■最も肝心なカドミウム汚染土壌の分析結果と対策処方箋がなぜ黒塗りにされなければならないのか、いくら考えても理由が見出せません。そのため、思い悩んだ挙句、60日の不服申し立て期間の期限到来直前に、県知事に対して異議申立てをすることにしました。
**********
異議申立書
平成25年4月23日
群馬県知事 大澤正明 様
異議申立人
郵便番号 379-0114
住 所 群馬県安中市野殿980
氏 名 小川 賢 (61歳)
TEL:027-382-0468
行政不服審査法の規定に基づき、次のとおり公文書非開示決定に対して異議申立を行います。
1.異議申立に係る処分:
異議申立人が平成25年2月15日付けで群馬県知事に対して行った「平成25年1月17日東邦亜鉛公害防除特別土地改良事業推進本部役員会会長名で地元安中市北野殿住民に配布されたアンケート調査と事業経過表に関する次の情報。1)調査実施や結果取扱に係る安中市との協議経過。2)平成23年5月県から国(環境省・農水省)に協議し、野菜類カドミウム国内基準の制定見通しのないことを確認した経過と内容。3)7月21日の本部役員会で現計画構想での事業実施要望があったことを示す議事録。のうち下記の文書。 1 業務報告(発議日平成24年8月8日) 2 業務報告(発議日平成24年11月7日) 3 業務報告(発議日平成25年1月10日)」に掛る公文書開示請求のうち、平成25年3月22日に為された「3 業務報告(発議日平成25年1月10日)」における「②土壌分析結果及び対策処方箋の検討に関する担当者の発言要旨及び質疑応答の全部」(以下「本件情報」という。)に係る不開示処分(以下「本件処分」という。)
2.異議申立に係る処分があったことを知った年月日:平成25年3月22日
3.異議申立の趣旨:
本件処分は、条例を不当に解釈し運用されたものであり、本件処分の取り消しを求めます。
4.異議申立の理由:
(1)異議申立人は県民として公文書の開示を求める権利を有しています。
(2)群馬県知事は、「②土壌分析結果及び対策処方箋の検討に関する担当者の発言要旨及び質疑応答の全部」を、群馬県情報開示条例第14条第6号に基づき「群馬県が農用地土壌汚染対策計画の変更のために行った、土壌分析結果及び今後の試験研究の検討内容が記載されており、一定の期日以前に公にすることで、土地の評価額や事業費用の適切な算定に影響するなど、特定の者に不当な利益や不利益を及ぼすおそれがあるため。また、試行錯誤の段階で公にすることにより、利害関係者との調整や交渉に影響を与え、適切な対策計画の変更を行うことが困難になるおそれがあるため」という理由で、黒塗りにして、不開示としましたが、異議申立人は次の理由により本件処分を直ちに取り消して、改めて、黒塗り箇所を公にすることが必要と考えます。
①条例第14条第6号に非該当:本件情報は、現在、異議申立人を含む地元地権者を対象に、県と市が行っているアンケート調査に記入する際に、必要不可欠な情報であり、これを公にしないと、所有地の土壌汚染レベルがどの程度なのか認識できないため、公特事業着手前から着手後、そして完了までの作物の安全性を判断することができない。また、これを公にすることで、特定のものに不当な利益や不利益を及ぼすことが防げる。知事は「一定の期日以前に公にすることで土地の評価額や事業費用の適切な算定に影響する」としているが、この根拠が具体的に何も示されていない。例えば、「一定の期日」というのはいつの時点を指しているのか不明である。既に地元では100%の仮同意を得ており、一刻も早い事業の着手が望まれている。土地の評価額は、事業前の汚染土壌レベルにより左右されるのではなく、事業後の土質により左右されることになるので、土壌汚染状況や対策方法についての情報を公にすることは、国や県や市の当事者としての地位に支障を与えることはありえない。知事は、同条6号のロを意識してか「利害関係者との調整や交渉に影響を与え、適切な対策計画の変更を行うことが困難になるおそれがある」として、東邦亜鉛が事前に土壌汚染レベルをしり、対策方法をしって、事業費が高くなることを事前に察知した場合、事業の推進に対してゴネたりして、円滑な事業の推進を懸念しているようだが、それは間違いである。