入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     「初冬」 (12)

2015年11月20日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


  空は晴れてきたが、風は冷たい。冬の足音は今度こそ、幻聴ではなさそうだ。午前中はかなり風もあって、森を揺るがす音には凄みがあった。午後になって風は止んだが、気温は10度を超えることがなく、いくらか青空が抗ってはみたようだが、北東の空から張り出してきた重苦しい灰色の雲に制圧されつつある。
 ついに今日、水を落とした。これで、炊事に関することは料理はもちろん洗いまで、不便を甘受するしかない。それでも例年なら、11月の声を聞けばその準備を覚悟したのだから、今年はそれだけ暖かかったということだ。

 ブログ「海のおうち山のおうち」でChiyさんが思いがけず「独りだけのウイルダーネス」(創元社刊)を紹介していた。アラスカの森の中のだれもいない湖のそばに、一人で手作りの丸太小屋を建て、そこで過ごした日々の暮らしや、アラスカの自然を綴った本だ。
 先年、たまたま高遠の山の中で暮らす知人から同書の元になる"One Man's Wilderness"という本を見せてもらい、アラスカ関連の本というだけで入手した。義兄が「卓球のできる小屋」を建てたとき、姉が本の内容を聞いて日本語訳を義兄にプレゼントしたが、その本も借りてきたまま、まだ手許にある。ToshyさんとChiyさんが信州の暮らしを決断するきっかけになった本だと知って、大いに驚いたり、納得した。
 もう少し若ければ・・・、と書くのは止そう。こういう暮らしにはかなり憧れたが、もう、それはいい。ただ、主人公は手先が器用で、家事もきちんとやっていたようだが、酒と本のことについて何も書かれていない。太陽の昇らない長い冬の間、アルコールも煙草も嗜まなかったようだし、本を読む時間があれば木工の仕事にいそしんでいたようだ。それがスゴイ。恐れ入る。
 真似して、この一冬、入笠で「One Man's Wilderness]をやれって?それは無理でござる。

 入笠牧場の宿泊施設及びキャンプ場の営業に関しましてはカテゴリー別の「H27の営業」、「H27年度冬季営業」を、また天体観測に関心のある方は「入笠牧場からの星空」をご覧ください。



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     「初冬」 (11)

2015年11月19日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


雨の心配はなさそうだが、午後になってまた霧が深くなってきた。遅い昼飯を食べたら、第2牧区の山道に溢れ出た湧水を何とかしなければ、轍が川になっている。確か、伐りっ放しにしてある丁度手ごろな落葉松が1本あるから、それで水路を作ってやればいい。
 予定通り、第1牧区の電気柵は全線を落とし終えた。また来年、できるだけ早くそれを立ち上げ、通常の牧柵の傷んだ箇所を直し、電気牧柵の下に生えた草を刈り・・・、そういうことを第1牧区だけでなく、3,4の牧区でもやらなければならない。

 県の企画する「誘引狙撃法によるニホンジカ捕獲」だが、誘引はすでに成功している。二カ所の誘引場所に置いたヘイキュ-ウブは毎日完食され、塩にも明らかに反応している。後は、爆音機を早く設置して、音に対して鹿を馴化させ、なおかついかに昼間におびきだすかを考えることである。ここまで来れば、塩だけで充分な誘引力があると思われるから、ヘイキューブは中止し、塩も夜間は引き上げた方がいい。そうやって、鹿をうまく昼間の行動に変えていければ、捕獲はそれほど難しいことではないだろう。
 県の企画書を読み返そうとメールを開いたら、思いがけず巣鴨氏からメールが届いていた。それも鹿の面白い行動についてだった。鹿と鉄道車両の衝突事故が後を絶たない中、その原因として、どうも鹿は鉄分(鉄粉)を好むのではないかという新説の紹介であった。
 鹿の増えた原因とくればかならず、ハンターの高齢化と減少が言われる。それよりも、捕獲の方法を銃に頼りすぎて、罠を軽視したことだということは、何度でも書くが、間違いない。

 OTNさんのテイ沢とヒルデエラ(大阿原)の素晴らしいDVDを、やっと見ることができた。大変な労作で、美しい数々の映像のバックには清冽な水の音とピアノ音楽が流れ、丸太橋にはそれぞれに雰囲気をこわさないよう工夫されたスーパーインポーズが入り、イヤー感動しました。驚きました。懐かしくもあり、苦労も思い出し、思わず見終わって拍手をしました。もう、感謝、感謝です。

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「初冬」 (10)

2015年11月18日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


今朝は年に一、二度あるかどうかというような深い霧の中を来た。何年も続く山室川の砂防ダムの工事のせいで、急に大型トラックが日に延べ40台も通行するというような状況になって、それを嫌って少し遠回りになるが最近は千代田湖経由にしていた。
 湖近くまで来るうちにようやく、霧の深さがいつもとは違うことに気が付いた。わずか数メートルの先が白い闇になてしまい、スピードを上げることができない。加えて最近、右目の視界に黒い毛糸くずのようなものがちらつき、これがまた余計にイライラを募らせた。

