入笠牧場その日その時

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  牧人の休日(32)

2015年03月11日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

    錯誤捕獲されたクマの古い写真といつも携帯している鈴や笛

 もう少しクマのことを書いてみたい。
 もう、10年くらい前のことで、季節は6月だった気がする。中央アルプスの北部にある桑沢山から経ヶ岳に通ずる尾根道を歩いているときだった。連れていた犬が何かを見付けたのか突然、藪の中に入っていってしまった。犬を無視してそのまま先を行くべきか迷っていた。そしたらまたすぐ、ガサガサとという音がして、今度は真っ黒い毛を光らせたクマが、ドサッという感じで飛び出してきた。距離にして3メートルほどだったろう。ところがクマはこちらには目もくれず、かなりの速足で、尾根道を逆方向に行ってしまった。どうも、こちらの接近がクマには分かっていたような気がする。

 「クマにあったらどうするか」(ちくま文庫)という本を偶々見付けた。 ウーン、と首をかしげたくなる話も出てきたり、信じられない体験談もあった。しかしもちろん同意できたり、初めて知ることや、有益で参考になる内容もあった。その中で、万一クマに遭遇したら、背中を見せて逃げてはいけないということが、何度も強調されていた。その場に立って、腹に力を入れてこちらも吠えろとも。また、クマに倒されてもすぐ立ち上がると、次のアッタックを招きかねないから、しばらくはそのままの状態でいろという注意もあった。これらのことは、これまで別の人から聞いた話や、体験談と符合する。しかし、これが実に大変難しい。知識としてあっても、いざそういう局面になれば、果たして実行できるだろうか。確かに逃げようとして木に登ろうとしても、木登りはアチラサンの方が余程上手だし、走ればこれまた競争にならない。かと言ってクマを前ににして、じっと立ち続けることができるだろうか。要は、クマと出会わないことに尽きるだろうが・・・。

 写真家の故星野道夫は、アラスカの森の中へいつしか銃を持っていかなくなったと書いてる。それが、不幸な死の遠因であったなら皮肉なことだが、銃に頼らないということは自然に対し自分を謙虚にし、より注意深くさせる。いつでも神経を鋭敏に保ち、緊張感を持つことが、大自然の中で過ごす上での大切な要素なんだと説明している。
 かの地で見かけた看板には、人間の不注意により、先住者であるクマを殺さなければならないような事態を招かないよう、充分に注意しろと大書してあった。人間にとってばかりでなくクマにとっても、お互いが一定の距離を保つことが共存の条件である。そのために、眠っていた自然やクマに対する緊張感を覚醒させねばならないし、それが山のよさを知り、味わうことにも繋がるのだろう。

 時代遅れの山小屋「農協ハウス」の営業に関しましては、2月24日のブログなどをご覧ください。お問い合わせは、JA上伊那東部支所組合員課(直通:0265-94-2473)まで。
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