むしろ、きちんと汚染状況を東邦亜鉛に知らしめて、対策方法を十二分に検討して、カドミウム等重金属汚染土壌の除去を如何にすれば完璧に実施できるかを、費用面からも認識させておくことは非常に大事なことである。もし、東邦亜鉛が事業費を低く抑えようと、政治家を使って得意の圧力を行政に加えたとすれば、それこそ、世論のバッシングを浴びることになるため(ただし行政がそのような圧力について公表しなければ意味がないが)、東邦亜鉛もそのような振る舞いは避けるはずである。なお、知事が、この情報を、異議申立人を含む地元地権者らに対して開示すると、安い予算でいい加減な工法で汚染土壌の除去対策を行おうと心配して、円滑な事業の推進に支障を及ぼすなどと考えているのであれば、それは誤りである。
②条例第14条第2号ただし書きロに該当:まさに、これは人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報にあたる。
(3)よって、本件処分を取り消し、本件情報の全面開示を求めます。
5.処分庁の教示の有無及びその内容:平成25年3月15日付技第697-2号の公文書部分開示決定通知書により、「この処分について不服がある場合には、この処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内に、群馬県知事に対して異議申立てをすることができます」などと通知されました。
以 上
**********
■その後、平成25年5月22日付技第697-1号で群馬県公文書開示審査会諮問通知書が県知事(農業技術課)から送られてきました。
そしてこのたび、平成25年7月3日付公開審第30164-2号で、群馬県公文書開示審査会から意見書提出要請とともに、群馬県知事が審査会に提出した理由説明書の写しが送られてきました。平成25年8月5日(月)までに意見書を提出を求められています。
**********
様式第4号(規格A4)(第7条関係)
公開審第30164-2号
平成25年7月3日
小川 賢 様
群馬県公文書開示審査会会長
(第二部会部会長 村上 大樹)
意見書の提出の求めについて
下記1の諮問事件について、当審査会の調査審議の参考としたいので、群馬県公文書開示審査会審議要領第7条第1項の規定に基づき、下記2のとおり意見書の提出を求めます。
記
1 諮問事件
諮問番号:諮問第143号【技術支援課決定分】
事件名:「平成25年1月17日東邦亜鉛公害防除特別土地改良事業推進本部役員会会長名で地元安中市北野殿住民に配布されたアンケート調査と事業経過表に関する次の情報。1)調査実施や結果取扱に係る安中市との協議経過。2)平成23年5月県から国(環境省・農水省)に協議し、野菜類カドミウム国内基準の制定見通しのないことを確認した経過と内容。3)7月21日の本部役員会で現計画構想での事業実施要望があったことを示す議事録。のうち、下記の文書。1業務報告(発議日 平成24年8月8日)2業務報告(発議目 平成24年11月7日)3業務報告(発議日 平成25年1月10日)」の公文書部分開示決定に対する異議申立て
2 意見書の提出
(1)提出期限
平成25年8月5日(月)
(2)提出を求める意見書及び提出方法
別紙様式により作成した書面を、持参又は郵送で群馬県生活文化スポーツ部県民生活課に提出してください。
なお、提出された意見書は、群馬県公文書開示審査会審議要領第7条第2項の規定に基づき諮問庁にその写しを送付しますので、念のため申し添えます。
〒371-8570前橋市大手町1-1-1群馬県庁
事務局:県民生活課情報公開係
電話;027-226-2271
(別紙)
平成○年○月○日
群馬県公文書開示審査会会長 様
不服申立人住所・氏名
「意見書」の提出について
このことについて、群馬県公文書開示審査会審議要領第7条第1項に基づく「意見書」を下記により提出します。
記
1 開示請求公文書の特定について
2 群馬県情報公開条例における開示・非開示の解釈について
3 諮問庁の公文書を開示しない理由に対する意見
