■安中市長選挙戦も最終段階を迎えましたが、候補者の載った選挙カーの連呼の声は、めったに聞こえてきません。代わりに、政策宣伝カーと称する、候補者カーと区別がよくわからない車が連呼する声が時々聞こえてきます。
なぜ2台目の車も選挙で候補者の名前を連呼できるのか、選挙戦開始直後に現職候補が繰り出した新たな選挙戦術の合法性について、当会では、既報のとおり、安中市選挙管理委員会に問い合わせるなど調査を続けてきました。
■また、所属政党についても疑問があります。新聞報道等では、現職候補も「無所属」と記されていますが、実際には、現職候補の場合、自由民主党安中第一支部の代表をしており、なぜ「無所属」なのに、政党その他の政治活動を行う団体の本部及び支部が選挙期間中に、政策の普及宣伝及び演説の告知をするために使用できる自動車を、「政策宣伝カー」として使用できるのか、という点についても調査をしてきました。
市選管によれば、政策宣伝カーの使用は、公職選挙法第201条の9に基づくもので、所属政党を無所属と名乗ったり、経歴を通信制中退などと記載しても、「選管に提出する経歴書自体は、法定文書でもなんでもないため、ウソの記載をもって、基本的にどうのこうのと選管として調査したりすることはしない」という回答です。
■選挙期間中「完全無所属」をアピールして当選後問題となった千葉県知事候補の森田健作の例があります。この問題について、公職選挙法を所管する総務省の見解は、「違反ではない」というものでした。森田健作としては、知事選立候補届出用紙の政党記載欄に自民党公認証書なしに「自民党」と書けば、受け付けてくれないから、「無所属」ないし空欄で提出したと推測されています。
逆のケースでは、2005年の衆院選で刺客を送られ、自民党から公認証書をもらえなかった野田聖子は自民党から除名処分も受けず、自ら離党届も出しておらず、自民党員のままなのに、公認証書がないので仕方なく届出用紙の政党欄には空欄ないし「無所属」で届けて、選挙運動をしたことがあります。
当時、野田聖子は、ネット上で「無所属」と報じられていましたが、選挙戦では「自民党の野田聖子です」と公言しましたが、自民党員であっても「自民党公認」とは言いませんでした。
■総務省の判断は、「無所属」とは、自民党員かどうか、自民党支部長かどうかにかかわらず、あくまで当該選挙で公認されているかどうかだけが問題ということです。公認証書なしに誰でも好き勝手に所属政党を名乗られると、収拾がつかないということが根拠かもしれません。
こうした国政選挙における総務省の判断に照らし合わせると、今回の安中市長選の場合、現職候補が、自民党安中第一支部代表であっても、安中市長立候補届出用紙の「政党欄」に「無所属」もしくは空欄で届け出れば、いくら現職候補が選挙戦で「無所属」を標榜しても、公選法違反の「虚偽事項の公表罪」にはならないということになります。つまり、公職選挙法には、無所属という概念がないことになります。
したがって、自ら政党公認を求めなければ、コテコテの自民党員であっても、「無所属」というわけです。バリバリの自民党中曽根派であったとしても、選挙で「無所属」だろうが、「市民派」だろうが、「庶民代表」だろうが、どういうキャッチフレーズをつけようが、そして、それを有権者が勝手にどうイメージしようが、公職選挙法ではまったく問題にはならないのです。
■一方、公職選挙法第201条の9で定める地方選挙における政党その他の政治団体の政治活動の規制との関係でみてみましょう。
これに関して、群馬県のホームページ(*)には、次の記載があります。
http://www.pref.gunma.jp/cts/PortalServlet;jsessionid=78E2F0028A5B37F73EE1BB1B64FF5C15?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=73427
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Q 県や市町村選挙の選挙期間中、政党その他の政治団体の政治活動はどのような規制がありますか。
A 公職選挙法は、選挙時における政党その他の政治団体(以下、政治団体という。)の政治活動について、選挙が行われる区域において、選挙期日の告示日から当日まで、特定の方法による政治活動を制限しています。これは選挙運動と関わりの深い特定の政治活動を規制することにより、選挙の自由公正を確保するためといえます。
