市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

政務調査費の不適正使用に「理由がない」…またも政官保護判決を出した前橋地裁の迷裁判長

2010-02-07 10:33:00 | オンブズマン活動
■1月30日の新聞各紙に、市民オンブズマン群馬が足掛け4年にわたり係争してきた裁判の結末が掲載されました。ご覧になった読者も多かったと思いますが、念のため、各紙の記事を紹介します。
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◆政調費返還訴訟で原告側の請求棄却 前橋地裁
 2003~05年度の県議会の政務調査費が適正に使用された根拠がないとして、市民オンブズマン群馬の小川賢代表ら2人が県知事に対し、自民党など3会派に計約4億7570万円の返還を請求するよう求めた住民訴訟の判決が1月29日、前橋地裁であった。松丸伸一郎裁判長は「原告の請求には理由がない」として、原告側の請求を棄却した。
 松丸裁判長は判決理由で、終始報告書に記載された政務調査費の残余額について、「交付額以上に調査研究費を支出すれば、残余金がゼロになることもある」と指摘。「市と基準に適合しない政務調査の支出があった」とする原告側の主張を退けた。
 判決を受け、原告側は「実態を見ようとしない不当な判決だ」と話した。一方、大沢将明知事は「県の主張が認められてよかった」、原富夫議長は「今後、統一的なマニュアルを作成し、一層の厳格な運用を図るとともに透明性の向上に努めたい」とそれぞれコメントした。
(上毛新聞平成22年1月30日付朝刊3面)

◆政調費返還訴訟 オンブズ側敗訴 地裁、違反ないと判断
 市民オンブズマン群馬のメンバーらが大沢正明知事に対し、県議会の自民党など3会派に総額約4億7500万円の政務調査費の返還を請求するよう求めた裁判の判決が1月29日、前橋地裁であり、松丸伸一郎裁判長はオンブズマン側の請求を棄却した。
 オンブズマン側が訴えを起したのは2007年6月、03~05年度の収支報告書で、会派の年度での残余額が0円になっているなど、残額を調整して記載した後が認められるなどとして自民党、フォーラム群馬(08年にリベラル群馬)、改革クラブ(05年に解散)で条例に反した政調費の使用があったと主張した。
 そのため、同時期に支出された自民党への約4億6800万円、フォーラム群馬への約46万円、改革クラブへの約690万円について、知事は返還請求すべきだと訴えていた。
 判決で松丸裁判長は、「各会派の政調費の用途に違反があったとは言えない」との判断を示した。
(朝日新聞平成22年1月30日朝刊群馬版)

◆県議会政調費 地裁、返還請求棄却「原告は事実を立証せず」
 県議会の政務調査費に不当な公金支出があったとして、市民オンブズマン群馬のメンバーが、県知事を相手取り県議会会派への返還請求を行うよう求めた住民訴訟で、前橋地裁(松丸伸一郎裁判長)は1月29日、原告側の請求を棄却した。
 判決によると、原告側は03~05年度に▽リベラル群馬▽自民党▽改革クラブ(05年解散)――の3会派に交付された政調費が「使途基準に適合していなかった」などと主張したが、松丸裁判長は「原告らは事実を立証したとはいえず、主張は理由がない」と退けた。
 市民オンブズ群馬は「なぜ地裁は事実を見ようとしないのか。控訴を検討する」とした。
【鳥井真平】(毎日新聞平成22年1月30日朝刊群馬版)

◆政調費返還請求訴訟、請求を棄却
 県議の政務調査費の使途が基準を逸脱しているとして、市民オンブズマン群馬のメンバーが大沢知事を相手取り、自民党など県議会3会派に対して、2003~05年度に支出された政務調査費総額約4億7500万円の返還を請求するよう求めた訴訟の判決が29日、前橋地裁であった。松丸伸一郎裁判長は、政務調査費の使用が本来の使途や目的に違反しているとは推認できないとして原告の請求を棄却した。
 訴状によると、自民党と改革クラブ(解散)には「政務調査費の残余金の端数が0円になることは考えられない」などとして、それぞれ4億6830万円と690万円を、使途にマニフェスト公表に要する費用を挙げたフォーラム群馬(解散)には「マニフェストは自費で負担すべき」として約46万円の返還を求めていた。
(讀賣新聞平成22年1月31日朝刊群馬版)

