
ビジュアルに階級が解る社会なんですよね。中流が
庶民のエリートだた時代です。
それが何時の間にか、総中流の時代になって、今は階級が2極分化する時代になってきたようてす。
つまりは19世紀に逆行しているわけですか?
ただ、社会保障が前々世紀とは段違いなので、一概に悪い意味では書いていませんけど。
というか、中流が沢山いる時代の方が、商品の購買力が高まるから、産業と景気のために良いのは間違いないですが。
ただ中流が沢山いる社会は、人類の歴史からみると
この100年たらずの「例外」であって、本来の姿に戻りつつあるとも考えられます。
ちなみにナチスが仕事を与えて、中流を拡大することでドイツを復興させたのと、
彼らを負かしたアメリカが、やはり戦後に中流を拡大することで繁栄したのは、手法が似ていると思います。
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Unknown (ヌマンタ)
2014-12-18 13:01:07
アブダビさん、こんにちは。歴史上、隆盛を誇った国家、帝国にはその体制を支える中核となる中間層が存在しています。ローマの市民がその典型ですが、オスマントルコなどにもありました。この中間層が没落した時、その国家は衰退へと落ち進むのが歴史の通例だと私は考えています。
既にアメリカでは健全な中間層が激減し、日本でも意識だけは中流で資産は下層クラスとなっている国民が増えています。
アメリカも、そして日本も衰退の道を辿りつつあるのは確かだと思います。
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Unknown (アブダビ)
2014-12-22 13:55:52
あのう…ええと。
ヌマンタさんの言われる中流の没落とは、
ローマの市民軍の中核である自営農民である市民が
、帝国の拡大によってローマに流れ込む輸入農作物の安値に抗えず、離農して、都市で「パンとサーカス」を求めるだけの下層民に堕ちていったような事なのでしょうか?
オスマン朝のことは解らないのですが。
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Unknown (ヌマンタ)
2014-12-22 16:15:35
細かいところではいろいろあるのですが、大筋はその通りです。軍の中核であるがゆえにローマの中産階級は政治的発言力をもっていました。しかし、商業の発達が自営農民の没落を招き、あげくに外部からの傭兵を雇うことが日常化した結果、西ローマは滅びました。
実はオスマン・トルコも似たような経緯を辿り中産階級が没落し、軍の中核からはずれたことが、外部勢力の侵入を招き弱体化していたのです。最後は西欧の帝国主義に屈した点だけが違います。
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Unknown (アブダビ)
2014-12-23 00:51:31
ハリウッド映画は昔から帝政ローマ好きです。
ベンハーとかグラディエーターとか。
それだけ似てるからてしょう?
それが同じに、中流階級が没落し、軍は民間軍事企業て傭兵だよりになてきてる。
まんまヌマンタさんの指摘ど真ん中。
てことは、追随してやはり中流が没落してる日本はアメちゃんと運命を共にして沈むてわけですね?

まー、考えてみれば、何の準備も資金もなかた連邦政府が南軍と互角以上に戦い、買ったのは、
公定価格の数倍の金で、銀を買い付けていた幕末の日本のお陰てあり(ハリスもペリーもアメリカンしたよね)、おまけに戦後、余った兵器が還流して(英仏を中継して)、明治維新を達成!
て考えると、先の大戦どころか、近代日本の始まりから、二つの国はマッチャ塔vちわけで、
いまさら離縁して日本だけ助かるのは無理なのかなぁ?
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Unknown (アブダビ)
2014-12-23 01:52:27
あれ、ベンハーって、つまりイエスの時代ですが、
あれて共和制だたかな?
いや、ユリウス・カエサルて秦の始皇帝のちと後の人だから、帝政のはずだよな…たぶん。
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Unknown (ヌマンタ)
2014-12-23 15:55:27
基本、日本は欧米の近代化の追従者ですから、今さら離縁は無理でしょう。やれば裏切り者として苛烈な攻撃の対象になるだけです。幸い、現状では欧米を圧する新興勢力が出てないから助かっていますが、その幸運を理解してない人は多いです。
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