知事、県議会議員、市長の選挙においては、政治団体が行う政治活動のうち、(1)政談演説会の開催、(2)街頭政談演説の開催、(3)ポスターの掲示、(4)立札及び看板の類の掲示、(5)ビラの頒布、(6)宣伝告知のための自動車及び拡声機の使用、(7)連呼行為、(8)いかなる名義をもってするを問わず、掲示又は頒布する文書図画(新聞紙及び雑誌を除く。)に、当該選挙区の特定の候補者の氏名又はその氏名が類推されるような事項を記載すること、(9)国又は地方公共団体又が所有し又は管理する建物(専ら職員の居住の用に供されているもの及び公営住宅を除く。)において文書図画(新聞紙及び雑誌を除く。)の頒布(郵便等又は新聞折込みの方法による頒布を除く。)をすることが禁止されています。但し、一定の制限の下に政治活動ができる「確認団体制度」があります。
市町村議会議員及び町村長の選挙では、選挙期日の告示日から期日までの政治活動は、選挙運動にわたらない限り自由ですが、前述の(7)から(9)の政治活動は禁止されます。
Q 「確認団体制度」について教えてください。
A 「確認団体制度」とは、知事、県議会議員、市長の選挙において、一定の要件を具備した政治団体が、当該選挙を管理する選挙管理委員会から確認書の交付を受けることにより、制限されている政治活動を行うことができる制度です。確認団体となる要件は、政治資金規正法第6条の届出がなされている政治団体で、知事又は市長の選挙の場合、所属候補者か支援候補者(無所属候補者で推薦し又は支持する候補者)がいること、県議会議員選挙の場合は、所属候補者が3人以上いる政治団体である必要があります。また、所属候補者又は支援候補者1人に対し確認団体は1団体に限られます。
確認団体は、選挙期日の告示日から選挙の期日の前日までの間は、前述の(1)から(6)の政治活動について、一定の範囲(公選法第201条の8及び201条の9)で行うことが許されるほか、確認団体が発行する新聞紙及び雑誌についても、一定の要件(法第201条の15)を満たせば選挙期日の告示日から当日までの間に限り、当該選挙に関する報道、評論ができます。しかし、確認団体といえども、(7)から(9)の政治活動は禁止されます。但し、(7)連呼行為は政談演説会及び街頭政談演説、政治活動用自動車の上で行う場合、(9)公共施設における文書図画の頒布は、政談演説会の会場で行う場合は除かれます。(法201条の13)また、選挙期日の告示前に掲示した政治団体の政治活動用ポスターに、当該選挙の候補者の氏名又は氏名類推事項が記載されている場合は、当該候補者となった日のうちに、その選挙区において、当該ポスターを撤去しなければならないことは、確認団体であっても例外ではありません。(法201条の14)
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となると、現在、安中市内で走り回っている政策宣伝カーは、現職候補ではなく、確認団体が使用している自動車ということになります。
■上記のように、一定の要件を具備した確認団体であれば、当該選挙を管理する選挙管理委員会から確認書の交付を受けると、制限されている政治活動の一環として、政策宣伝カーを使えるというのです。
安中市選管によると、現職候補の確認団体は「創政会」という名称のようです。群馬県のホームページによると、確認団体は、政治資金規正法第6条の届出がなされている政治団体で、市長選の場合、所属候補者か支援候補者(無所属候補者で推薦し又は支持する候補者)がいる必要があります。
■この観点からすると、現職候補が代表となっている自民党安中第一支部であれば、確認団体としての資格があるのかもしれませんが、現職が代表の政治団体が、自分自身を公認はしないが、無所属として推薦ないし支持するという形であれば、政策宣伝カーの使用は可能ということになります。
事実、安中市選管では、現職候補の名前の付いていない自民党安中第一支部であれば、確認団体として問題ないという見解です。
つまり、自民党政党支部代表候補の場合でも、やはり無所属を標榜しないと、確認団体が使用する政策宣伝カーの恩恵を受けられないわけです。今回、現職候補が「創政会」という別の団体にも所属していたことが明らかになったので、来週、この団体がどのような政党団体なのかを調査する予定です。それにしても、半生を選挙無敗で貫いてきた現職候補ならではの選挙テクニックで、他の候補としては、簡単には思いつかなかったことでしょう。
