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芝平にある棲む人の絶えてしまった家
人里離れた芝平の山の中に一人暮らす山奥某、時々このブログにも登場してもらっている。その山奥が、先日千葉の海に出漁するといって張り切って出掛けていった。そして数日後、どうやら手ぶらで帰ってきたらしい。春一番のため、海に出ることすらがかなわなかったようだが、不運はそれで終わらなかった。悪いことは重なるもので、横浜から芝平までは4時間半で帰ってきたというのに、隠れ家に通ずるわずか700メートルの坂道でゆるんだ雪道に車を潜らせ、ナント7時間もの悪戦苦闘を強いられたというのだ。「4輪にチェーンを履かせていたんだけど、スタック、スタックの連続でサー」、誰もいないあの雪の森の中で、その苦労は痛いほどよく分かる。「アムンゼンであれスコットであれ、喜んで隊員に迎えただろう」と、その際限なき苦闘を思い慰めるしかなかった。その後、どんな風の吹き回しか、1週間も断酒しているという。飲めば飲んだで心配だし、飲まねば飲まぬで気になるし、「百姓山奥いつもいる」、厄介な男なり。
5か月の休みも残り1か月と少々となった。今回はどこにも旅にでかけなかったせいか、いつもより時の経つのが速かったような気がする。無為なる日々ではなかったと思うが、それでもやり残したことがあったような気がする。が、それでいい。いつか、牧場を去るときも、同じような感慨が訪れるかも知れない。今は8年の牧場の歳月に満足しているが、過ぎてみなければ分からないこともある。多分、人生の終局においてもそうだろう。
それにしてもやはり、愛犬キクのいなくなったことは重かった。いまでもどこかで元気に暮らしているだろうと、そう思うことにしている。それと、雪が融ければ、通勤途中のどこか山の中で出会えるような、仄かな期待も持っている。鹿だって今冬の大雪を生き抜いたのだから、泥だらけになったキクが、いつものようにピク、ピクと尻尾を振りながら跳びっついてくるような、そんな気がしている。
時代遅れの山小屋「農協ハウス」の営業に関しましては、2月24日のブログなどをご覧ください。お問い合わせは、JA上伊那東部支所組合員課(直通電話:0265-94-2473)まで。