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午前6時半、気温零下2度。まだ日は昇ってこず、放牧地には霜が降りている。きょうも天気は良さそうだ。樹々の落葉が進み、白樺の樹幹に加えて赤松やモミのような常緑樹の緑の色が大分目立つようになってきた。
いくら長い秋を望んでも、季節の移ろいを止めることはできない。そんな当たり前のことを、窓越しの見慣れた景色を眺めながら感じている。
牛も下りて大分経つのに、まだすることがあるのかと問われることがある。それに対しては、もっぱら最近は草刈りばかりしていると応えることが多い。追い上げ坂と、今は使ってない第6牧区の境界になっている牧柵の移動を、この秋の主な仕事に据えていたが、支柱を抜いていてあばら骨を痛めたため、しばらくは自重することにした。その間の草刈りである。
この時季にカヤを刈ると穂が飛び散り、結果的にはススキの種を撒き散らしてしまうことになるのは元より承知している。それでも刈らなければならないのは、放っておいてもカヤは成長していくし、穂は風に飛ばされて増えていく。
来春は、この追い上げ坂にも馴化を兼ねて牛を放し、生えてきたばかりの新芽を食べさせたらどうかと考えてみたのだが、果たしてその通りに上手くいくか。前述した牧柵の移動も、そのための準備だ。
今朝、ちょっとした用事があって東谷の近くまで行ってきた。現在、小黒川の谷はあちこちで工事が行われていて、一般車輛が通行することはできない。車は通行できないが、歩くことぐらいなら工事の状況次第だが、邪魔にならないよう注意すればできると思う。
前日に牧場に泊まり、翌日は法華道から半対峠ぐらいまで歩いて、そのまま10世紀の延喜式にも載っているという古道「石堂越え」を探りつつ小黒川の川床を遡るもよし、あるいは対岸の林道へ出て、東谷辺りまで歩いて帰ってきても存分にいい秋の一日を楽しめるはずだ。
眼下には岩を噛み清流が音を立てて流れ、日の射さない暗い谷からは対岸の落葉松の林に丁度朝日が射し始め、眩いばかりの黄金色に燃え出した。誰でもが目にできる光景ではない。山に暮らす者が偶々出会えたとびっきりの幸運だったろう。
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本日はこの辺で。