■ここのところ、スラグ報道は更にヒートアップし、週に一度は紙面を賑やかしている感があります。この報道が過熱度を増している理由は、スラグ問題に対する国や市などの行政の対応がおかしいからに他なりません。
当会では、「大同スラグは産業廃棄物である」こと、「産業廃棄物は何人もみだりに投棄してはならない」こと、「事業者は自ら産業廃棄物を適正に処理しなければならない」こと、この3つの基本的な考えをしっかりと確認しつつ、広く皆様にお伝えすることを心掛けております。ところが、この基本事項を全く理解しようとしない渋川市が、12月9日に記者発表を行ったようなので、見ていきましょう。
**********2015年12月10日上毛新聞
2015n1210vxos.pdf
スラグ処理費 大同負担
渋川市、年内に基本協定
鉄鋼メーカー、大同特殊鋼(名古屋市)の渋川工場から出た鉄鋼スラグが公共工事に使われ、一部から基準値を超える有害物質が検出された問題で、渋川市は9日、市議会議員全員協議会で処理費用を大同側が負担する方向で合意したことを明らかにした。年内に大同と処理に関する基本協定を結んだ上で、施工する個別案件ごとに具体的な対応を協議する。
10月末現在で確認された市内72カ所のうち、環境基準値を超えているのは49カ所。将来にわたり管理ができない借地など9カ所を撤去、材料が露出している32カ所は舗装などで表面被覆するとした。8カ所は既に被覆されている。環境基準は満たしているが、小中学校4校に関しては早期に表面被覆するとした。
議員から全て撤去していくべきとの意見も出されたが、市側は国、県との連絡会議で提示された方針に基づいて対応策を決め、早期に工事着手する方針をあらためて表明。将来的に水道工事などで該当箇所が施工され、スラグ処理が必要になった場合も大同が費用を負担する方向で協議していることを明らかにした。
**********毎日新聞2015年12月10日 地方版 群馬県
http://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwiKwpyyg9bJAhWELpQKHYT2D4IQFggbMAA&url=http%3A%2F%2Fmainichi.jp%2Farticles%2F20151210%2Fddl%2Fk10%2F040%2F009000c&usg=AFQjCNGOla0CERbmZcjG4lWfoZDppcRgzQ
鉄鋼スラグ問題 大同負担で渋川市が処理、基本合意 /群馬
大同特殊鋼渋川工場から出荷された鉄鋼スラグを巡って、渋川市は9日、市発注工事で使われたスラグの撤去や被覆にかかる費用負担について大同側と基本的に合意したと市議会で明らかにした。今後、市が処理し、大同が費用を負担することを定めた基本協定を締結する。
渋川市では、大同のスラグ使用が判明した市発注工事72カ所のうち49カ所で環境基準を超えるフッ素、六価クロムが検出された。49カ所中8カ所はすでにスラグ使用部分を覆う被覆処理がなされているが、残る41カ所と環境基準値以下の小中学校4校で撤去または被覆処理を進める。市と大同が協議し、処理を市が担い、調査や撤去・被覆、復旧工事にかかる費用を大同が負担することで合意した。
45カ所のうち9カ所で撤去、36カ所で被覆する。有害物質が環境基準以内だがスラグへの接触リスクの高い4小中学校の被覆工事から着手する方針。市議会では全件撤去を求める意見も出たが、市側は「必要なのは迅速な処理だ」と主張した。【高橋努】
**********
■今回も新聞報道のポイントを次の通り整理していきましょう。
① 年内にも大同と処理に関する基本協定を締結すること
② 具体的な対策は、舗装で被覆が主であること。
③ 議員から全て撤去していくべきとの意見も出されたが、正当な考えが無視されたこと
■次にそれぞれのポイントについて考察を加えてみましょう。
◆ポイント①「年内にも大同と処理に関する基本協定を締結すること」について
スラグ処理について基本協定を結ぶという、一見すると一歩前進した良いニュースだという印象付けがされています。しかし、大同特殊鋼はブラック仲間の佐藤建設工業と共に9月7日群馬県から刑事告発されています。9月11日には群馬県警による強制捜査を受けるなどしており、不起訴処分が下されない限り被疑者の立場なのです。
