市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

八ッ場ダム建設工事に係る土地収用法に基づく6.26公聴会の模様(その3)

2015-11-02 22:24:00 | 八ッ場ダム問題
■引き続き1日目の公聴会が続きます。

【議長】 次は、渡辺洋子さんから公述をしていただきます。渡辺さんは壇上に上がり、公述人席に着いてください。また、公述人からは起業者への質問の希望がありますので、国土交通省関東地方整備局の方も壇上に上がり、起業者席に着いてください。
          (公述人・起業者登壇)
【議長】 準備はよろしいですか。
【公述人(渡辺)】 はい。
【議長】 大丈夫ですか。起業者側、いいですね。現在の時刻は5時23分です。ただいまから公述を開始し、30分間で終了するようお願いいたします。また、終了の10分前、5分前、1分前に呼び鈴で合図をするとともに表示によりお知らせしますので、目安にしてください。また、終了時間までに終了しない場合には公述の中止を命ずることとなります。プロジェクターを使用しますので、少し照明を落とします。
【公述人(渡辺)】 渡辺洋子と申します。
【議長】 開始してください。
【公述人(渡辺)】 よろしくお願いします。
 八ッ場ダム建設工事は、土地収用法第20条が定める、ダム建設により失われる利益はるかに上回る公益性があるとは到底認められません。したがいまして、事業認定に反対する意見を述べさせていただきます。
 構想発表から63年目となる八ッ場ダム事業は、破壊された水没予定地住民の生活を再建するために、現地再建ずり上がり方式を掲げたものの、机上の代替地計画は地形・地質に大変無理があり、これまでに4分の3以上の世帯が流出しました。何世代にもわたる住民の方々の犠牲は計り知れないものがあります。
 八ッ場ダムは国の名勝吾妻渓谷をダム本体建設地とし、渓谷上流部と天然記念物川原湯岩脈、自然湧出の川原湯温泉の源泉などを沈めます。急峻な岸壁と自然林が織りなす景観と山懐の出湯は、多くの観光客、数多くの文人を魅了し、心身ともに癒やしてきました。ダム予定地には、鳥類の生態系の頂点に位置するクマタカ、自生地が大変少ないカザグルマなど、絶滅が危惧される多くの動植物が生息しています。かけがえのない自然の宝庫をダムに沈めることは、今この場にいることができない後の世代の人々に、取り返しのつかない大きな損失を与えます。
 また、水没予定地は、江戸時代の浅間山大噴火によって発生した天明泥流が覆った土地であり、全域が遺跡であると言っても過言ではありません。同地で出土しつつある、おびただしい天明浅間災害遺跡は未曽有の災害に遭遇した当時の村人の生活や復興の軌跡をまざまざとよみがえらせる貴重な歴史遺産です。天明泥流の下からは、中世から縄文各期にわたる遺跡が出土しています。考古学者を含む300名以上の文化人が、八ッ場ダムによる自然と文化の破壊を憂い、ダム予定地の自然の保全とともに、これら遺跡を保存する必要性を訴えています。
 一方、八ッ場ダムの建設目的を見ると、先ほど利根川の洪水調節というお話がありましたが、赤城山の山麓での災害、犠牲は、利根川の洪水調節によって防げるものではありません。あれは戦争中の乱伐による土石流の発生によるもので、八ッ場ダムとは全く関係がありません。第2の目的は都市用水の供給ですが、関東地方では水需要が年々減少し、人口減少時代を迎えている今、新たな水源開発の必要性は皆無です。群馬県では、八ッ場ダム事業によって、豊富で水質のよい地下水を水道用水に使う割合を減らされ、百害あって一利なしと言えます。第3、第4の目的もありますが、次に公述をされる方々が詳しく説明されると思いますので省きます。
 このように、いずれの目的も理にかなっているとは到底言えず、住民を強制的に故郷から立ち退かせる理由にはなり得ないと考えます。不要なダム建設の見直しと、住民の真の生活再建、地域再建こそ、公共事業が果たすべき急務だと考えます。
 では、関東地方整備局、起業者の方々に質問させていただきます。第1の質問は、今回の事業認定にかかわるものです。この事業認定の当事者は、今も水没予定地に住まわれている方々だと思います。4月10日に行われた事業認定の申請、その後の公告・縦覧について、いつどのような形で、当事者である水没予定地住民と水没関係5地区住民に告知したのでしょうか。
【議長】 では今の質問について、起業者側、お答えください。
【起業者(土屋)】 事業認定の申請につきましては、申請日に記者発表を行っており、当事務所のホームページでも公表しております。以上です。