◆市民団体の県議会政調費訴訟 「返還」請求を棄却 地裁判決
 県議に支給された政務調査費の使途が不透明、として「市民オンブズマン群馬」メンバーが大沢正明知事に対し、自民党など県議会三会派に2003~05年度分計約4億7千5百万円の返還を命じるよう求めた訴訟の判決が29日、前橋地裁であった。松丸伸一郎裁判長が「使途基準に適合しない支出があったとは言えない」などとして、原告の請求を棄却した。判決では、「政調費の残余額がゼロで端数がないのは不自然で、不適切な支出があった」などとする原告側の主張について、「交付額以上に支出すれば、残余額がゼロになることもあり得る」などとして退けた。
 判決を受け、大沢知事は「主張が認められてよかった。議会で政調費の運用見直しを検討していると聞いており、取り組みを見守りたい」との談話を発表。原富夫議長は「統一的な政調費マニュアルを作成し、より厳格な運用を図るとともに透明性向上に努めたい」とのコメントを出した。
 原告側は「政調費の使い方を正すのが目的だったが、実態を見ようとしない判決」と批判した。(東京新聞平成22年1月30日朝刊群馬版)
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■この裁判は、政務調査費の不明朗な使途が明らかに想定されるので、その証拠提出と説明責任を群馬県議会の関係各会派に求めるとともに、不当利得で得た県民の血税を群馬県知事に返還するように求めたものですが、なぜか、中立の立場であるべき群馬県知事が、自ら被告側に補助参加してきて、異常に県議会の関係各派を擁護してきました。これでは、裁判の中立性は担保できるはずがありません。

 さらに、この裁判を担当したのが、松本簡易裁判所判事当時1994年の松本サリン事件で第一通報者の河野さん宅の捜索令状を発行したり、東京地方裁判所八王子支部所属当時1999年9月2日にJR中央線で発生した痴漢冤罪事件で冤罪判決を出したり、八ッ場ダムの住民敗訴判決をだしたり、もう4年近くも群馬県の司法界に君臨する裁判長なのですから、政官側の被告連合にとって、これほど心強い味方はほかに見当たりません。

 証拠調べもしようとせずに、政官側からの主張だけに耳を傾けて、住民からの問題提起は、最初から軽視してきた経緯は、判決文にも如実に表れています。細かいコメントをするより、まずは判決文をご一読ください。

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平成22年1月29日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 渡部明美
平成19年(行ウ)第4号政務調査費返還代位請求事件
口頭弁論終結日 平成21年11月13日
    判       決
群馬県安中市野殿980番地
  原告      小川 賢
群馬県沼田市上発知町字迦葉山丙350-1
  同上      杉山弘一
  原告ら訴訟代理人弁護士 樋口和彦
  同上      吉野 晶
  同上      三角俊文
前橋市大手町1丁目1番1号
  被告      群馬県知事大澤正明
  同訴訟代理人弁護士 丸山和貴
  同指定代理人    阿部成司
  同上      橋爪光明
  同上      友松 寛
  同上      縁川善彦
  同上      高田 隆
  同上      鈴本和人
前橋市大手町1丁目13番14号
  被告補助参加人 群馬県議会自由民主党
  同代表者    南波和憲
  同訴訟代理人弁護士 鈴水利治
  同上      神崎浩昭
  同上      長家広明

    主 文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は、補助参加によって生じた分も含め,原告らの負担とする。

