■今回のウラジオストク訪問では、訪問先の代表者から、冒頭「日本からの飛行機の旅はどうでしたか。きのう(4月11日)はウラジオストクの近辺に乱気流があり、モスクワからの飛行機は着陸時、ずいぶん揺れたらしい。今、世界は飛行機の着陸に注目しています」と挨拶がありました。
この背景には、今回の訪問直前、4月10日午前11時(日本時間10日午後4時)頃、ポーランド政府専用機が墜落し、乗っていたカチンスキ大統領夫妻をはじめ乗員乗客97人全員が死亡したと報じられたニュースがあるからです。
↑ウラジオストク空港の駐機場で翼を休める北朝鮮のツボレフTu154型機。後方3機はいずれも新型のTu204型機。↑
■代表者によると、2年前にも同じようなことがあり、ポーランドの大統領機がトビリシに着陸しようとして、乱気流で着陸が拒否され、アゼルバイジャンに着陸したことがあったそうです。
同氏いわく「今回は、カチンでポーランドの代表団を待っていたが、2年前のことも考慮に入れて真相究明をしようとしています。大変悲惨な事故です。だから安全が第一なので皆さんも十分気をつけてほしい。レーベジという知事がいたがその知事も(2002年4月28日)飛行機(ヘリコプター)の事故で亡くなった。エリツイン時代にも墜落して政府高官がなくなったことがあります」とのこと。このようにロシアやCIS(旧ソ連邦)諸国では航空機事故が多いような気がします。
■ポーランドの大統領専用機は、1990年製のツボレフTu154型機でした。現在、成田とウラジオストクを結ぶウラジオストク航空では、ツボレフTu204型機もしくはエアバスA320型機を使用していますが、今まで3往復のうち、雪で2日遅れたときに一度Tu154型機に搭乗したほかは、いずれも新型のTu204型機が就航していました。
このTu204旅客機の開発は、ソ連崩壊直前の1989年に始まり、初飛行はソ連崩壊後の1995年でしたが、主翼端にウイングレットが付いていて、外見は欧米のエアバスやボーイングと同じような格好をしています。1機あたり35億円程度という格安のため、Tu154型機の後継機として、ロシアやCIS諸国のほか、シリア、キューバ、北朝鮮、そして最近は西側からの注文も出始めています。
↑成田空港の駐機場の片隅で旅客を降ろすウラジオストク航空のTu204-300型機。↑
■ウラジオストク空港では、現在、滑走路の拡張工事の真っ最中です。これは、2012年夏にロシアが国家の威信をかけて開催を予定しているAPEC(アジア太平洋経済協力会議)に向けたインフラ整備の一環です。
↑ドイツのゼネコンによる空港拡張工事現場。↑
2008年1月、当時のプーチン大統領はAPEC2012の中心業務地区(Central Business District=CBD)の諸施設の配置プランと建設・都市計画コンセプトを承認しました。会場はルースキー島のアヤスク湾に建設されますが、周辺インフラ建設など次の設備項目が挙げられています。
(1)上下水道、ウラジオストックとルースキー島に跨る(処理容量25万トン/日、2系統配管)
(2)ウラジオストック・クネフチ国際空港の拡張・近代化(3,000m滑走路+国際通関施設)
(3)金角湾自動車横断道路(2.1km)
(4)ボスポラス湾自動車横断道路(3.1km)
(5)空港・市内・ルースキー島間の高速道路(片道4車線)
(6)ルースキー島内のインフラ整備(道路、通信、電気、ガスなど)
(7)会議開催のメインホール(4千人収容)、プレスセンター、ホテル施設(1万500人)、医療センターなどの主会場
(8)船舶用ターミナル
(9)ウラジオストック市内整備事業
■このため、国際空港をはじめ、空港からウラジオストク市内に向かう道路の片側4車線化、ウラジオストク市内の金角湾を跨ぐ斜張橋、ウラジオストク市から東ボスポラス海峡を隔ててルースキー島に渡る斜張橋の工事が現在進行中です。このため、ウラジオストク市内のその他の建築工事では、作業員が不足していて作業が滞っているという情報もあります。
↑空港から市内に向かう道路の拡張工事現場。↑