その被疑者と基本協定を結ぶという渋川市の対応は、果たしていかがなものでしょうか?今後、その基本協定に定められる対策内容も、大同に有利な内容ということになれば、なおさら疑問が湧いてきます。
問題のスラグについては、群馬県が「廃棄物」と認定しました。従って、本来、渋川市は、群馬県に対して、原状回復の措置命令が出されるように主張し、県知事による命令に基づいて、このサンパイ不法投棄事件の解決を目指さなくてはなりません。
と同時に渋川市においては、独自に原状回復の措置命令を出せるよう条例を制定し、大同に代わり、市が廃棄物の撤去を進め、その費用を大同に請求していく、という毅然とした姿勢が求められます。また、撤去費用を支払わない場合は裁判により解決をはかる、というふうに、廃棄物の撤去を念頭に置いた断固たる措置を講じなければなりません。「基本協定を締結」などは、筋違いなのです。
◆ポイント②「具体的な対策は、“舗装で被覆”が主であること」について
渋川市は大同特殊鋼と一緒になって、渋川市の大地をスラグ最終処分場と化してきました。高額納税者である大同特殊鋼から、その立場を悪用してちらつかされた“撤退”の二文字に脅され、有害スラグの不法投棄場所を同社に提供してきたのです。その恐怖感のあまり、渋川市は未だに同社への従属感から脱却できず、同社の軍門に屈してしまっており、自治体でありながら私企業である大同様の御為に、立ち振る舞っているのが実情です。
渋川市は、“スラグを撤去する”のに比べるとはるかに安価で済ませられる“舗装で被覆する”という手法で、「臭いものに蓋」で済まそうと画策しているのです。国、県、渋川市の連絡会議では、渋川市が大同と事前に相談して、“舗装で被覆する”方法を積極的に主張したことが漏れ伝わってきています。「国や県に従う」としながら、自ら大同様の為に行動しているのです。群馬県はスラグが廃棄物であると認定したのです。廃棄物は撤去するのが原則です。
◆ポイント③「議員から、全て撤去していくべき、との意見も出されたが、正当な考えが無視されたこと」について
渋川市お得意の、多数決で自分に不都合な事を抑え込んでしまおうという体質が、またしても露呈したかたちです。上毛新聞によれば「市議会議員全員協議会で報告された」とありますが、実際は「全て撤去していくべき」との意見を抑え込むため、多数決が図られたようです。渋川市では、違法行為=犯罪の処理も法律に基づくことなく、多数決方式で決めていくのが常套手段なのです。
この議員全員協議会は、議員全員で行うもので、その限りでは本会議と同じですが、地方自治法や会議規則で決められているものではなく、審議、議決は行いません。一般的には、市政に関する重要な事件や市会内部の処理事項について、報告、協議するために開かれますが、この市議会本会議でもない議員全員協議会で多数決を取ることがいったい何になるのでしょうか?
議員たるもの廃棄物処理法の趣旨・目的を理解して行動してほしいものです。群馬県が廃棄物として認定したスラグを「撤去すべき」と主張することは、法律を理解し順守する立場の者にとっては、当然な行動です。それなのに、大同様の御為、多数決で抑え込もうとする輩は、“法治国家の敵”と見なされても仕方がないでしょう。
毎日新聞は「市側は『必要なのは迅速な処理だ』と主張した」と報じています。たとえば学校内に不法投棄されたスラグについて、“舗装による被覆”と“撤去”とで、時間にしてどのくらい違うのでしょうか?撤去と言っても、掘削して大同特殊鋼の庭に仮置きしておけばいいのですから、時間はそれほど変わりません。公園などは1年半あまりカラーコーンと張り紙で立ち入り禁止としてきたのですから、何をいまさら渋川市が「迅速な処理だ」などと主張できるのでしょうか?
渋川市では、今年6月にスラグ早期措置の議会決議が可決されています。あれから既に半年余りスラグを放置している渋川市は、9月11日に大同特殊鋼様が刑事告発されたので、ここに来て、手のひらを返すように「迅速な処理だ」と態度を変えたのでしょうか?あるいは、もし大同社員が逮捕でもされたら一大事なので、大同様の費用負担を軽くするため、今のうちに「迅速な処理」が必要だと考えたのでしょうか?
