世の中には女傑と呼びたくなる人がいる。山域、山名は伏せておくが、この厳冬期、零下20度近い気温の中で山仕事をしている人たちがいる。女性の樵だ。
しかも彼女らは山に棲み付き、里へは滅多にしか降りてこず、昔のように作業小屋などないからテント暮らしだという。驚き、感心した。
どんな事情でそんな過酷な仕事に就いたのかは知らないが、年齢は30代、40代だと聞くし、それほど長い経験があるわけではないらしい。
チェーンソーについてはここでもよく話題にするが、とにかく重い。それを手にして、背丈ほどもあるクマササの茂る急な斜面を下っていくのである。その悪条件に加え今は冬、1メートルを超す積雪があり、足でも滑らせれば深い谷をどこまで落ちていくか分からない。
年季を積んだ名人と言われる樵でも、時に伐倒方向を誤って、大事故に至ることがあると聞く。ましてや、せいぜい4,5年の経験しかない彼女らである、怖ろしい思いをしたことは何度でもあるだろう。
作業は過酷を極める。寒いし、冷たいし、1本の木を伐るだけでも体力はもちろん、相当の注意、緊張が強いられる。
伐り倒す木の姿や枝ぶり、風向や風速、隣接する木との間隔、雪の加重などを配慮して、さらには退避路の確保を確実にした上でいよいよ伐倒となる。
伐り倒すまでには経験技術がものをいう。殆どの場合、作業は平地ではなく地形的に問題のある場所ばかりで、危険で無理な作業を余儀なくされることが多いはずだ。
尖がった声で、権力に物申す女性も必要だろう。男女同権を声高に叫び、弱い人、貧しい人々への同情を見せ、驚くような出演料を取る賢い女性がいても、それはそれでいい仕事ではないか。
しかし、何と言えばいいのか、食べ慣れた米が食卓から消え、パンばかり食べさせられていたような違和感から、こういう女性の話を聞いて久しぶりにホカホカの米、焼き魚、煮物、香の物、そして出汁の効いた味噌汁を味わえたような気がした。
以上は極めて「個人の感想で、効力を保証するものではありません」の類、悪しからず。
本日はこの辺で。