↑金角湾を横断する橋の橋脚と、陸上部の橋桁を架設中。来るたびに光景が変わっている。↑
ロシアでは、こうした事業に着手するまでに、いろいろな関係省庁の許認可取得に膨大な時間がかかり、たいてい工期が遅れる原因となり、工事期限が近付くと、昼夜兼行の突貫工事になるのが一般的ですが、APEC2012は、さすがにロシアの国家事業という位置付けから、プーチンが昨年12月に当地を訪れた際に「遅れは許されないが、手抜きも許さない。事業予算は1ルーブルたりとも、事業以外に使われてはならない」とハッパをかけています。
■この背景には、上記のような官僚主義の弊害のほかに、汚職の蔓延というロシアの実態があります。もっとも、日本も偉そうには言えない実情がありますが…。
現地で聞いた話ですが、先年、ウラジオストクの副市長が、突然解任され、刑務所に送られました。原因は、ロシア中に巣くっているマフィアのうち、ウラジオストクに利権を持つ組織から賄賂を受け取ったことです。ただし、ロシアでは賄賂を受け取っても、その背景にあるマフィアの要求に応えれば、問題ないということです。
この前副市長の場合は、賄賂をもらっても、マフィアの要求を無視したため、当局に密告されて御用となりました。刑務所に送られると、これまたマフィアの影響が塀の向こうにも及んでいるため、おそらく生きて出られないだろうという見方がされています。
■どこかの日本の自治体を彷彿とさせる話ですが、ロシアの場合は、実効はともかく、プーチン首相やメドベージェフ大統領が、汚職防止キャンペーンを熱心にやっています。他方、我らが日本国ではなぜか、不正経理が発覚しても首長は毅然たる態度を取ろうとせず、警察の立件に及び腰です。たまたま起訴されて有罪判決を受けても、公務員は、ほとんどの場合、もらった賄賂相当額を罰金として支払うだけで、懲役刑は執行猶予になり、塀の向こうに行くことはめったにありません。こうした実態を、日本国民はよく認識しておく必要があります。
↑空から見た空港ターミナル。↑
↑狭い国際線ロビーにも、2月に来た時はなかったコーヒーショップが営業中。来るたびに様子が変わっている。↑
【ひらく会情報部・海外取材班・この項おわり】
この背景には、今回の訪問直前、4月10日午前11時(日本時間10日午後4時)頃、ポーランド政府専用機が墜落し、乗っていたカチンスキ大統領夫妻をはじめ乗員乗客97人全員が死亡したと報じられたニュースがあるからです。
↑ウラジオストク空港の駐機場で翼を休める北朝鮮のツボレフTu154型機。後方3機はいずれも新型のTu204型機。↑
■代表者によると、2年前にも同じようなことがあり、ポーランドの大統領機がトビリシに着陸しようとして、乱気流で着陸が拒否され、アゼルバイジャンに着陸したことがあったそうです。
同氏いわく「今回は、カチンでポーランドの代表団を待っていたが、2年前のことも考慮に入れて真相究明をしようとしています。大変悲惨な事故です。だから安全が第一なので皆さんも十分気をつけてほしい。レーベジという知事がいたがその知事も(2002年4月28日)飛行機(ヘリコプター)の事故で亡くなった。エリツイン時代にも墜落して政府高官がなくなったことがあります」とのこと。このようにロシアやCIS(旧ソ連邦)諸国では航空機事故が多いような気がします。
■ポーランドの大統領専用機は、1990年製のツボレフTu154型機でした。現在、成田とウラジオストクを結ぶウラジオストク航空では、ツボレフTu204型機もしくはエアバスA320型機を使用していますが、今まで3往復のうち、雪で2日遅れたときに一度Tu154型機に搭乗したほかは、いずれも新型のTu204型機が就航していました。
このTu204旅客機の開発は、ソ連崩壊直前の1989年に始まり、初飛行はソ連崩壊後の1995年でしたが、主翼端にウイングレットが付いていて、外見は欧米のエアバスやボーイングと同じような格好をしています。1機あたり35億円程度という格安のため、Tu154型機の後継機として、ロシアやCIS諸国のほか、シリア、キューバ、北朝鮮、そして最近は西側からの注文も出始めています。
