ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

「鉄鼠の檻」 京極夏彦

2008-12-22 11:54:03 | 
通勤電車のなかでの読書が一番多い。

幸いにして、始発駅を使うので座って通勤できる。だからこそ、本をゆったりと読みながらの通勤といった、幸せを享受できる。座りながらでなければ、表題の本はとても読みきれなかった。

なにせ、重いし、分厚い。持ち歩くのでさえ、けっこう苦痛だ。もし良かったら、本屋の書棚に並ぶ表題の本を手にとってください。その分厚さと重さにめげますぞ。

まったくもって困った作家だ。さりとて、文庫化されて、上中下に分冊されたものをみると、物足りなさが否定できない。なんか、妙な癖を付けられた気がする。

いや、癖どころではない。私は京極夏彦が用意した檻に閉じ込められた気分だ。「鉄鼠の檻」とは良くぞ名づけたものだ。おそらく初読で、このレンガブロックの如く分厚く重い本に手を出す人はいるまい。

この本を読んだ人は、皆以前から京極夏彦の用意した檻に、自ら飛び込んだに違いない。まったくもって、困った作家である。

以前から思っていたが、京極氏は人が自ら作り出す心の陥穽に対して関心が深いようだ。常識では解明しきれぬ、心の問題の解決策として、古来より人間の叡智は妖怪を用意してきた。科学と言う輝かしき知識体系に囚われた現代人は、得てして妖怪のありがたみを忘れている。

妖怪の生みの親は人間なのだ。人間の心の闇こそが、妖怪を必要としてきた。その心の闇を解きほぐす仕組みとしての宗教であり、陰陽師でもある。

嗚呼、困った。多分、私の脳裏にも鉄鼠は檻を作って棲みついているはずだ。ただ、それに気がつかずに生きているだけなのだろう。さりとて檻があることを自覚して生きるのは、案外辛くも無く、ただ安住する安易さが気になる。妙なことを自覚させてくれるものだよ、京極堂は。
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「三丁目の夕日」 西岸良平

2008-12-19 12:17:35 | 
過去を美化するのは、あまり好きではない。

だから、表題の作品が映画化されてヒットしているのは知っているが、未だに観る気にはなれないでいる。もっとも、原作の漫画のほうなら、かなり昔から読んでいた。

たしか、雑誌ビックコミックに連載されていたと思う。あの当時で既に懐かしい風景を描いた漫画であった。もっとも、当時は劇画ブームであったので、必ずしも人気漫画とは言いがたかったが、反面底堅い支持もあったと思う。

多分、現代の若い人からすれば、まるで異国のような日本の風景だと感じるのかもしれない。もちろん、私には見覚えのある風景であり、懐かしさを感じない訳ではない。

懐かしさは、苦い悔恨を伴うものもあり、甘く切ない思い出ばかりではない。夕日を懐かしく思うのは、過去への憧憬に囚われているからだと思う。子供の頃なら、朝日の輝きに期待を寄せたものだ。

私はまだまだ夕焼けに呆ける訳にはいかない。夕焼けが人生の晩鐘を照らす優しい眼差しなら、まだその眼差しに身を委ねるには早すぎる。

夜に体力を蓄え、朝日の輝かしさと大気の冷たさに身を投げ出す気概こそが必要となる。まだまだ為すべき事は数多ある。

それでも、ふと立ち止まって夕日を顧みる余裕があってもいい。いずれ人生の晩鐘は鳴らされるのだと思う。いかなる形で人生の夕焼けを迎えるのかは分らないが、その日を悔恨と共に迎えることのないよう、今を大切にしたいものだと思います。
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今期のJリーグ

2008-12-18 12:43:35 | スポーツ
鹿島アントラーズの二連覇で終わった今期のJリーグ。

連覇は容易なことではない。まして大黒柱といってもいい小笠原が怪我で離脱。他にも怪我人続出のなかで、大きく崩れることなく優勝へと導いたオリベイラ監督は名将といっていい。岡ちゃん、こけたらオリベイラしかないと私は考えているぐらいです。この人が率いる日本代表は是非みてみたい。

アントラーズのもう一つの勝因は、世代交代に成功したことだ。これは凄いことだ。かつての強豪たちをみれば、その凄さが分る。ヴェルディは二部落ちだし、マリノスは中位が精一杯。ジュピロは入れ替え戦に回る始末。

その点、アントラーズは常に上位を保ち、強豪としての地位を確保している。若手のスカウティングから育成までが、しっかりしているからこそ可能なのだろう。

一方、今期最大の驚きは新人監督ピクシー率いるグランパスだ。あの天才選手がいきなり監督となったので、私はけっこう不安視していたのだが、やっぱりこの人凄いわ。苦労を積み重ねた天才だからこそだとも思う。徹底したサイド攻撃主体のシンプルな戦術だけど、それを選手に信じ込ませた手腕が凄いと思う。

選手と監督との信頼関係の構築に成功したからこそ、グランパスの躍進はあると思う。一方、それに失敗したのがレッズとジュピロだ。あれだけの選手を揃えながら勝てないレッズは、選手を掌握しきれなかったエンゲルス監督には荷が重かったと思う。一方、ジュピロはオフト監督の指示を選手が信じてないのが見て取れる。これじゃ勝てない。

来期は関塚監督が戻るフロンターレは、次こそは優勝を狙えるチームだ。また、若手の育成が素晴らしいシャムスカ監督率いるトリニータは、選手の流出さえ防げれば十分優勝を狙えるチームに育った。私としては、シャムスカ監督に次のオリンピック・チームを率いて欲しいな。もちろん、その先のワールドカップもだが。