もちろん撤去の順番が巡ってくるまで、とりあえず暫定的に“舗装による被覆”を行う、というなら話は判ります。渋川市ではスラグが廃棄物であるかどうかについては「司法が決める」との立場であるようなので、「大同や佐藤の刑事告発に対する警察の判断が下されるまで“舗装による被覆”を行い、司法の判断を待つ」というなら、百歩譲って多少は話がわかります。ですが、スラグは群馬県によって廃棄物の認定がされたのですから、不法に投棄されたものは、原則として撤去しなければならないのです。
■最後に、上毛新聞の記事のなかで、一つだけホッとさせられることがあります。
「将来的に水道工事などで該当箇所が施工され、スラグ処理が必要になった場合も大同が費用を負担する方向で協議していることを明らかにした。」と報道されていることです。
循環型社会形成推進基本法により、このまま放置しておくと将来、掘削を伴う工事によってスラグが掘り返されると“がれき類”としてリサイクルされてしまい二次被害をもたらしてしまいます。そのため、がれき類として処理せず遮断型最終処分場に埋設する費用を大同が負担することを協議していることが報道されています。
有毒スラグに思考能力が狂わされた渋川市の中においても、人の話を聞く優秀な人材もわずかながら存在していることがうかがえます。ただ、この考えは渋川市内部から出たとは到底思えません。
しかし、どのような形でもいいのです。“きれいな群馬ちゃん”を守るため、人の話にも耳を傾けていただきたいのです。
ただし、この処理のためには、どこにスラグがどれくらい不法投棄されているか確定させ、記録しておくことが必須条件となります。“極悪”佐藤建設工業がその販売する全ての資材に不法投棄してしまっているので、佐藤建設工業の試験成績表が提出されている現場は全て記録し、監視を続けていかなければなりません。「書類の保存期間は5年だから5年後は判らない」という姿勢では、困ってしまうのです。
「未来永劫記録を残し、掘り返す際にはその記録に基づいて状況を確認する」
渋川市には、そこまでやる覚悟はできているのでしょうか?のど元過ぎれば・・・の体質だけに、かなり心配ですので、ここで皆様と一緒に声高に叫んでみましょう。
「ここが変だよ、渋川市!」
【市民オンブズマン群馬・大同有毒スラグ不法投棄特別調査チーム・この項続く】
※参考資料1「大同特殊鋼の内部資料」
大同特殊鋼の内部資料に「環境基準の10倍までのフッ素が含まれている」ことについては当会ブログを参照して下さい
○2015年9月9日:大同スラグを斬る!・・・スラグ混合路盤材の製造及び販売管理に関する大同マニュアルで問われる企業モラル↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/1715.html
※参考資料2「有害物質の希釈という禁じ手」
大同特殊鋼は土壌汚染対策法で予定される分析方法を悪用して、今回の不法投棄犯罪を計画しています。その分析方法とは、天然石とスラグを現場から均等混合しながら採取し、これを粉にし、水に浸けて分析調査することです。固形の塊を粉にすることで、液体と土を擬態した調査方法といえます。この点、環境省は、「有害スラグと天然石は希釈されない」、つまり「混ざり合うことはなく、有害物質は薄まらない」と話しています。次の国会質疑を参照ください。
◆第187回国会 経済産業委員会 第8号 平成26年11月12日(水曜日)
塩川鉄也衆院議員(共産)
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009818720141112008.htm
○鎌形政府参考人 御指摘は、廃棄物と認識されるものを廃棄物でないものと混合するという行為についてということだと解釈いたしますけれども、廃棄物につきまして処理という行為がございますが、廃棄物の処理につきましては、物理的、化学的または生物学的な手段によって形態、外観、内容等について変化させるということでございますので、御指摘のようなスラグを希釈目的で自然砕石と混合する、このような行為は廃棄物の処理には当たらないということでございまして、混合されたものにつきましては、廃棄物と廃棄物でないものを混合したものとして取り扱っていくべきもの、こういうことと解釈してございます。
※参考資料3「環境省から各都道府県サンパイ所管部署長あて通知」
**********
環廃産発第1303299号
平成25年3月29日
各都道府県・各政令市産業廃棄物行政主管部(局)長 殿