 いつもの年なら、明日で仕事は終わる。しかし今年は有害駆除の仕事が入ったせいでそうはいかず、大雪でも降らない限り12月の8日まで山の仕事が続く。そんな事情でまだ、小屋や周辺の冬支度が完全には終わっていない。気温が高いせいもある。
 そういった仕事の中でだが、かならずやらなければならない仕事、これは牧を閉ざすまでにはもちろんやる。しかし、やった方がいいだろう、というような仕事もある。これが実に悩ましく、頭が痛い。使ってない牧区の牧柵の補修、山道の水はけ、補強、水場の確保、枝打ち・・・。
 今日も第1牧区の電気柵を落としながら、そういったジレンマに陥った。地形によっては冬の間に雪の動きによって、支柱のグラスファイバーが折れてしまうことがある。こういう場所は支柱ごと抜いてしまうしかないが、しかし平の場所でも、これまでと同じことをする必要があるのかどうかと迷ったのだ。鹿の侵入はそこらここらで許してしまっているし、特に来年の立ち上げの苦労を思うと、余計にその気持ちは強くなる。しかしもう半分以上は終わった。恐らく明日、残りを全部やり終えて、安堵することになるだろう。

 今年はどこにも行かなかっただろうと、友人に言われた。どこかに行くと言っても日帰りか、せいぜい1泊が限度だが、確かに「入笠牧場命」で明け暮れて、また一年が終わろうとしている。

 昨日友人のNは、鹿嶺高原まであと3キロという地点で引き返してきたという。所要時間4時間少々。一般には休憩も入れて、往復で7,8時間をみておきたい。
 TDS君、体長でも悪いのか?

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     「初冬」 (9)

2015年11月17日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 若い頃一緒によく山に登ったNが突然やってきて、片道で2時間ほど、鹿嶺高原に通ずる山道を歩いてくると言って出掛けていった。雨の予報がはずれて、高曇りの天気で風もなく、寒くもないからちょうどいいだろう。
 一応この山道のことを「入笠トレッキングコース」と呼ぶらしいが、気持のよい山道なのだからふやけたカタカナ名でなく、もっとふさわしい名前がないのかと思う。この片道12キロのコース、2,3年は伊那市が主催して市民が参加する山歩きの好企画だったが、何故か中断されてしまった。
 その後どこで聞きつけたのかオフロードバイクやマウンテンバイクが入り、おかしなことになった。現在はこうした場違いの乗り物は、乗り入れ禁止になっている。ただ、そうなってはいるが、タイヤの跡を目にすることがある。
 中には牧柵を切ったり、道でもない所を走ったりする狼藉者がいて、注意すればすぐ喧嘩口調になる。皆がそうだというわけではないが、頭が痛い。無力を感じてしまうことがある。

 Nはどこまで行ったのだろう。こんな静かな初冬の尾根道を一人で歩こうとするなど、まだまだ元気だ。捨てたものではない。昨日戸台へ下った折、1年ぶりくらいで白岩岳の登山口を見て、懐かしかった。今年はもう無理だが、来年はNを誘い、笹ケ平沢から入る白岩岳への登路でも調べてみようかと考えている。
TDS君、コメントありがとう。心強く読みました。君とも山に登ったが、君の場合は奥又白谷のあの一件が、忘れられまい。

 霧の中 やけに牛鳴く 健さん忌  TDS

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     「初冬」 (8)

2015年11月16日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


  久しぶりに第1牧区の奥にある、通称「舞台」と呼んでいる放牧地へ行ってきた。明日から電気牧柵を落とすための下準備で、これが終わるといよいよ牧を閉じ、山の暮らしと別れをすることになるのだが、今年はそうもいかない。まだ、県の企画した有害駆除の仕事が残っている。それに冬季の営業のことも考えなければならない。
 いつもなら、もうとっくに水道は本管を流しっぱなしにして、凍結防止の処置をするのだが、まだしてない。今年はそれくらい暖かい。近頃のクマは冬眠しなくなったというし、鹿もまだ里に下りていってはいない。温暖化は予想以上に進んでいるらしい。

 昨日から狩猟が解禁されたが、天気のせいだろうか、あまりハンターの姿を目にしなかった。今日も小黒川林道から戻ってくるそれらしい車を1台見ただけだ。クマ、イノシシ、鹿と、野生している動物はこの辺り、一般の入山者が思うよりも多いに違いない。先日も枯木の付近に仕掛けた有害駆除の罠に、クマとイノシシが掛かったと聞いた。あのすぐそばでは砂防ダムの工事が行われていて、人も車も重機も行き交い、その騒音たるやかなりのものだと思われるのに、平気のようだ。

 今日は少し早く山を下りる。小黒川林道の様子を見ておきたいので、久しぶりの戸台経由となる。
 FKBさん、Nさん、MNKくん、コメントありがとうございました。今日はお礼だけ言っておきます。
 
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