入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     「暮秋」(8)

2015年11月04日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


  牧場北門の手前に西に開けた場所があり、今朝ここへ来る途中に見たら、北アルプスは槍や穂高まですっかり冠雪していて、乗鞍も優美な山容を裾まで白くして朝の日を浴びていた。白馬から中央アルプスまで続く長いながい山並みの、その中では比較的南に位置する御嶽山や、西駒ヶ岳も薄く雪を被っていたが、あの程度ではまだ根雪にはならないかも知れない。ともかく北から、冬が徐々に迫ってきた。
 
 牛の入牧頭数が激減して以来、ここ何年か使ってなかった牧区の牧柵の状況を見て回った。支柱はまだしっかりしていたが、予想していた通りバラ線はどこもかしこも鹿によって切断されていた。当時はまだ打ち込みにはハンマーを使っていて、途中で石に当たり、打ち込みを断念するという悔しい思いもよくした。特に初の沢の支流では、3本くらいの鉄の古い支柱を担いで下りていったが、どこを選んでも打ち込みに失敗して、谷の中で一人途方にくれるということもあった。7年とか8年とかが経っているはずなのに、当時のことを支柱やバラ線が不思議なくらい鮮明に思い出させてくれた。
 
 鹿の食害を防ぐため、第1牧区の電気牧柵には高電圧を維持してギリギリまで落とさないできたが、それももう限界に近い。10日もすれば、ここにも雪が降る。それまでには他の牧区と同じように、電線に似たリボンワイヤーを地面に落としておかなければならない。また不便になるが、水道も本管を開けて、凍結対策をしなければ昨年の失敗を繰り返すことになる。
 毎年のことながら、こういう場所でする冬支度は、独特の感慨を催す。終わったという気持ちの中に、去っていく時間への未練というのか、寂しさというのかがある。

 入笠牧場の宿泊施設及びキャンプ場の営業に関しましては、カテゴリー別の「H27年の営業」、「H27年度冬季営業」を、また天体観測に関心のある方は「入笠牧場からの星空」をご覧ください。
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