    事実及び理由
第1 請求
1 被告は、群馬県議会リベラル群馬(以下「リベラル群馬」という。)に対し,46万1182円及びこれに対する平成19年9月16日から支払い済みまで年5分の割合による金員の支払いを請求せよ。
2 被告は,群馬県議会自由民主党(以下「補助参加人」という。)に対し,4奥6830万円及びこれに対する平成19年9月16日から支払い済みまで年5分の割合による金員の支払いをせよ。
3 被告は,群馬県議会改革クラブ(以下「改革クラブ」という。)に,690万円及びこれに対する平成19年9月19日から支払い済みまで年5分の割合による金員の支払を請求せよ。
第2 事案の概要
 本件は,群馬県の住民である原告らが,群馬県政務調査費の交付に関する条例(平成13年3月27日群馬県条例第31号,平成19年6月28日条例第55号による改正前のもの。以下,「本件条例」という。乙1。)及び本件条例に基づいて議長が定めた「群馬県政務調査費の交付に関する規程」(平成13年3月30日議会訓令甲第1号。以下「本件規程」という。乙2。)に基づき,群馬県がリベラル群馬,補助参加人,改革クラブ(以下、三者を併せて「本件各会派」という。)に対して交付した政務調査費が,本件条例が定める使途に使用されていないなどと主張して,地方自治法(平成20年法律第69号による改正前のもの。以下「法」という、)242条の2第1項4号に基づき,被告に対し,違法に支出された額と同額の不当利得の返還及び遅延損害金の支払を本件各会派に対してそれぞれ請求することを求めている事案である。
1 前提事実(次の事実は当事者間に争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる。)
(1) 当事者等
 ア 原告らは,群馬県の住民である。
 イ(ア) 本件各会派は,群馬県議会(以下「県議会」という。)内で同一の行動をとるために県議会議員によって構成された権利能力なき社団である。
  (イ) 改革クラブは,議員一人が所属する一人会派であったが,平成17年5月に解散し,同月,同議員はフォーラム群馬に所属することとなった。また,同議員は,平成17年8月に県議会議員を辞職した。
  (ウ) フォーラム群馬は,平成20年5月1日,県議会の別会派であったスクラム群馬と合流し,リベラル群馬を結成した(弁論の全趣旨)。
 ウ 被告は,群馬県知事である。
(2) 関係法令の定め
 ア 法100条
  13項
 普通地方公共団体は,条例の定めるところにより,その議会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として,その議会における会派又は議員に対し,政務調査費を交付することができる。この場合において,当該政務調査費の交付することができる。この場合において,当該政務調査費の交付の対象,額及び交付の方法は,条例で定めなければならない。
  14項
 前項の政務調査費の交付を受けた会派又は議員は,条例の定めるところにより,当該政務調査費に係る収入及び支出の報告書を議長に提出するものとする。
イ 本件条例は,法100条13項及び14項を受けて,以下のとおり規程する(乙1)。
第1条
 この条例は,法第100条第13項及び第14項の規定に基づき,群馬県議会議員(以下「議員」という。)の調査研究に資するため必要な経費の一部として,群馬県議会(以下「議会」という。)における会派に対し,政務調査費を交付することに関し必要な事項を定めるものとする。
第2条
 政務調査費は,議会の会派(所属議員が一人の場合を含む。以下「会派」という。)に対して交付する。
第3条
1 各会派の政務調査費の月額は,30万円(以下「一人当たりの月額」という。)に当該会派の所属議員の数を乗じて得た額とする。
2 前項の所属議員の数は,つきの初日が終了した時における各会派の所属議員数による。
  (以下略)
第4条
1 議員が会派を結成し,政務調査費の交付を受けようとするときは,代表者及び政務調査費経理責任者を定め,その代表者は,別に定める様式により会派結成届を議長に提出しなければならない。
3 会派を解散したときは,その代表者は,別に定める様式により会派解散届を議長に提出しなければならない。
第6粂
 知事は,前条の規定による通知に係る会派について,政務調査費の交付の決定を行い,会派の代表者に通知しなければならない。
第7条
1 会派の代表者は,前条の規定による通知を受けたときは,毎四半期の最初の月の十日(その日が群馬県の休日を定める条例(平成元年群馬県条例第6号)第1条に規定する県の休日に当たるときは,その直後の休日でない日)までに,別に定める様式により当該四半期に属する月数分の政務調査費を知事に請求するものとする。ただし,一四半期の途中において議員の任期が満了する場合には,任期満了日が属する月までの月数分を請求するものとする。
2 知事は,前項の請求があったときは,速やかに政務調査費を交付するものとする。
5 一四半期の途中において,会派が解散したときは,当該会派の代表者は,当該解散した日の属する月の翌月(その日がつきの初日の場合は,当月)分以降の政務調査費を速やかに返還しなければならない。
第8条
 会派は,政務調査費を別に定める使途基準に従い使用しなければならない。
第9条
1 会派の代表者は,当該政務調査費に係る収入及び支出の報告書(以下「収支報告書」という。)を,別記様式により,当該年度の翌年度の5月31日までに議長に提出しなければならない。
2 会派の代表者は,会派が解散(任期満了を含む。以下この項において同じ。)した場合には,,前項の規定にかかわらず,当該会派が解散した日の属する月(その日が月の初日の場合は,前月)までの収支報告書を,別記様式により,解散した日から2月以内に議長に提出しなければならない。