環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課長
行政処分の指針について(通知)
https://www.google.com/url?q=https://www.env.go.jp/hourei/add/k040.pdf&sa=U&ved=0CBoQFjAIOApqFQoTCJ3Pj8iflMkCFSPapgodv3gNSQ&client=internal-uds-cse&usg=AFQjCNHn8XQ6PWIG5LSQflPDNx5098ua_g
第2 産業廃棄物処理業の事業の停止及び許可の取消し(法第14条の3及び第14条の3の2)
1 趣旨
産業廃棄物処理業の許可制度は、産業廃棄物の処理を業として行うことを一般的に禁止した上で、事業の用に供する施設及び事業を行う者の能力が事業を的確かつ継続的に行うに足りるものとして一定の基準に適合すると認められるときに限って許可することにより、産業廃棄物の適正な処理を確保するものである。したがって、その基準に適合しないおそれがあると判断されるに至った場合には、直ちに事業の停止を命ずるとともに(法第14条の3)、その基準に適合しないと判断されるなど、法が許可を取り消すべき場合として定める要件に該当するに至った場合には、速やかに許可を取り消す等の措置を講ずること(法第14条の3の2)。
なお、産業廃棄物処理業者が不法投棄等の重大かつ明白な違反行為を行っているにもかかわらず、原状回復責任を全うさせること等を理由に許可の取消処分を行わず、事業停止処分等にとどめる事例が見受けられるが、当該運用は、不法投棄等の違反行為を事実上追認するものであり、適正処理を確保するという許可制度の目的及び意義を損ない、産業廃棄物処理に対する国民の不信を増大させるものであるばかりか、違反行為による被害を拡大させかねないものであることから、著しく適正を欠き、かつ、公益を害するものである。したがって、こうした場合には、躊躇(ちゅうちょ)することなく取消処分を行った上で、原状回復については措置命令により対応すること。
〔当会解説〕
不法投棄などの違反行為を行った産業廃棄物処理業者には、許可を「躊躇(ちゅうちょ)することなく取消処分を行った上で、原状回復については措置命令により対応する」となっています。大同特殊鋼および佐藤建設工業は無許可で不法投棄を重ねてきたのですから、より厳正に対処しなければなりません。この点、役所で構成される鉄鋼スラグに関する連絡会議は、国土交通省と渋川市の横槍により、間違った方向に向かっていると考えざるを得ません。
第8 措置命令(法第19条の5)
1 趣旨
(1) 都道府県知事は、処理基準又は保管基準(以下「処理基準等」という。)に適合しない産業廃棄物の処理が行われた場合において、生活環境の保全上の支障を生じ、又は生ずるおそれがあるときは、必要な限度においてその支障の除去又は発生の防止のために必要な措置を講ずるように命ずることができることから、これらの者による不適正な処分を把握した場合には、速やかに命令を行い、生活環境の保全上の支障の発生を防止し、又は除去されたいこと。なお、この場合において、処理基準等に違反する状態が継続している(不法投棄の場合であれば、廃棄物が投棄されたままの状態が継続している。)以上、いつでも必要に応じ命令を発出することができること。
(2) 法第19条の5は、「命ずることができる」と規定されているところ、同条は生活環境の保全を図るため都道府県知事に与えられた権限を定める趣旨であるから、不適正処理された産業廃棄物の種類、数量、それによる生活環境の保全上の支障の程度、その発生の危険性など客観的事情から都道府県知事による命令の発出が必要であるにも関わらず、合理的な根拠がなく権限の行使を怠っている場合には、違法とされる余地があること。
〔当会解説〕
ここで重要なのは、知事は必要な措置を「命ずることができる」、と規定されていることです。この意味は、同条は生活環境の保全を図るため都道府県知事に与えられた権限を定める趣旨であるから、国土交通省や渋川市が、知事の命令に影響を与えようと、あれこれスラグ連絡会議等の場で口を挟んだりすることは言語道断であり、自ら間違った方法で行った環境基準調査値を盾に取って、「安全基準値内だから」などと主張し、本来、群馬県知事が発しなければならない措置命令に、国や渋川市が影響を与えることは、「違法とされる余地」があると考えるべきではないのでしょうか?
