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先日、O氏から連絡があり、青柳駅からここまで歩いて来るという。会うのは5年ぶりのことだ。氏は「孤高の道標」に鵜殿正雄と共に描かれている神足勝記の研究者で、これまで遺された著作を調べその足跡を辿ったり、新たに神足に関する本の出版も進めている。
ところが、待てど暮らせど来ない。そろそろ暗くなるころになって、マナスル山荘本館のSさんから電話があり、氏はそこでアイスクリームなぞを食べているという。来なくてもいいというのを振り切って迎えに行った。
到着が遅れた理由は、氏が手にしていた5万分の1の地図、それと登山の標識布にも使われているが、森林管理署や林業関係者も同じように使用している赤いビニールテープであった。
地図は南アルプス北部の仙丈岳や東駒、それに、北岳もあったか。入笠周辺は大まかなもので、付録のようなもの、しかも御所平峠や小入笠の表記は明らかに間違っていた。
どうやらO氏は土地の老女に教えられた通りに歩き出し、途中からは赤いビニールテープに導かれて谷に迷い込み、それでも引き返すことをせずにそのままテープを信じて突き進んだようだった。
戸台からここまで20キロ近い距離を、革靴を履いて歩いてきた人とは、このO氏のことだ。山には慣れている。それが今回は災いした、と言えるか。
O氏が手にしていた2020年に発行されたS社の地図、以前の間違いが訂正されていない。また、手許にある少し古いが、国土地理院の2万5千分の1の地図でも、テイ沢を高巻く登山路が消えていない。ついでながら前から言っている通り「大阿原」ならいいが、「大阿原湿原」も頂けない。
この登山道は調べてもずっと以前から使われていた形跡はなく、わずかの踏み跡も途中から全く辿れなくなっている。
5万分の1の地図の方は、端に注意として言い訳めいた記述があり、確かに登山道や小屋など山のの状況は変わることはあるだろう。しかしその前に、この地図を担当した人はきちんとした踏査を行なったのかどうか、疑問が残る。
登山の標識布もしくはビニールテープと、林業関係者に使われる目印用のビニールテープは、どちらが先に使い出したかはさて置いて、色を変えるなどの対策を早急に考えるべきだ。このままでは深刻な問題を起こすことになる。いや、もう起きている。
観光だ、登山だ、キャンプだと、喧しい。その人たちが頼りにする登山道や地図、「人のすることだから間違うこともある」、などと言っていてはいけないと切に思う。
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本日はこの辺で。