第10条
 議員に,政務調査費の適正な運用を記すため,前条の規定により収支報告書が提出されたときは,必要に応じ調査を行うものとする。
第11条
 政務調査費の交付を受けた会派は,その年度において交付を受けた政務調査費の総額から,当該会派がその年度において行った政務調査費による支出(第8条に規定する使途基準に従って行った支出をいう。)の総額を控除して残余がある場合は,当該残余の額に相当する額の政務調査費を返還しなければならない。
第13条
 この条例に定めるもののほか,政務調査費の交付等に関し必要な事項は,議長の定めるところによる。
ウ 本件規程(乙2)
第5条
 条例第8条の使途基準は,別表第1のとおりとする。(本判決末尾に上記別表を添付した。)
第7条
 会派の政務調査費の経理責任者は,政務調査費の支出について,会計帳簿を整理保管し,これらの書類を当該政務調査費の収支報告書の提出すべき機関の末日の翌日から起算して5年を経過する日まで保存しなければならない。
(3) 本件各会派に対する政務調査費の交付
 ア 被告は,リベラル群馬に対し,平成15年度4月分(期間:平成15年4月1日から同月29日まで。以下同じ。)の政務調査費として,150万円を交付した(甲1の1)。
 イ 被告は,補助参加人に対し,平成15年度4月分ないし平成17年度の各政務調査費として,以下の金額を交付した(甲2の1ないし4)。
 (ア) 平成15年度4月分 1380万円
 (イ) 平成15年度(期間:同年5月1日から平成16年3月31日まで,以下同じ。) 1億4730万円
 (ウ) 平成16年度(期間:同年4月1日から平成17年3月31日まで。以下同じ。) 1億5450万円
 (エ) 平成17年度(期間:同年4月1日から平成18年3月31日まで。以下,特に記載のない限り同じ。) 1億5420万円
 ウ 被告は,改革クラブに対し,平成15年度ないし平成17年度の政務調査費として,以下の全額を交付した(甲4の1ないし3)
 (ア) 平成15年度 330万円
 (イ) 平成16年度 360万円
 (ウ) 平成17年度(期間:同年4月1日から同年5月31日まで) 60万円
(4) 政務調査費支出報告書(以下「支出報告書」という。)の提出
 本件各会派の代表者は,議長あてに,上記(3)の政務調査費に係る収支報告書を提出したところ,同収支報告書には,以下のような記載がなされていた(甲1の1,甲2の1ないし4,甲4の1ないし3)。
 ア リベラル群馬
 平成15年4月の収支報告書中,調査研究費の支出項目の備考欄に,「マニフェスト公表のとりくみについて」と記載されていた。
 イ 補助参加人について
 各収支報告書の残余額欄に,平成15年度4月分及び平成17年度は0円,平成15年度は60万円,平成16年度は90万円と,それぞれ記載されていた。
 ウ 改革クラブについて
 平成15年度及び平成16年戻の収支報告書の残余額欄に,0円と記載されていた。
(5) 措置請求
 原告らは,平成19年3月19日,県監査委員に対し,本件各会派を含む,議会の各会派が,本件条例8条,本件規程5条に定める市と基準を逸脱して政務調査費を使用したことを理由に,被告が,議会の各会派から,平成15年度(4月分を含む。),平成16年度,平成17年度の政務調査費全額の返還を請求するように勧告を求める措置請求(以下「本件措置請求」という。)を行ったところ(甲9)、県監査委員は,同年5月25日付けで,原告らの主張する使途基準逸脱の事実は認められず,被告が返還請求を怠っているとはいえないため,本件請求には理由がないとして,本件措置請求を棄却した(甲10)。
(6) 本訴提起等(顕著な事実)
 ア 原告らは,平成19年6月21日,本件訴えを提起した。
 イ 原告らは,リベラル群馬及び補助参加人に対しては平成19年9月15日に,改革クラブに対しては同月18日に,それぞれ訴訟告知した。
 ウ 補助参加人は,平成20年8月8日,補助参加の申出をした。
2 争点及びこれに関する当事者の主張
 本件各会派が行った政務調査費の支出が違法か。
(原告らの主張)
(1) 政務調査費に関する不当利得の返還については,返還を求める側において政務調査費の使途について相当な根拠をもって疑義が存在することを主張,立証した場合には,本件各会派ないし被告において,合理的な疑いを容れない程度にその疑義を解消すに足る主張,立証を行う必要があり,このような主張,立証がなされない場合には,政務調査費の適正な支出がなされなかったものと推認されると考えるべきである。
(2) 本件においては,以下のとおり,本件各会派の政務調査費の支出が使途基準に適合していなかったことを強く推認させる事実が存在する。
 ア リベラル群馬
 平成15年4月の収支報告書中,調査研究費の支出項目の備考欄に,「マニフェスト公表のとりくみについて」と記載されている。しかし,選挙に先だって候補者や政党が有権者に対し発表する選挙公約であるマニフェストの公表に要する費用は各候補者や各政党が自費で支出すべきものであり,また,群馬県の事務及び地方行政に関する調査研究とは全く無関係である。
 イ 補助参加人
 (ア) 本件条例3条1項によれば,「各会派の政務調査費の月額は,30万円に当該会派の所属議員の数を乗じて得た額とする。」と定められているところ,補助参加人においては,全ての収文報告書において,残余額を0円あるいは,一人当たりの月額で割り切れる数額(60万円,90万円)としている。しかし残金額が毎年度O円ないし一人当たりの月額で割り切れる数額になることはおよそ考えられない。このことから,補助参加個人が,残金額を一人当たりの月額で割り切れる数額に調整して収支報告書に記載しているか,あるいは,政務調査費を各所属議員に割り当てていたことが強く推認される。