※参考資料4「スラグ産廃と特定できない」との報道についてはこちらを参照ください↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/1822.html
当会では、「大同スラグは産業廃棄物である」こと、「産業廃棄物は何人もみだりに投棄してはならない」こと、「事業者は自ら産業廃棄物を適正に処理しなければならない」こと、この3つの基本的な考えをしっかりと確認しつつ、広く皆様にお伝えすることを心掛けております。ところが、この基本事項を全く理解しようとしない渋川市が、12月9日に記者発表を行ったようなので、見ていきましょう。
**********2015年12月10日上毛新聞
2015n1210vxos.pdf
スラグ処理費 大同負担
渋川市、年内に基本協定
鉄鋼メーカー、大同特殊鋼(名古屋市)の渋川工場から出た鉄鋼スラグが公共工事に使われ、一部から基準値を超える有害物質が検出された問題で、渋川市は9日、市議会議員全員協議会で処理費用を大同側が負担する方向で合意したことを明らかにした。年内に大同と処理に関する基本協定を結んだ上で、施工する個別案件ごとに具体的な対応を協議する。
10月末現在で確認された市内72カ所のうち、環境基準値を超えているのは49カ所。将来にわたり管理ができない借地など9カ所を撤去、材料が露出している32カ所は舗装などで表面被覆するとした。8カ所は既に被覆されている。環境基準は満たしているが、小中学校4校に関しては早期に表面被覆するとした。
議員から全て撤去していくべきとの意見も出されたが、市側は国、県との連絡会議で提示された方針に基づいて対応策を決め、早期に工事着手する方針をあらためて表明。将来的に水道工事などで該当箇所が施工され、スラグ処理が必要になった場合も大同が費用を負担する方向で協議していることを明らかにした。
**********毎日新聞2015年12月10日 地方版 群馬県
http://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwiKwpyyg9bJAhWELpQKHYT2D4IQFggbMAA&url=http%3A%2F%2Fmainichi.jp%2Farticles%2F20151210%2Fddl%2Fk10%2F040%2F009000c&usg=AFQjCNGOla0CERbmZcjG4lWfoZDppcRgzQ
鉄鋼スラグ問題 大同負担で渋川市が処理、基本合意 /群馬
大同特殊鋼渋川工場から出荷された鉄鋼スラグを巡って、渋川市は9日、市発注工事で使われたスラグの撤去や被覆にかかる費用負担について大同側と基本的に合意したと市議会で明らかにした。今後、市が処理し、大同が費用を負担することを定めた基本協定を締結する。
渋川市では、大同のスラグ使用が判明した市発注工事72カ所のうち49カ所で環境基準を超えるフッ素、六価クロムが検出された。49カ所中8カ所はすでにスラグ使用部分を覆う被覆処理がなされているが、残る41カ所と環境基準値以下の小中学校4校で撤去または被覆処理を進める。市と大同が協議し、処理を市が担い、調査や撤去・被覆、復旧工事にかかる費用を大同が負担することで合意した。
45カ所のうち9カ所で撤去、36カ所で被覆する。有害物質が環境基準以内だがスラグへの接触リスクの高い4小中学校の被覆工事から着手する方針。市議会では全件撤去を求める意見も出たが、市側は「必要なのは迅速な処理だ」と主張した。【高橋努】
**********
■今回も新聞報道のポイントを次の通り整理していきましょう。
① 年内にも大同と処理に関する基本協定を締結すること
② 具体的な対策は、舗装で被覆が主であること。
③ 議員から全て撤去していくべきとの意見も出されたが、正当な考えが無視されたこと
■次にそれぞれのポイントについて考察を加えてみましょう。
◆ポイント①「年内にも大同と処理に関する基本協定を締結すること」について
スラグ処理について基本協定を結ぶという、一見すると一歩前進した良いニュースだという印象付けがされています。しかし、大同特殊鋼はブラック仲間の佐藤建設工業と共に9月7日群馬県から刑事告発されています。9月11日には群馬県警による強制捜査を受けるなどしており、不起訴処分が下されない限り被疑者の立場なのです。