【平成25年6月28日付県知事から審査会宛理由説明書】
技第697-2号
平成25年6月28日
群馬県公文書開示審査会会長 様
群馬県知事 大澤 正明
「理由説明書」の提出について
このことについて、群馬県公文書開示審査会審議要領第6条に基づく「理由説明書」を別紙のとおり提出します。
事務担当 技術支援課
生産環境室農業環境保全係
電話 027-226-3036
※収受印:群馬県25.6.28県民生活課収受
(別紙)
理 由 説 明 書
1 開示請求に係る公文書の特定について
平成25年2月15日付けで「平成25年1月17日東邦亜鉛公害防除特別土地改良事業推進本部役員会会長名で地元安中市北野殿住民に配布されたアンケート調査と事業経過表に関する次の情報 1)調査実施や結果取扱に係る安中市との協議経過。 2)平成23年5月県から国(環境省・農水省)に協議し、野菜類カドミウム国内基準の制定見通しのないことを確認した経緯と内容。3)7月21日の本部役員会で現計画構想での事業実施要望があったことを示す議事録。」に係る公文書開示請求があり、開示請求に係る文書を「1 業務報告(発議目 平成24年8月8日)」「2 業務報告(発議日 平成24年11月7日)」「3 業務報告(平成25年1月10日)」と特定し、平成25年3月15日 技697-2号により公文書部分開示決定を行った。
2 群馬県情報公開条例における開示・非開示の解釈について
群馬県情報公開条例(平成12年群馬県条例第83号。以下「条例」という。)第11条は、「何人も、この条例の定めるところにより、実施機関に対し、当該実施機関の保有する公文書の開示を請求することができる。」と規定し、県民のみならず広く公文書の開示請求権を認めているところである。
一方、条例第14条は「実施機関は、開示請求に係る公文書に次の各号に掲げる情報(以下「非開示情報」という。)のいずれかが記載されている場合は、当該公文書を開示してはならない。」と規定しており、同条各号に該当する情報が記載されている公文書の開示を禁ずる旨を定めている。
非開示情報として同条第2号は、「個人に関する情報(事業を営む個人の該当事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができるようになるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。」(同条本文)と規定している。
また、同条第6号は、「県の機関、国、独立行政法人等、他の地方公共団体、地方独立行政法人又は公社が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの。」(同号本文)と規定している。
3 公文書を部分開示とする理由
(1)非開示部分について
「平成24年8月8日業務報告」及び「平成24年11月7日業務報告」中、「公害防除特別土地改良事業推進本部役員会会長の氏名」に関する部分を条例第14条第2号本文に該当するものとして非開示とした。
また、「平成25年1月10日業務報告」中、「土壌分析結果及び対策処方箇の検討に関する担当者の発言要旨及び質疑応答の全部」に関する部分を条例第14条第6号本文に該当するものとして非開示とした。
(2)条例第14条第2号の該当性について
公害防除特別土地改良事業推進本部役員会(以下「役員会」とする。)は、安中市野殿・岩井地区の農用地土壌汚染に係る対策を推進するために、汚染された農用地の所有者などにより任意に結成された組織である。
役員会の会長名については、安中市野殿・岩井地区の農用地土壌汚染に係る地域に居住する住民には、相当程度周知されているが、一般に周知されておらず、安中市も、市広報などでの周知を行っていない。
以上のことから、役員会の性格は任意団体として解釈することが相当であり、条例第14条第2号ただし書きにおいて規定されている個人に関する情報とは認められない。
よって、役員会会長の氏名に関する情報は、条例に定める「個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるもの」に該当するものと認められ、非開示とすることが相当と判断したものである。