 (イ) また,平成15年4月には議会議員選挙(同月4日告示,同月13日投票日。以下「本件選挙」という。)があったのであるから,平成15年度4月分の政務調査費の支出は限りなくゼロに近いか,少なくとも選挙のない期間中の1年当たりに支出された政務調査費の24分の1に近い数順になるはずである。にもかかわらず,収支報告書によれば,平成15年度4月分の支出額は1380万円と,平成15年度の1月当たりの政務調査費の平均支出額を若干上回っている。
 ウ 改革クラブ
 収支報告所によれば,平成15年度,平成16年度の残余額が「0円」となっている。年度途中で辞職した平成18年度の残金額は254円となっていること,各項目の支出額が端数であること,補助参加人を除く他の会派で毎年端数が生じていることなどに照らせば,残余額が「0円」になることはおよそ考えられない。
(被告の主張)
(1) 原告らが主張する本件各会派の政務調査費の支出に係る疑義は,以下のとおり,いずれも根拠に乏しく,政務調査費の使途について疑義が存する相当な根拠があるとはいえない。
(2)ア リベラル群馬
  「マニフェスト公表のとりくみについて」とは,一般的に関心が高く,地方行政にも深く関連する事項であるところの「マニフェスト制度」に係る調査研究であると窺われる。「マニフェスト公表のとりくみについて」と収支報告書の備考欄に記載され,直近に選挙が行われたことのみをもって,当該会派の候補者や政党に係る選挙運動に関連した支出がなされた疑いがあるとの原告らの主張は,具体的根拠に乏しい。
 イ 補助参加人
 (ア) 政務調査費は,議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として,会派に対して交付されているものであり,会派の政務調査活動が,全て政務調査費によって賄われているとは限らない。また,政務調査活動は,会派の自由意志により実施されるものであり,政務調査費の支出に当たって,どの項目にどれくらいの額の政務調査費を充当するかは会派の裁量に委ねられている。
 したがって,残余額が0円であったり,一人当たりの月額で割り切れる額となっていたとしても,それだけで,収支報告書の記載が不適正であるとはいえない。
 (イ) 本件選挙は,平成15年4月4日に告示され,同月13日が投票日であり,選挙が行われていたわけではない。
 また,補助参加人には,本件選挙で無投票で当選した議員が11名いる。これに本件選挙に立候補しなかった議員4名を加えると,3割を超える議員が,自らの選挙活動を行っておらず,選挙期間中においても政務調査活動に従事することができたのである。また,選挙活動をしている議員であっても,県民から県政に対する意見や要望等を受け,または,政策上の質問が寄せられる等,今後の議会活動の参考となる情報を収集する機会がなかったとはいえない。
 したがって,当月に選挙があった事実をもって,会派として政務調査活動を行い得ない状況にあったことはいえない。
 ウ 改革クラブ
 平成15年度,平成16年度の残余額が「0円」となっていることから,収支報告書の記載が不適正であるとはいえないことは,上記イ(イ)で述べたとおりである。
第3 当裁判所の判断
1(1) 本件は,原告らが,法242条の2第1項4号に基づき,被告に対し,本件各会派に対する不当利得返還請求をすることを求めている事案である。
 (2) 前記前提事実(2)記載のとおり,政務調査費は,法100条13項に基づいて,普通地方公共団体が,条例の定めるところにより,その議会における会派又は議員に対し,議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として,交付することが認められた経費であること,同項に基づいて交付対象や交付方法等を定めた本件条例11条は,「政務調査費の交付を受けた会派は,その年度において交付を受けた政務調査費の総額から,当該会派がその年度において行った政務調査費による支出(第8条に規定する使途基準に従って行った支出をいう。)の総額を控除して残余がある場合は,当該残余の額に相当する額の政務調査費を返還しなければならない。」と規定していることなどからすると,政務調査費が,県政に関する調査研究に資するため必要な経費とは認められないような目的外の使用に供された場合には,市の公金の損失において,会派が利得を得ていることになるから,被告は、不当利得返還請求権に基づき,会派に対して当該支出相当額の返還を命ずることができるというべきである。そして,このような場合には,不当利得返還請求をする者にその主張立証責任があることは当然であるが,その使途についての証票類等の証拠は,本件各会派が保存すべきものとされていること(本件規程7条)に照らすと,原告らにおいて,会派による政務調査費の供用が,その本来の使途及び目的に違反していることを推認させる一般的,外形的な事実を立証した場合には,被告において,その推認を妨げるべく,本来の使途及び目的に沿って使用したことを明らかにする必要があるというべきである。
 (3) そこで,以下,この見地から検討を加えることとする。
2 本件各会派の支出について
 (1) リベラル群馬の支出について
 原告らは,リベラル群馬の平成15年度4月分の収支報告書中,調査研究費の支出項目の備考欄に,「マニフェスト公表のとりくみについて」と記載されていることを理由として,政務調査費が群烏県の事務及び地方行政に関する調査研究とは無関係な,候補者や政党が有権者に対し発表する選挙公約であるマニフェストの公表に要する費用に文出された旨主張する。