その被疑者と基本協定を結ぶという渋川市の対応は、果たしていかがなものでしょうか?今後、その基本協定に定められる対策内容も、大同に有利な内容ということになれば、なおさら疑問が湧いてきます。
問題のスラグについては、群馬県が「廃棄物」と認定しました。従って、本来、渋川市は、群馬県に対して、原状回復の措置命令が出されるように主張し、県知事による命令に基づいて、このサンパイ不法投棄事件の解決を目指さなくてはなりません。
と同時に渋川市においては、独自に原状回復の措置命令を出せるよう条例を制定し、大同に代わり、市が廃棄物の撤去を進め、その費用を大同に請求していく、という毅然とした姿勢が求められます。また、撤去費用を支払わない場合は裁判により解決をはかる、というふうに、廃棄物の撤去を念頭に置いた断固たる措置を講じなければなりません。「基本協定を締結」などは、筋違いなのです。
◆ポイント②「具体的な対策は、“舗装で被覆”が主であること」について
渋川市は大同特殊鋼と一緒になって、渋川市の大地をスラグ最終処分場と化してきました。高額納税者である大同特殊鋼から、その立場を悪用してちらつかされた“撤退”の二文字に脅され、有害スラグの不法投棄場所を同社に提供してきたのです。その恐怖感のあまり、渋川市は未だに同社への従属感から脱却できず、同社の軍門に屈してしまっており、自治体でありながら私企業である大同様の御為に、立ち振る舞っているのが実情です。
渋川市は、“スラグを撤去する”のに比べるとはるかに安価で済ませられる“舗装で被覆する”という手法で、「臭いものに蓋」で済まそうと画策しているのです。国、県、渋川市の連絡会議では、渋川市が大同と事前に相談して、“舗装で被覆する”方法を積極的に主張したことが漏れ伝わってきています。「国や県に従う」としながら、自ら大同様の為に行動しているのです。群馬県はスラグが廃棄物であると認定したのです。廃棄物は撤去するのが原則です。
◆ポイント③「議員から、全て撤去していくべき、との意見も出されたが、正当な考えが無視されたこと」について
渋川市お得意の、多数決で自分に不都合な事を抑え込んでしまおうという体質が、またしても露呈したかたちです。上毛新聞によれば「市議会議員全員協議会で報告された」とありますが、実際は「全て撤去していくべき」との意見を抑え込むため、多数決が図られたようです。渋川市では、違法行為=犯罪の処理も法律に基づくことなく、多数決方式で決めていくのが常套手段なのです。
この議員全員協議会は、議員全員で行うもので、その限りでは本会議と同じですが、地方自治法や会議規則で決められているものではなく、審議、議決は行いません。一般的には、市政に関する重要な事件や市会内部の処理事項について、報告、協議するために開かれますが、この市議会本会議でもない議員全員協議会で多数決を取ることがいったい何になるのでしょうか?
議員たるもの廃棄物処理法の趣旨・目的を理解して行動してほしいものです。群馬県が廃棄物として認定したスラグを「撤去すべき」と主張することは、法律を理解し順守する立場の者にとっては、当然な行動です。それなのに、大同様の御為、多数決で抑え込もうとする輩は、“法治国家の敵”と見なされても仕方がないでしょう。
毎日新聞は「市側は『必要なのは迅速な処理だ』と主張した」と報じています。たとえば学校内に不法投棄されたスラグについて、“舗装による被覆”と“撤去”とで、時間にしてどのくらい違うのでしょうか?撤去と言っても、掘削して大同特殊鋼の庭に仮置きしておけばいいのですから、時間はそれほど変わりません。公園などは1年半あまりカラーコーンと張り紙で立ち入り禁止としてきたのですから、何をいまさら渋川市が「迅速な処理だ」などと主張できるのでしょうか?
渋川市では、今年6月にスラグ早期措置の議会決議が可決されています。あれから既に半年余りスラグを放置している渋川市は、9月11日に大同特殊鋼様が刑事告発されたので、ここに来て、手のひらを返すように「迅速な処理だ」と態度を変えたのでしょうか?あるいは、もし大同社員が逮捕でもされたら一大事なので、大同様の費用負担を軽くするため、今のうちに「迅速な処理」が必要だと考えたのでしょうか?