【公述人(渡辺)】 ホームページを、水没予定地の方々、皆さんが見られると思われるでしょうか。これは1つの事例ですけれども、非常に重要なことだと思います。情報公開あるいは説明責任ということが、今、非常に重要だと言われている時代になっていますけれども、八ッ場ダムは、計画が立案された半世紀前の建設省の姿勢をそのまま引きずっているのではないでしょうか。このことは、次に質問する八ッ場ダム事業の安全確保という問題を考えるとき、とりわけ重要です。八ッ場ダムの現地は地質が脆弱な上、ダム湖を人工造成の代替地を含む住宅地が取り囲むという、全国的に見ても類例のない特異なダムであるからです。しかし、地質の問題とこれへの対策について、関東地方整備局が住民に実情を伝えていないという証言が、地元の方々からしばしば聞かれます。危険を回避するためには、あらゆるリスクを想定し、対応策を講じる必要があると思いますが、八ッ場ダム事業では、安全性が当面の別の目的を優先するためにないがしろにされてきたということはないでしょうか。まず、ダム本体工事についてパワーポイントで示したいと思います。
 現在の本体工事予定地について、1970年、ここに国会の答弁を抜き出してみましたけれども、「熱水変質をした地質がずっと続いている」、「3メートル幅の断層がある」、「岩盤に節理が非常に多い」などの理由で、「大型ダムの建設場所としては極めて不安な状況」とあります。しかし、建設省は当時、本格的な地質調査を行うことなく、当初の建設予定地から600メートル上流の現在地にダムサイトを変更しました。これは、最初の起業者側からの説明でもあったことです。これについて、後になってから国交省は、非常に岩盤が丈夫であるというようなことも言っていますけれども、当時、吾妻渓谷をダムに沈めることに反対する世論の高まりがありました。これを回避するという目的で、地元のダムの反対運動を、力をそぐためにこういうことが行われたと考えられます。
 それから30年以上たった2008年、最初は2007年12月に関東地方整備局が発表したのですけれども、ダム本体の設計変更を行いました。本体の掘削深度を18メートルから3メートルに、コンクリート量も半分以下に減らすことを提案し、2008年にこれを決定したわけですけれども、ここに「コスト縮減技術委員会」という言葉があります。これは2004年に八ッ場ダムの事業費を起業者が倍増させたときに、これに反発した関係都県の意向を受けて設置された委員会です。このときの2007年12月13日の起業者の記者発表によりますと、コスト縮減技術委員会の提言を受け、ダム本体のスリム化などのコスト縮減を図ると説明しています。つまり、コストを縮減するためにダム本体を小さくしたということになります。
 ところが、これは、その後で出された、国交省が発注してコンサルタント会社から国交省に提出された報告書ですけれども、ここに、変質帯、断層、それから低角度割れ目というような言葉がありまして、1970年代と同じことがまた繰り返されているわけです。こうした情報開示資料を見る限り、ダムサイトの地質についての不安が払拭されていないという印象を受けます。
 2番目の質問です。現在、ダムサイト予定地では本体工事が始まっていますが、基礎掘削の結果、想定外に熱水変質帯が広がっていたり岩盤の節理が深刻であった場合は、ダム本体工事の設計変更を改めて行うのか、明らかにしてください。
【議長】 ただいまの質問についてお願いします。
【起業者(小平)】 では、ただいまの質問についてお答えします。これまでに行いました地質等の現地調査の結果、ダムサイト予定地の岩盤はダムを建設する上で問題ないことを確認しております。なお、ご質問のありました、基礎掘削を行って、実際に現れた岩盤の状況によっては、設計内容を照査することを考えております。
【議長】 続けてください。
【公述人(渡辺)】 はい。安全確保を考えるのであれば、あらゆるケース、最悪の場合を想定して対策を講じ、あるいは予算を確保する必要があると思います。これまでの八ッ場ダム事業は、計画変更が繰り返されてきたことからもわかるように、予算も工期も甘い予測に基づいて計画を立ててきたのではないでしょうか。これが、地元の方々、そして関係住民の予想を裏切り続けるという結果を招いたのではないでしょうか。それが今後も繰り返されることを私たちは非常に危惧しております。