 しかしながら,「マニフェスト公表のとりくみについて」との記載は,被告が主張し,リベラル群馬が回答(甲10)するように,マニフェスト制度一般についての調査研究の趣旨とも解し得る。したがって,上記記載があるからといって,直ちにリベラル群馬が政務調査費を選挙公約であるマニフェストの公表に要する費用に支出したと推認することはできず,原告らが前記一般的、外形的な事実を立証したとはいえない。
 したがって,原告らの上記主張は理由がない。
 (2) 補助参加人の支出について
 ア(ア) 原告らは,補肋参加人の収支報告書において,政務調査費の残余額が0円あるいは,一人当たりの月額で割り切れる数額となっていることを根拠として,補助参加人に使途基準に適合しない政務調査費の支出があったことが推認される旨主張する。
  (イ) しかし,前記前提事実(2)記載のとおり,政務調査費に本件条例及び本件規程に基づき,議会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として台湾に交付されるものであるから,会派が政務調査費の交付額以上に調査研究費を支出すれば,政務調査費の残余額は0円となることもあり得る。
 したがって,補助参加人の収支報告書において,政務調査費の残余額が0円と記載されているからといって,直ちに補助参加人において,使途基準に適合しない政務調査費の支出があったと推認することはできず,原告らが前記一般的,外形的な事実を立証したとはいえない。
  (ウ) また,甲10によれば,本件措置請求に伴い実施された県監査委員の調査に対し,補助参加人は,政務調査費の残余額が一人当たりの月額で割り切れる税額となっていることの理由として,「会派から業務依頼を受けた政務調査活動を行ないえなかった所属議員から残余額が返還されたため。」と回答したことが認められる。会派には,具体的な政務胴査費の支出(どの項目にいくら充てるか等)について,裁量があると解されるところ,会派が所属議員に対し,政務調査活動を委託し,その活動のためにある数額の政務調査費を充てること,委託を受けた所属議員が政務調査活動を行うことができず,政務調査費が返還された場合に,会派が再度,これを政務調査活動に利用しないことは,いずれも上記裁量の範囲内に属することであるから,補助参加人の上記回答は,残余額が一人当たりの月額で割り切れる数額となっていることの理由としては不合理ではない。
 したがって,補助参加人の収支報告書において,政務調査費の残余額が一人当たりの月額で割り切れる数額となっている事実からは,直ちに使途基準に適合しない政務調査費の支出があったことを推認することはできず,原告らが前記一般的、外形的な事実を立証したとはいえない。
  (エ) したがって,原告らの上記主張はいずれも理由がない。
 イ(ア) また,原告らは,平成15年4月には議会議員進挙があったのだから,平成15年度4月分の政務調査費の支出に限りなくゼロに近いか,少なくとも選挙のない期間中の1年当たりに交出された政務調査費の24分の1に近い数額になるはずであるとし,本件政務調査費には,使途基準に反する違法な支出が含まれている旨主張する。
  (イ) 本件選挙が,平成15年4月4日に告示され,同月13日が投票日であり,選挙期間は9日間であったことについては当事者間に争いがなく,証拠(乙3,4)によれば,補助参加人においては,本件選挙前の議員数が46名であったこと,本件選挙で無投票で当当選した議員が11名いること,本件選挙に立候補しなかった議員が4名いることが認められる。
 そしで,本件選挙に立候補したが無投票で当選した議員,及び本件選挙に立候桶しなかった議貝については,本件選挙期間中も選挙運動を行う必要がなかったために通常どおり調査研究を行うことが可能であった。さらに,立候補して選挙を行った議員についても,選挙期間中も調査研究を行うことか法律上許されないわけではなく,同月中の選挙期間を除く20日間は,通常どおり調査研究を行うことが可能であった。
 したがって,選挙があった月には選挙がなかった月と比べて政務調査費の支出が少なかったとは必ずしもいえないのであり,原告らの主張する上記事実から,直ちに使途基準に適合しない政務調査費の支出があったことを推認することは,原告らが上記一般的,外形的な事実を立証したとはいえない。
 (3) 改革クラブの支出について
 原告らは,改革クラブの平成15年度,平成16年度の収支報告書に,政務調査費の残余額が0円と記敬されていることを根拠としで,改革クラブに使途基準に適合しない政務調査費の支出があったことが推認される旨主張する。
 しかし,上記記載があることから,直ちに使途基準に適合しない政務調査費の支出があったと推認することができないことは,上記(2)アで述べたとおりである。
 したがって,原価らの上記主張は理由がない。
3 小括
 以上によれば,原告らの主張するいずれの事実によっても,本件各会派による政務調査費の使用が,その本末の使途及び目的に違反していることを推認することはできず,原告らが,本件各会派による政務調査費の使用について,その本来の使途及び目的に違反していることを推認させる一般的に外形的な事実を立証したとはいえない。
第4 結論
 以上認定判断したところによれば,原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
 前橋地方裁判所民事第2部
    裁判決裁判官 松丸伸一郎
    裁判官    水橋  巌
    裁判官    佐田 崇雄