もちろん撤去の順番が巡ってくるまで、とりあえず暫定的に“舗装による被覆”を行う、というなら話は判ります。渋川市ではスラグが廃棄物であるかどうかについては「司法が決める」との立場であるようなので、「大同や佐藤の刑事告発に対する警察の判断が下されるまで“舗装による被覆”を行い、司法の判断を待つ」というなら、百歩譲って多少は話がわかります。ですが、スラグは群馬県によって廃棄物の認定がされたのですから、不法に投棄されたものは、原則として撤去しなければならないのです。
■最後に、上毛新聞の記事のなかで、一つだけホッとさせられることがあります。
「将来的に水道工事などで該当箇所が施工され、スラグ処理が必要になった場合も大同が費用を負担する方向で協議していることを明らかにした。」と報道されていることです。
循環型社会形成推進基本法により、このまま放置しておくと将来、掘削を伴う工事によってスラグが掘り返されると“がれき類”としてリサイクルされてしまい二次被害をもたらしてしまいます。そのため、がれき類として処理せず遮断型最終処分場に埋設する費用を大同が負担することを協議していることが報道されています。
有毒スラグに思考能力が狂わされた渋川市の中においても、人の話を聞く優秀な人材もわずかながら存在していることがうかがえます。ただ、この考えは渋川市内部から出たとは到底思えません。
しかし、どのような形でもいいのです。“きれいな群馬ちゃん”を守るため、人の話にも耳を傾けていただきたいのです。
ただし、この処理のためには、どこにスラグがどれくらい不法投棄されているか確定させ、記録しておくことが必須条件となります。“極悪”佐藤建設工業がその販売する全ての資材に不法投棄してしまっているので、佐藤建設工業の試験成績表が提出されている現場は全て記録し、監視を続けていかなければなりません。「書類の保存期間は5年だから5年後は判らない」という姿勢では、困ってしまうのです。
「未来永劫記録を残し、掘り返す際にはその記録に基づいて状況を確認する」
渋川市には、そこまでやる覚悟はできているのでしょうか?のど元過ぎれば・・・の体質だけに、かなり心配ですので、ここで皆様と一緒に声高に叫んでみましょう。
「ここが変だよ、渋川市!」
【市民オンブズマン群馬・大同有毒スラグ不法投棄特別調査チーム・この項続く】
※参考資料1「大同特殊鋼の内部資料」
大同特殊鋼の内部資料に「環境基準の10倍までのフッ素が含まれている」ことについては当会ブログを参照して下さい
○2015年9月9日:大同スラグを斬る!・・・スラグ混合路盤材の製造及び販売管理に関する大同マニュアルで問われる企業モラル↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/1715.html
※参考資料2「有害物質の希釈という禁じ手」
大同特殊鋼は土壌汚染対策法で予定される分析方法を悪用して、今回の不法投棄犯罪を計画しています。その分析方法とは、天然石とスラグを現場から均等混合しながら採取し、これを粉にし、水に浸けて分析調査することです。固形の塊を粉にすることで、液体と土を擬態した調査方法といえます。この点、環境省は、「有害スラグと天然石は希釈されない」、つまり「混ざり合うことはなく、有害物質は薄まらない」と話しています。次の国会質疑を参照ください。
◆第187回国会 経済産業委員会 第8号 平成26年11月12日(水曜日)
塩川鉄也衆院議員(共産)
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009818720141112008.htm
○鎌形政府参考人 御指摘は、廃棄物と認識されるものを廃棄物でないものと混合するという行為についてということだと解釈いたしますけれども、廃棄物につきまして処理という行為がございますが、廃棄物の処理につきましては、物理的、化学的または生物学的な手段によって形態、外観、内容等について変化させるということでございますので、御指摘のようなスラグを希釈目的で自然砕石と混合する、このような行為は廃棄物の処理には当たらないということでございまして、混合されたものにつきましては、廃棄物と廃棄物でないものを混合したものとして取り扱っていくべきもの、こういうことと解釈してございます。
※参考資料3「環境省から各都道府県サンパイ所管部署長あて通知」
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環廃産発第1303299号
平成25年3月29日
各都道府県・各政令市産業廃棄物行政主管部(局)長 殿
