観たいような、観たくないような気分。
戦後の日本にSF小説を根付かせようと意気込んで刊行されたのが、早川書房のSFシリーズであった。戦前は空想科学小説とされたが、子供向けの読み物だと看做され、あまり高く評価されていなかった。
だからこそ早川書房の心意気は、SFファンに広く歓迎された。創元推理文庫も追随したが、SFマガジンという雑誌を刊行し、安い文庫本には人気のある漫画家に挿絵を依頼してSF文庫は本屋の書棚に並んだ。
たかが挿絵と言うなかれ。正直に云えば、私がはじめて読んだスペースオペラはバロウズの「火星のプリンセス」だが、きっかけは武部画伯の表紙絵であった。当時の早川SF文庫には、SF未体験の読者をひきつけるため挿絵、表紙画にも力を入れていた。
なかでも漫画家を登用したのは素晴らしいアイディアであった。松本零士や藤子不二雄そして石ノ森章太郎とSF好きな漫画家が描く挿絵は、読者をSFの世界に引き込んだ。なかでも私は石ノ森章太郎の挿絵を好んだ。
その代表作がフランク・ハーバードの砂の惑星・デューンである。きっと石ノ森先生も夢中になって読んだ後に挿絵を描いたと思う。あまりに壮大な物語であるため実写化は不可能かと思われたが、ハリウッドはやってのけた。
TVドラマ版が先行したらしいが、映画も作られた。大ヒットとは言えないが、原作のファンならば足を運ばずにはいられなかった。私も映画館の大スクリーンでこそ観るべきと考えて観に行った口だ。
正直、原作の小説には劣ると思ったが、製作者の想いは伝わってきた。ちなみに二回、映画化されているが、私は歌手のスティングが悪役として登場している方が好きかな。でもねェ・・・正直言えば、石ノ森氏に漫画化して欲しかったかな。
ハーバードが認める可能性は低い気がするけど、当時の脂ののっていた石ノ森章太郎の力量ならば、きっと素晴らしい作品になったと思う。もちろん映画でもSFX技術の飛躍的向上により、より素晴らしい映像で映画化された実績は認めている。
多分、今回の第一部完結編でも前回以上の映像化技術が投入されているはず。だから観たい気持ちもある。ただ、早川のアホが漫画家による表紙及び挿絵を廃止して、映画の映像を利用したものに変更したのが非常に気に食わない。映画の広告をみると漫画家による挿絵を廃止した当時の怒りが、再び湧き上がってくる。
やい、早川。熱心なSFファンは未だに怒っているのだぞ。
『バクマン。』や『DEATH NOTE』の作画を担当していた小畑健さんが表紙イラストを描いた太宰治の『人間失格』などが注目され売上がアップしたそうですが、そんな前に漫画家さんが表紙を描いていた時代があったのですね。
東川篤哉のお笑いミステリーですら初期は内容に合わないやたら重厚な絵が表紙になっていたので手に取る機会がなかったです。
あらゐけいいちさんの絵になってから興味をそそられたので、カバー絵って大事ですよね。
私もお気に入りの作品がメディア化で本のイラストを変更された時、静かに怒っていました。
はい、未だに恨みに思っているファンの一人です。
火星シリーズの挿し絵は画集を眺めるほど好きでした。デジャー・ソリスが卵生なのが割とトラウマです。
フェイドは圧倒的にスティングですね。今回のフェイドも狂気をはらんでて良いのですが、パート2しか出てないので、キャラが弱い。
映画は頑張ってたけど、原作の壮大さはなかなか難しいですね。