別表第1(第5条関係)
項目 / 内容
調査研究費/会派が行う群馬県の事務及び地方行財政に関する調査研究並びに調査委託に要する経費(調査委託費、交通費、宿泊費等)
研修費/会派が行う研修会及び講演会の実施に必要な経費並び他団体が開催する研修会及び講演会への所属議員及び会派の雇用する職員の参加に要する経費(会場費、機材借上費、講師謝金、会費、交通費、宿泊費等)
会議費/会派における各種会議に要する経費(会場費、機材借上費、資料印刷費等)
資料作成費/会派が議会審議に必要な資料を作成するために要する経費(印刷製本代、原稿料等)
資料作成費/会派が行う調査研究のために必要な図書、資料等の購入に要する経費(書籍購入代、新聞雑誌購読料等)
広報費/会派が行う議会活動及び群馬県政に関する政策等の広報活動に要する経費(広報紙・報報告書等印刷費、送料、交通費等)
事務費/会派が行う調査研究に係る事務執行に必要な経費(事務用品購入費、備品購入費、通信費等)
人件費/会派が行う調査研究を補助する職員を雇用する経費(給料、手当、社会保険料、賃金等)
注 ( )内は例示である。

これは正本である。

平成22年1月29日
 前橋地方裁判所民事第2部
    裁判所書記官 渡 部 明 美
**********

■当会は、これまで延べ50件以上の訴訟に関与してきましたが、これほどひどい判決文は初めてです。どこの裁判所でもつまはじきの松丸伸一郎ですが、ここ群馬県だけは別天地のようです。これでは今年の4月になっても異動は望めそうにありません。 

【ひらく会法務部】

コメント (2)
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