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今朝は霧の中を来た。弘妙寺(ぐみょうじ)の桜は今が一番の見ごろで、そこら辺りを過ぎると、季節は少しづつ逆戻りしていくのが分かる。それでもどことなく、薄緑の淡い色が、山室川沿いの不愛想な森や林の中に紛れこんできたようにも感ずる。
上の大曲に残る雪を強行突破して、今年初めて車で大沢山の牧区まで行ってきた。JAXAの観測所まで行くうちに、薄い霧の中に青い空が見えてきて、そのあまりに澄んだ色にはっとした。長雨で大気の汚れがすっかりと落ちた、清澄な青い、深い空だった。
松本平は雲が蓋をしていたが、その上空には北アルプスの長い峰々が雲の上に浮かぶように見え、そこへ行けば決まって目に入るさんざん眺めた景色だというのに、見飽きることはない。放牧地の真新しいグリーンの色も目に和む。
管理棟にようやく水が来た。本管の破断した箇所と、管理棟の折れた蛇口は下からきた専門職に任せたが、それから無事水が出るようにするまでは、ここには書けない孤軍奮闘を毎年、しなければならない。手の切れるような冷たい水が相手だが、雪解けの水音を聞きながら、まだ冬の終わらない谷の中にいるのも悪くはない。
半年ぶりに蛇口をひねれば、透明な水がほとばしるのは、なんと感動的なことだろうか。これだけで、長かった冬がようやく終わったのだということを実感する。
鹿が跋扈するようになった。明日から第1牧区の電気牧柵立ち上げの作業を始める。