市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

廃棄物の捨て場に困り墓所の近くにサンパイ場を作った東邦亜鉛が抱える事業戦略の欠如と企業論理の欠陥

2011-01-22 14:47:00 | 東邦亜鉛カドミウム公害問題
■当会では、1月4日付けで、国の経済産業省の大畠大臣(その後、まもなく国交省大臣に就任)と群馬県知事の大澤知事、安中市の岡田市長、そして東邦亜鉛㈱の手島社長あてに対して、東邦亜鉛が、地元の先祖代々の墓所のすぐ近くに設置した安定五品目と称する産業廃棄物処分場の稼働の白紙撤回を求める嘆願書を提出しました。

 このサンパイ場は、東邦亜鉛が、平成17年4月1日に国が「実質的に鉱山を伴わない製錬所は一般法の管理下に移行する」とする鉱山保安法の改正をしたにもかかわらず、住民に内緒で、ちゃっかり後出しで鉱山保安法の改正後に国の許可を取って平成19年秋に着工し、平成20年春に完成させておいてから、体裁だけは、鉱山保安法改正後に、一般法である廃掃法の適用を受けた格好にするために、最後に住民説明会を開いて、群馬県の許可を得ようとしているものです。

東邦亜鉛の本社がある日本橋の丸柏ビル1階ロビーにある案内板。
■東邦亜鉛㈱からは、1月12日付で、「この処分場の仕様については(国の設置許可を取得済みなので、あとは)県の許可を得た上で適法かつ適正に行ってまいりますので、よろしくご了承賜りますようお願い致します」という回答が来ました。

 そこで、当会では、1月19日(水)に、回答書をよこした同社の本社の環境管理部の冨澤芳幸部長に面談して、直接、サンパイ場の使用撤回を申し入れるとともに、なぜ住民説明会を開催せずに、安定五品目のサンパイ場をつくったのか、その許認可にかかる手続きの経緯について聴取しました。

 面談は日本橋本町一丁目6番1号の丸柏ビル3階の同社総務本部の応接室で行われ、同社からは総務本部環境管理部長の冨澤芳幸部長と、同総務部の本石泰男課長が出席しました。

■その結果、残念ながら、同社からは、「(当会からの)嘆願書は経営陣にも見てもらっている。しかし、(処分場は)法令に則って作り、これから県の許可を受けて適法に使用するし、埃が立ったりしないように、塀を高くするなどして、墓所から見えないように使用するので、理解願いたい」という誠意のない回答しか得られませんでした。

 また、サンパイ場の設置計画から、許認可の手続きについても、詳しい説明と関連資料の開示を求めましたが、東邦亜鉛からは「詳細は調べてみないとわからない。申請手続きは、安中製錬所で行ったので、本社には申請書類等がないため、確認できない」ということでした。そこで当会は「情報開示はできますか?」と訊いたところ、同社からは「安中製錬所の担当部署に指示をしておくので、そちらにあたってほしい。しかし、ものによっては出せないものもある」という回答がありました。

 ヒヤリングは1時間半ちかくに及びましたが、東邦亜鉛からは、サンパイ処分場については、稼働計画の撤回はもとより、当会が提案した従来の同社の廃棄物埋立て場所での延命策さえも不可能だという説明に終始し、地元住民の墓所の近くに設置したサンパイ処分場が群馬県の許可を得られ次第、稼働するつもりのようです。

■今回の聴取で、当会が指摘した結果、判明した重大な事実があります。それは、既に東邦亜鉛は長年にわたり廃棄物の処理を続けてきたことから、廃棄物の捨て場所に困り、とうとう、地元住民の墓所の近くにしか、廃棄物の捨て場所の確保ができなくなっていることです。

 東邦亜鉛は、野殿丘陵の北側斜面に立地しており、信越線の安中駅まで運んできた亜鉛鉱石を、以前はケーブルカーで野殿丘陵の頂上レベルにある原料貯蔵庫に運び上げて、それを、斜面を利用して製錬のための加工を加え、最終的には、野殿丘陵の裾野の電解工場を経て製品倉庫まで下ろして製品として出荷するとともに、廃棄物を製品倉庫の前に埋め立ててきました。

■今年の4月から稼働を始める新しい電解工場は、製品倉庫の東側に建設されましたが、新電解工場の前方(北側)にあるスペースは、長年にわたり埋め立てられて、造成された場所となっています。サッカー場が2面程度とれるような広い場所です。当然、この場所を延命して使用すればよいと誰もが思います。

 ところが、東邦亜鉛の説明は違っていました。同社の話では、安定五品目を埋め立てる際には、法令で高さ3m以上に盛り上げてはならないという規則があり、これ以上、現在の場所は埋め立て場所として使用できないというのです。

■そこで感じたのは、なぜ新電解工場をそうした埋立完了地の上に建設をしなかったのかということです。限られたスペースのなかで、永続して製錬事業を営むためには、廃棄物をすべて無害化してできる限り再利用可能な有価物として外部に出し、工場の中には廃棄物を貯めないことが最も重要です。ところが、東邦亜鉛はそれを怠り、安易に捨て場を作ってきたのです。

 同社はこれまで、公害による鉱毒を発生させて、周辺土地にそれをまきちらし、周辺住民の財産である土地の利用価値を損ない、農業収入では生計を立てられないように追い込み、離農を促すために、鉱毒で汚染された土地を僅かばかりの金を提示して買収し、工場の面積を広げてきました。

■鉱毒による汚染土壌で、かつては日本一にも輝いた高収量の肥沃な土地は痩せ、鉱毒に敏感な蚕は、汚染された桑の葉を食べると次々に水を吐き死んでしまいました。農業で生計を立てられなくなり、将来への展望が開けなくなった農民は、東邦亜鉛が提示した僅かばかりの金と引き替えに、先祖伝来の土地を売らざるを得なかったのです。

 ところが、そうした手法は公害問題の発覚以降、次第に使えなくなったのです。公害問題が社会問題として注目されたころ、企業の永続性の観点から、廃棄物の適正な処理、すなわち無害化処理とリサイクルの促進により、得体の知れない廃棄物をなくして、安中製錬所工場の面積を増やすことなく、永続的に操業を続けてゆくために、真剣に智恵を絞らければならなかったのです。

■今回、東邦亜鉛はそうした長期的な戦略を全く立てることなく、目先の問題解決だけを考えて、刹那的な対処方法をとってきたため、今回のようなとんでもない場所にサンパイ場を設置しなければらなくなったのです。

 同社の今後の事業推進のためにも、絶対に、野殿北浦の地元住民の先祖代々の墓所の近くに設置されたサンパイ場は稼働させてはならないと当会は考えています。

【ひらく会事務局】


期待しながらエレベータに乗り、同社3階の受付に向かったが、ことごとく不発に終わり、失意のうちにエレベータで帰途に就いた。
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