【ひらく会情報部・選挙不正監視班】
なぜ2台目の車も選挙で候補者の名前を連呼できるのか、選挙戦開始直後に現職候補が繰り出した新たな選挙戦術の合法性について、当会では、既報のとおり、安中市選挙管理委員会に問い合わせるなど調査を続けてきました。
■また、所属政党についても疑問があります。新聞報道等では、現職候補も「無所属」と記されていますが、実際には、現職候補の場合、自由民主党安中第一支部の代表をしており、なぜ「無所属」なのに、政党その他の政治活動を行う団体の本部及び支部が選挙期間中に、政策の普及宣伝及び演説の告知をするために使用できる自動車を、「政策宣伝カー」として使用できるのか、という点についても調査をしてきました。
市選管によれば、政策宣伝カーの使用は、公職選挙法第201条の9に基づくもので、所属政党を無所属と名乗ったり、経歴を通信制中退などと記載しても、「選管に提出する経歴書自体は、法定文書でもなんでもないため、ウソの記載をもって、基本的にどうのこうのと選管として調査したりすることはしない」という回答です。
■選挙期間中「完全無所属」をアピールして当選後問題となった千葉県知事候補の森田健作の例があります。この問題について、公職選挙法を所管する総務省の見解は、「違反ではない」というものでした。森田健作としては、知事選立候補届出用紙の政党記載欄に自民党公認証書なしに「自民党」と書けば、受け付けてくれないから、「無所属」ないし空欄で提出したと推測されています。
逆のケースでは、2005年の衆院選で刺客を送られ、自民党から公認証書をもらえなかった野田聖子は自民党から除名処分も受けず、自ら離党届も出しておらず、自民党員のままなのに、公認証書がないので仕方なく届出用紙の政党欄には空欄ないし「無所属」で届けて、選挙運動をしたことがあります。
当時、野田聖子は、ネット上で「無所属」と報じられていましたが、選挙戦では「自民党の野田聖子です」と公言しましたが、自民党員であっても「自民党公認」とは言いませんでした。
■総務省の判断は、「無所属」とは、自民党員かどうか、自民党支部長かどうかにかかわらず、あくまで当該選挙で公認されているかどうかだけが問題ということです。公認証書なしに誰でも好き勝手に所属政党を名乗られると、収拾がつかないということが根拠かもしれません。
こうした国政選挙における総務省の判断に照らし合わせると、今回の安中市長選の場合、現職候補が、自民党安中第一支部代表であっても、安中市長立候補届出用紙の「政党欄」に「無所属」もしくは空欄で届け出れば、いくら現職候補が選挙戦で「無所属」を標榜しても、公選法違反の「虚偽事項の公表罪」にはならないということになります。つまり、公職選挙法には、無所属という概念がないことになります。
したがって、自ら政党公認を求めなければ、コテコテの自民党員であっても、「無所属」というわけです。バリバリの自民党中曽根派であったとしても、選挙で「無所属」だろうが、「市民派」だろうが、「庶民代表」だろうが、どういうキャッチフレーズをつけようが、そして、それを有権者が勝手にどうイメージしようが、公職選挙法ではまったく問題にはならないのです。
■一方、公職選挙法第201条の9で定める地方選挙における政党その他の政治団体の政治活動の規制との関係でみてみましょう。
これに関して、群馬県のホームページ(*)には、次の記載があります。
http://www.pref.gunma.jp/cts/PortalServlet;jsessionid=78E2F0028A5B37F73EE1BB1B64FF5C15?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=73427
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Q 県や市町村選挙の選挙期間中、政党その他の政治団体の政治活動はどのような規制がありますか。
A 公職選挙法は、選挙時における政党その他の政治団体(以下、政治団体という。)の政治活動について、選挙が行われる区域において、選挙期日の告示日から当日まで、特定の方法による政治活動を制限しています。これは選挙運動と関わりの深い特定の政治活動を規制することにより、選挙の自由公正を確保するためといえます。