 次に、ダム湖予定地の周辺の安全性の問題に移ります。これは、専門家の方が、ダム湖予定地周辺は“地すべりのデパート”だということを発言したことが非常に注目されましたけれども、実際に八ッ場ダムの予定地周辺は、熱水変質帯、応桑岩屑なだれ堆積物、崖錐堆積物などの脆弱な地層が広く分布しています。これが、水位を上下させることによって地すべりを誘発させるのではないかと心配されているわけです。関東地方整備局は、平成8年度から12年度に検討した結果、ダム湖予定地周辺で地すべりの可能性があるところが22カ所あるとしていますが、現在、地すべりの対策箇所は、既に実施済みの箇所を含めて3カ所のみ。総事業費の0.1%の対策でしかありません。平成23年の国交省による八ッ場ダムの検証報告では、地すべり対策の見直しが行われました。その結果、11地区で約110億円の費用が必要とされました。また、代替地の安全対策に新たに約40億円が必要と試算されました。しかし、この合計150億円でも、専門家によっては、これではまだ不十分だということを言っている方もいます。そして、今、実際にこの2週間、群馬県知事選が行われていますけれども、6月23日、つい先日の上毛新聞では、現在の群馬県知事、おそらくまた知事選で当選される可能性が高いと思われる知事が、総事業費の上乗せは許さないと言っています。一体どうするのでしょうか。
 3番目の質問にいきます。現地では、地すべり対策のために、平成25年、一昨年からボーリング調査が行われ、代替地の安全対策のために、昨年からボーリング調査を行ってきました。これがボーリング調査を行っている写真です。これらの調査を行った結果、地すべり対策と代替地の安全対策は実施されるのか、されないのか、非常に地元の方々から心配の声が出ています。これについて具体的にお答えいただきたいと思います。
【議長】 ただいまの質問についてお答えください。
【起業者(塩谷)】 ではご回答いたします。ご質問のとおり、対策の必要性有無を含め、地すべり等の対策は平成25年7月から、代替地の安全対策は平成26年2月からボーリングによる地質調査を順次実施しています。今後、それらの結果を踏まえて、地質や地すべり等の専門家の助言を得ながら、対策等の必要の有無や内容の検討・設計を行うというふうな形で考えております。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(渡辺)】 現在の事業費には、この対策費は入っていません。そして、先ほどの群馬県知事のアンケート調査にもありましたけれども、県民の安全を一番考えなければいけない群馬県知事すらがああいうことを言っている状況ですから、関係都県は全く事業費増額に応じる気はないということをはっきり検証の場でも言っています。どのようにして事業費をつくり出すのでしょうか。安全対策の費用をどうやってつくり出すのでしょうか。
【議長】 安全対策の経費をどう捻出するのかというご質問だと思います。よろしくお願いします。
【起業者(小平)】 ご質問にお答えします。現在、八ッ場ダム建設事業につきましては、早期完成に向けて取り組むとの方針の下で、事業全体のコスト縮減により対応することを基本としていまして、総事業費以内での完成を目指して最大限の努力をしてまいりたいと考えております。
【議長】 続けてください。
【公述人(渡辺)】 総事業費以内で安全であれば誰も問題はないと思うのです。それが、今、調査をしているということは、対策が必要になる可能性が高いからではないでしょうか。国交省みずからが150億円という試算を出していたものを、自民党政権になってから、それをまた伏せてしまった。一体、この事業費はどうなるのでしょうか。安全対策をせずに、早くダムを完成すればいいのでしょうか。
 これが代替地の簡単な絵ですけれども、八ッ場ダム湖の予定地の周辺というのは、このように、ほかのダム、いろいろ地すべりが起きているダムというのは住宅街がないところがほとんどなのです。ところが、代替地を、ずり上がり方式で引き上げましたので、たくさんの方たちがダム湖の周辺に住むわけですから、安全対策は絶対に行わなければいけないわけです。しかも八ッ場ダムというのは、夏場には洪水をためるために、水位を最低でも28メートル、最高では40メートル以上下げることになっています。これはダム湖観光にも大きな打撃になる問題ですけれども、それはさておきまして、このような意向調査資料というのを、2005年ですね、国交省八ッ場ダム工事事務所は出しています。この黄緑色のところが盛り土造成地、そして茶色のところが切り土造成地です。そこに、これは川原湯ですから「湯」と書いてあって、番号が振ってあります。この時点、2005年時点では、代替地はまだ完成している状況からはほど遠い、またインフラ整備もできていない状況でした。先ほど、不動産業者のようだという話が、国交省について地元の住民からあったビデオが流れましたけれども、単なる不動産業者ではなくて、悪徳不動産業者という言葉すら私は聞かされました。これも地元の方々がおっしゃっていたことです。実際にその立場になれば当然のことだと思います。そして、これを縦に断面で切りますと、30メートル以上の盛り土造成地。このような例は、群馬県内はもとより全国的に見てもないわけです。しかも、ここでダム湖の水位を上下させて地下水に変動を与えるという計画です。これは川原湯地区の打越代替地を対岸の川原畑地区から眺めたものですけれども、今現在、水をためていないから大丈夫だということで、非常に急峻な地形の背後に住民の方たちは住まわされています。暫定のり面ということで、完成のり面をどういう形でどのように安全対策をとってつくるかということも、まだ明らかにされていません。