(3)条例第14条第6号の該当性について
農用地の土壌汚染対策は、農用地土壌汚染防止法を根拠として、特定有害物質(カドミウム・銅・ヒ素)により汚染された農用地の土壌汚染対策を実施するものである。
安中市の農用地土壌汚染対策のため、汚染土壌の排除及び非汚染土の客土(他の場所の土を持ってきて入れること)を行う必要があるが、土壌の排土客土厚(排除する土、客土する土の厚さ)を決定するためには、汚染土壌の分析を行うことなどにより科学的根拠に基づいた対策の立案が必要となる。
また、農用地土壌汚染対策の推進には、安中市の汚染農用地所有者等、関係者の理解と協力が不可欠であり、十分な事前説明が求められる。
仮に、農用地土壌汚染対策計画作成の基礎データを得るため、調査を継続している段階で、一部の結果や今後の方針などの情報が公開された場合、さまざまな憶測や風評などを生みかねず、農用地土壌汚染対策の推進に重大な支障を生じかねない。
加えて、関係者に対する十分な事前説明がなされる前に土壌分析結果などの情報が公開された場合、関係者の信頼を損ね、対策の推進に重大な支障が生じるおそれがある。
よって、土壌分析結果及び対策処方簾の検討に関する担当者の発言要旨及び質疑応答の全部に関する情報は、条例に定める「当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」に該当するものと認められ、非開示とすることが適当と判断したものである。
**********
■行政の情報隠しの体質は今に始まったことではありませんが、カドミウム公害で75年間も苦しめられてきた住民にとって、汚染レベルのデータはもっとも基本的な必要情報です。
しかし行政の考え方は、被害住民らのことはそっちのけです。今回の行政の非開示理由は、「土壌の排土客土厚(排除する土、客土する土の厚さ)を決定するためには、汚染土壌の分析を行うことなどにより科学的根拠に基づいた対策の立案が必要」で、「汚染対策の推進には、汚染農用地所有者等、関係者の理解と協力が不可欠であり、十分な事前説明が求められる」ことから、「対策計画作成の基礎データを得るため、調査継続段階で、一部の結果や今後の方針などの情報が公開された場合、さまざまな憶測や風評などを生みかねず、農用地土壌汚染対策の推進に重大な支障を生じかねない。加えて、関係者に対する十分な事前説明がなされる前に土壌分析結果などの情報が公開された場合、関係者の信頼を損ね、対策の推進に重大な支障が生じるおそれがある」から開示請求情報は「当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある」ので非開示が妥当だというのです。
これでは、この事業を進めたくないと思っている東邦亜鉛の上層部や、これまでも同社の意向を受けて事業推進をあらゆる手段を使って妨害し或いは先送りしようと画策してきた岡田義弘・安中市長の思う壺です。つまり、群馬県も東邦亜鉛に汚染対策をやらせずに済むように配慮をしていることになります。
汚染レベルを地元住民に開示すると、まだ調査の過程だから十分な説明ができず、憶測や不評被害が心配だという行政の理屈は、全く逆です。汚染レベルを地元住民に開示してこそ、この事業の緊急性や重要性が地元住民に認識され、土壌の除染対策事業が円滑に推進できるというふうに考えずに、行政は、住民にはそうした汚染の実態データを隠したほうが対策事業がスムースにいくというのですから、あきれて物が言えません。
このような群馬県環境行政の体質だからこそ、東邦亜鉛も、同社から政治献金を受けている安中市長も、土壌汚染の除染事業が進むわけはないとたかをくくっているのです。しかも、役所の関係者は、いくら事業が遅れても、どうせ2年経過すれば他の部署に異動となり、あとにはまた別の職員が担当するため、その間の時間つぶしに過ぎないと思っているためです。そこには、公害で苦しむ地元住民の気持ちは全く斟酌する気など毛頭ありません。
■当会では、さっそく意見書を作成し、期日までに提出することにしています。
【ひらく会情報部・東邦亜鉛公害対策調査班】