牛の面倒を見てから、栄養不足の身でテイ沢に行ってきた。この仕事を始めてからずっと気になっていたことだが、国土地理院が発行する地図(2万5千分の1)には、テイ沢を高巻く登山道が記されている。上流から見て右側になる。現在の沢に沿った径も石塔などからしてかなり古いはずだが、この地図に描かれた登山道がそれよりかずっと昔、10世紀ころの古道「石堂超え」と、一部でも関連するのかどうかということを知りたいと思っていた。
きょうの最初の予定は、丸太橋や草刈りの下見をするつもりでいたが、丸太橋は一応の役目を果たしているようだったし、草刈りも慌てることはないと分かったところで気が変わった。不調を押してこの機会に、長年の疑問であった幻の古道、ならもちろん文句はないが、それが適わぬなら、かつて使われたらしい登山道でもいいから、辿ってみたかった。
実は、この登山道の一番高い地点には、きょうと同じ目的ですでに行っている。しかしこの時は、最高地点にあった古い木の根なども注意深く調べたが、地図に記されている登山道はその痕跡すらもなかった。そもそも登山道として、山腹を巻くなら分かるが、なぜあんな高所まで登らなければならないのかも理解できなかった。
きょうは、以前から目星を付けていた小さな沢から入った。確かに、登山道跡と呼んでもよいような踏み跡が、クマササの茂る急な斜面にしばらくは続いていた。登るというより巻くと言うにふさわしかったが、そのうちに分からなくなった。その後も、そういうことを何度も繰り返した。その度に、遠くの斜面に獣道と変わらないような踏み跡が見え、「もっと来い、もっと来い」と誘ってくれた。「御免こうむります」と何度か言いかけながら、それでも下降を我慢した。転がればどうなるか、それももちろん分かっていた。(つづく)
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