環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課長
行政処分の指針について(通知)
https://www.google.com/url?q=https://www.env.go.jp/hourei/add/k040.pdf&sa=U&ved=0CBoQFjAIOApqFQoTCJ3Pj8iflMkCFSPapgodv3gNSQ&client=internal-uds-cse&usg=AFQjCNHn8XQ6PWIG5LSQflPDNx5098ua_g
第2 産業廃棄物処理業の事業の停止及び許可の取消し(法第14条の3及び第14条の3の2)
1 趣旨
産業廃棄物処理業の許可制度は、産業廃棄物の処理を業として行うことを一般的に禁止した上で、事業の用に供する施設及び事業を行う者の能力が事業を的確かつ継続的に行うに足りるものとして一定の基準に適合すると認められるときに限って許可することにより、産業廃棄物の適正な処理を確保するものである。したがって、その基準に適合しないおそれがあると判断されるに至った場合には、直ちに事業の停止を命ずるとともに(法第14条の3)、その基準に適合しないと判断されるなど、法が許可を取り消すべき場合として定める要件に該当するに至った場合には、速やかに許可を取り消す等の措置を講ずること(法第14条の3の2)。
なお、産業廃棄物処理業者が不法投棄等の重大かつ明白な違反行為を行っているにもかかわらず、原状回復責任を全うさせること等を理由に許可の取消処分を行わず、事業停止処分等にとどめる事例が見受けられるが、当該運用は、不法投棄等の違反行為を事実上追認するものであり、適正処理を確保するという許可制度の目的及び意義を損ない、産業廃棄物処理に対する国民の不信を増大させるものであるばかりか、違反行為による被害を拡大させかねないものであることから、著しく適正を欠き、かつ、公益を害するものである。したがって、こうした場合には、躊躇(ちゅうちょ)することなく取消処分を行った上で、原状回復については措置命令により対応すること。
〔当会解説〕
不法投棄などの違反行為を行った産業廃棄物処理業者には、許可を「躊躇(ちゅうちょ)することなく取消処分を行った上で、原状回復については措置命令により対応する」となっています。大同特殊鋼および佐藤建設工業は無許可で不法投棄を重ねてきたのですから、より厳正に対処しなければなりません。この点、役所で構成される鉄鋼スラグに関する連絡会議は、国土交通省と渋川市の横槍により、間違った方向に向かっていると考えざるを得ません。
第8 措置命令(法第19条の5)
1 趣旨
(1) 都道府県知事は、処理基準又は保管基準(以下「処理基準等」という。)に適合しない産業廃棄物の処理が行われた場合において、生活環境の保全上の支障を生じ、又は生ずるおそれがあるときは、必要な限度においてその支障の除去又は発生の防止のために必要な措置を講ずるように命ずることができることから、これらの者による不適正な処分を把握した場合には、速やかに命令を行い、生活環境の保全上の支障の発生を防止し、又は除去されたいこと。なお、この場合において、処理基準等に違反する状態が継続している(不法投棄の場合であれば、廃棄物が投棄されたままの状態が継続している。)以上、いつでも必要に応じ命令を発出することができること。
(2) 法第19条の5は、「命ずることができる」と規定されているところ、同条は生活環境の保全を図るため都道府県知事に与えられた権限を定める趣旨であるから、不適正処理された産業廃棄物の種類、数量、それによる生活環境の保全上の支障の程度、その発生の危険性など客観的事情から都道府県知事による命令の発出が必要であるにも関わらず、合理的な根拠がなく権限の行使を怠っている場合には、違法とされる余地があること。
〔当会解説〕
ここで重要なのは、知事は必要な措置を「命ずることができる」、と規定されていることです。この意味は、同条は生活環境の保全を図るため都道府県知事に与えられた権限を定める趣旨であるから、国土交通省や渋川市が、知事の命令に影響を与えようと、あれこれスラグ連絡会議等の場で口を挟んだりすることは言語道断であり、自ら間違った方法で行った環境基準調査値を盾に取って、「安全基準値内だから」などと主張し、本来、群馬県知事が発しなければならない措置命令に、国や渋川市が影響を与えることは、「違法とされる余地」があると考えるべきではないのでしょうか?
※参考資料4「スラグ産廃と特定できない」との報道についてはこちらを参照ください↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/1822.html