知事、県議会議員、市長の選挙においては、政治団体が行う政治活動のうち、(1)政談演説会の開催、(2)街頭政談演説の開催、(3)ポスターの掲示、(4)立札及び看板の類の掲示、(5)ビラの頒布、(6)宣伝告知のための自動車及び拡声機の使用、(7)連呼行為、(8)いかなる名義をもってするを問わず、掲示又は頒布する文書図画(新聞紙及び雑誌を除く。)に、当該選挙区の特定の候補者の氏名又はその氏名が類推されるような事項を記載すること、(9)国又は地方公共団体又が所有し又は管理する建物(専ら職員の居住の用に供されているもの及び公営住宅を除く。)において文書図画(新聞紙及び雑誌を除く。)の頒布(郵便等又は新聞折込みの方法による頒布を除く。)をすることが禁止されています。但し、一定の制限の下に政治活動ができる「確認団体制度」があります。
市町村議会議員及び町村長の選挙では、選挙期日の告示日から期日までの政治活動は、選挙運動にわたらない限り自由ですが、前述の(7)から(9)の政治活動は禁止されます。
Q 「確認団体制度」について教えてください。
A 「確認団体制度」とは、知事、県議会議員、市長の選挙において、一定の要件を具備した政治団体が、当該選挙を管理する選挙管理委員会から確認書の交付を受けることにより、制限されている政治活動を行うことができる制度です。確認団体となる要件は、政治資金規正法第6条の届出がなされている政治団体で、知事又は市長の選挙の場合、所属候補者か支援候補者(無所属候補者で推薦し又は支持する候補者)がいること、県議会議員選挙の場合は、所属候補者が3人以上いる政治団体である必要があります。また、所属候補者又は支援候補者1人に対し確認団体は1団体に限られます。
確認団体は、選挙期日の告示日から選挙の期日の前日までの間は、前述の(1)から(6)の政治活動について、一定の範囲(公選法第201条の8及び201条の9)で行うことが許されるほか、確認団体が発行する新聞紙及び雑誌についても、一定の要件(法第201条の15)を満たせば選挙期日の告示日から当日までの間に限り、当該選挙に関する報道、評論ができます。しかし、確認団体といえども、(7)から(9)の政治活動は禁止されます。但し、(7)連呼行為は政談演説会及び街頭政談演説、政治活動用自動車の上で行う場合、(9)公共施設における文書図画の頒布は、政談演説会の会場で行う場合は除かれます。(法201条の13)また、選挙期日の告示前に掲示した政治団体の政治活動用ポスターに、当該選挙の候補者の氏名又は氏名類推事項が記載されている場合は、当該候補者となった日のうちに、その選挙区において、当該ポスターを撤去しなければならないことは、確認団体であっても例外ではありません。(法201条の14)
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となると、現在、安中市内で走り回っている政策宣伝カーは、現職候補ではなく、確認団体が使用している自動車ということになります。
■上記のように、一定の要件を具備した確認団体であれば、当該選挙を管理する選挙管理委員会から確認書の交付を受けると、制限されている政治活動の一環として、政策宣伝カーを使えるというのです。
安中市選管によると、現職候補の確認団体は「創政会」という名称のようです。群馬県のホームページによると、確認団体は、政治資金規正法第6条の届出がなされている政治団体で、市長選の場合、所属候補者か支援候補者(無所属候補者で推薦し又は支持する候補者)がいる必要があります。
■この観点からすると、現職候補が代表となっている自民党安中第一支部であれば、確認団体としての資格があるのかもしれませんが、現職が代表の政治団体が、自分自身を公認はしないが、無所属として推薦ないし支持するという形であれば、政策宣伝カーの使用は可能ということになります。
事実、安中市選管では、現職候補の名前の付いていない自民党安中第一支部であれば、確認団体として問題ないという見解です。
つまり、自民党政党支部代表候補の場合でも、やはり無所属を標榜しないと、確認団体が使用する政策宣伝カーの恩恵を受けられないわけです。今回、現職候補が「創政会」という別の団体にも所属していたことが明らかになったので、来週、この団体がどのような政党団体なのかを調査する予定です。それにしても、半生を選挙無敗で貫いてきた現職候補ならではの選挙テクニックで、他の候補としては、簡単には思いつかなかったことでしょう。
【ひらく会情報部・選挙不正監視班】