最後に奇跡の大逆転劇を引き起こして、J1残留を決めたJEF千葉。後半戦に限れば、観ていて一番面白いサッカーをやっていたのが、実は千葉だと思う。イングランドから呼んだミラー監督は、堅守速攻型のチームに再構築したようだが、攻撃時のスタイルが面白い。多分、戦術がはまれば現在J1で一番魅力的なサッカーをしていると思う。

観ていてハラハラ、ドキドキする試合運びは、今まで見たことがないくらいだ。ちなみに、J1残留を決めた試合は、0ー2からの後半11分間で4点取っての大逆転劇。取材していたマスコミも、あまりの興奮に仕事にならなかったと嘆く面白さ。

TVでしか観てないが、現在その入場チケットはプラチナチケット化していて、入手困難だそうだ。やっぱり分る人は分る面白さなんだな。来年は是非とも生で観て見たいものだ。
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たまには贅沢を 十勝屋

2008-12-17 14:27:00 | 健康・病気・薬・食事
鉄板焼きと聞くと、思わず身構える。

お好み焼きや、もんじゃ焼きの鉄板焼きなら、用心することはない。しかし、ステーキの鉄板焼きだと、飛んでいくお札を連想してしまう。

十年ほど前だが、ホステスさん同伴で新宿の鉄板焼きのお店で7万円散財したことがある。たしかに美味しいお肉でしたが、正直頭を抱えたものです。当時は今より稼ぎが良かったので、カードを使わずに済みましたが、以来鉄板焼きと聞くと、お財布の中身を心配するようになってしまった。

ただ、そうはいっても目の前でお肉を焼いてくれる鉄板焼きの魅力までは否定できない。夜はともかく、昼間ならそこそこのお値段で楽しめるお店があるので、たまに楽しむことにしている。

ちなみに銀座ならば、並木通りにある岡半本店のランチはお薦め。二千円でお釣がくる程度で、美味しいお肉の鉄板焼きを楽しめます。ただ、フルコースは昼にはない。

最近見つけたのが、歌舞伎座向の日の出寿司が一階にあるビルの地下の「十勝」。コースメニューを頼むと、鉄板焼きの部屋に案内され、前菜からデザートまでフルコースを楽しめる。もちろんメインのお肉も美味しいが、他の料理もかなり楽しめる。食材は皆、北海道からの直送だそうで、珍しいジャガイモも食べられました。

これで5500円なら納得の値段だった。もっとも連れの女性は少し量が多かったとぼやいていた(でも、残さず食べた)ので、少し安いコースがあるので、そちらでも良さそうだ。

月一の贅沢ランチなので、どうせなら美味しくて楽しめる店がいい。店員さんの接客マナーもよく、気持ちよく食べられました。

正直言って困ったことに、五千円台の高額ランチでさえ内容に納得できない店もないではない。今回は90点の出来でした。え!満点じゃないのか?って。いや、急いでいたので、デザートの後のコーヒーが無かったので、その分マイナスです。仕事がたまっているので仕方ないのですが、本当はゆっくりしたかった。それが無念でした。でも、気持ちのいいランチでしたね。
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目覚めの岡山駅

2008-12-16 13:16:42 | 旅行
最終便でたどり着いた岡山駅は、既に消灯されていた。

外は小雨模様で、止む無く締め切られた待合室に続く通路の端っこに寝袋を広げて潜り込む。疲労が心地よく、硬い床も気にならずに、直に寝込む。

大学時代、春休みはクラブの長期合宿だった。その年は四国は宇和島から足摺岬までを徒歩で踏破して現地解散であった。待ち人でもいれば、すぐにでも帰京するのだが、2ヶ月前にふられていたので、のんびり鈍行で散策しながらの帰り道だった。

四国を食べ歩き、宿には止まらず野宿で済ませた。おかげで宿泊費が浮いたので軍資金がたまった。20代前半の遊び盛りの頃だ。エネルギー充填120%で高松の石鹸王国に乗り込んだ。干支が一回りは上のようだが、泡姫の熟練の手管に翻弄されて、燃料タンクは空っぽの状態で瀬戸内海を渡り、その日のうちに岡山へたどり着いたのは深夜だった。

四国では一ヶ月近く寝袋でのテント生活だったので、野宿は苦ではない。ただ、硬い床の上に眠るのは、けっこう寝苦しい。それでも、その日は石鹸王国での奮闘もあって、久々に熟睡できた。

私は普段、目覚めがいい。だいたい6時前後には自然に眼が覚める。が、その朝に限っては目覚めは遅く、騒音と身体に伝わる振動で眼が覚めた。寝袋から顔を出してびっくり。

通勤、通学ラッシュの人混みのど真ん中で寝ていたことに気がついた。

足早に改札へ向かうスーツ姿たちに見下されながら、慌てて起きて、寝袋抱えて待合室に逃げ込む。ああ、驚いた。

野宿はずいぶんやったが、やはり都会はやりづらい。これが田舎の駅なら、駅長さんがお茶を振舞ってくれることもある。すくなくとも混雑する通路にほったらかすようなことはない。

まあ、怪我もなく(蹴られることがある)、盗まれたものもないので良しとしよう。さて、これから偕楽園だ。団子食べずして、岡山を後にはできない。

こうして怠け者の、鈍行使った野宿の旅は続きます。気が向いたら、また書きます。ネタは沢山あるもんで・・・
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