↑成田空港の駐機場の片隅で旅客を降ろすウラジオストク航空のTu204-300型機。↑
■ウラジオストク空港では、現在、滑走路の拡張工事の真っ最中です。これは、2012年夏にロシアが国家の威信をかけて開催を予定しているAPEC(アジア太平洋経済協力会議)に向けたインフラ整備の一環です。
↑ドイツのゼネコンによる空港拡張工事現場。↑
2008年1月、当時のプーチン大統領はAPEC2012の中心業務地区(Central Business District=CBD)の諸施設の配置プランと建設・都市計画コンセプトを承認しました。会場はルースキー島のアヤスク湾に建設されますが、周辺インフラ建設など次の設備項目が挙げられています。
(1)上下水道、ウラジオストックとルースキー島に跨る(処理容量25万トン/日、2系統配管)
(2)ウラジオストック・クネフチ国際空港の拡張・近代化(3,000m滑走路+国際通関施設)
(3)金角湾自動車横断道路(2.1km)
(4)ボスポラス湾自動車横断道路(3.1km)
(5)空港・市内・ルースキー島間の高速道路(片道4車線)
(6)ルースキー島内のインフラ整備(道路、通信、電気、ガスなど)
(7)会議開催のメインホール(4千人収容)、プレスセンター、ホテル施設(1万500人)、医療センターなどの主会場
(8)船舶用ターミナル
(9)ウラジオストック市内整備事業
■このため、国際空港をはじめ、空港からウラジオストク市内に向かう道路の片側4車線化、ウラジオストク市内の金角湾を跨ぐ斜張橋、ウラジオストク市から東ボスポラス海峡を隔ててルースキー島に渡る斜張橋の工事が現在進行中です。このため、ウラジオストク市内のその他の建築工事では、作業員が不足していて作業が滞っているという情報もあります。
↑空港から市内に向かう道路の拡張工事現場。↑
↑金角湾を横断する橋の橋脚と、陸上部の橋桁を架設中。来るたびに光景が変わっている。↑
ロシアでは、こうした事業に着手するまでに、いろいろな関係省庁の許認可取得に膨大な時間がかかり、たいてい工期が遅れる原因となり、工事期限が近付くと、昼夜兼行の突貫工事になるのが一般的ですが、APEC2012は、さすがにロシアの国家事業という位置付けから、プーチンが昨年12月に当地を訪れた際に「遅れは許されないが、手抜きも許さない。事業予算は1ルーブルたりとも、事業以外に使われてはならない」とハッパをかけています。
■この背景には、上記のような官僚主義の弊害のほかに、汚職の蔓延というロシアの実態があります。もっとも、日本も偉そうには言えない実情がありますが…。
現地で聞いた話ですが、先年、ウラジオストクの副市長が、突然解任され、刑務所に送られました。原因は、ロシア中に巣くっているマフィアのうち、ウラジオストクに利権を持つ組織から賄賂を受け取ったことです。ただし、ロシアでは賄賂を受け取っても、その背景にあるマフィアの要求に応えれば、問題ないということです。
この前副市長の場合は、賄賂をもらっても、マフィアの要求を無視したため、当局に密告されて御用となりました。刑務所に送られると、これまたマフィアの影響が塀の向こうにも及んでいるため、おそらく生きて出られないだろうという見方がされています。
■どこかの日本の自治体を彷彿とさせる話ですが、ロシアの場合は、実効はともかく、プーチン首相やメドベージェフ大統領が、汚職防止キャンペーンを熱心にやっています。他方、我らが日本国ではなぜか、不正経理が発覚しても首長は毅然たる態度を取ろうとせず、警察の立件に及び腰です。たまたま起訴されて有罪判決を受けても、公務員は、ほとんどの場合、もらった賄賂相当額を罰金として支払うだけで、懲役刑は執行猶予になり、塀の向こうに行くことはめったにありません。こうした実態を、日本国民はよく認識しておく必要があります。
↑空から見た空港ターミナル。↑
↑狭い国際線ロビーにも、2月に来た時はなかったコーヒーショップが営業中。来るたびに様子が変わっている。↑
【ひらく会情報部・海外取材班・この項おわり】