 これは、川原畑地区のほうの代替地の基盤の写真が、たまたま本体工事の、今、基礎掘削の作業ヤードのところで、かなり前から出ていますので、それを、2011年に撮った写真ですけれども、非常に特殊な地層です。これが酸性熱水変質帯というものですけれども、山を切ったことによって空気に触れて、変質が非常に進んでいる。そのために、昨年から、2010年につくった、このすぐそばを走っている付替国道の変形が始まっています。昨年10月に撮ったのがこちらの写真ですけれども、亀裂が3センチでした。それを今月、測り直してみましたところ、亀裂が7センチ以上に広がっています。しかし、ここは、先ほども地元の方のお話に出ましたけれども、非常に重要な道路で、嬬恋や草津に行く方たちが毎日、頻繁にたくさん通っている道路です。ですから、これを閉鎖することなく、今、この道路を管理している群馬県は、こののり面のところで地すべり計を設置しまして、東京の業者さんに頼んで地すべり調査を昨年から開始しています。6月5日の県議会・産経土木委員会では、今の梅雨時、それからこの後の台風などの大雨のときに雨が降る状況によって、この地質が変化する、それを見てから秋以降に結果をまとめて、対策をどうするかを決めると言っています。はっきりと、これは国土交通省がつくった道路ではあるけれども、今は県が管理しているので、調査費用も対策費用も全て県が持たなければならないというふうに答弁をしています。
 果たして、これは非常に重要な国道ですけれども、付替国道の問題としてクローズアップされましたけれども、ここは代替地の一部なわけです。代替地そのものが湛水によって危ないのではないかと言われてきたのですけれども、今現在、まだ水をためていない状態でこういうことが起こっている。ほんとうに大丈夫だろうかということを心配せざるを得ないわけです。
 これが、今、基礎掘削によって発破作業をしている図ですけれども、100メートルのところに赤いラインが引いてあります。吾妻渓谷がこちら側にあって、100メートルよりちょっと離れたところに国道145号、付替国道が走っています。これは川原畑地区の代替地にあり、対岸の川原湯地区のほうでも、地元の方々からも聞いていますけれども、熱水変質帯はやはり川原畑ほどではないけれどもあるということで、非常に心配している方たち、声は上げられないけれども心配している方たちがおられます。
 八ッ場ダムにおいては、これから試験湛水ということを、本体建設ができ上がったらやるわけなのですけれども、先の事例として、近畿地方整備局がつくった奈良県の大滝ダムというところが試験湛水中に地すべりが発生して、工期が2003年度から2012年度までに延長し、対策費用も308億円かかりました。このとき、高齢の住民の方々が、廃校になった小学校の校庭の跡にプレハブ小屋を建てて、そこに無理やり住まわされてしまって、命を短くしてしまった方々もおられたというお話を聞いています。このような事例が起きており、また荒川の上流の滝沢ダムでも地すべり対策で工期が延びるということが起こっている今現状の中で、八ッ場ダム、非常に今後、心配です。
 最後、まだほかにも質問がありますけれども、ちょっと1つ絞らせていただきます。八ッ場ダムにおいても、試験湛水中あるいはダム運用後に、地すべりなどの災害が発生する可能性がありますが、災害が発生した場合、誰がどのような責任をとるのでしょうか。お願いします。
【議長】 ただいまの質問についてお答えください。
【起業者(藤原)】 回答させていただきます。ダムの建設にあたっては、試験湛水を行うことで、湛水に伴う地すべり等に対する安全性を最終的に確認することとされており、八ッ場ダムについても同様に考えております。試験湛水時に貯水池斜面に異常が確認され、ダムの本格運用に支障となるおそれがあったとして、ダム事業者が必要な対策を検討し、それを講じた事案があることは承知しております。また、湛水に伴う地すべりが発生し、ダムの運用に支障となるおそれがある場合には、原因究明も含め必要な検討を行い、適切に対応していきます。いずれにしましても、湛水に伴う地すべり等については万全を期していきます。
【議長】 続けてください。
【公述人(渡辺)】 今、ダム建設に、ダムをつくることに支障があったということは承知しているというお話は、ご答弁はあったのですけれども、地元の方々の生活に支障があったというご答弁がなかったのが非常に気になります。大滝ダムもそうでしたけれども、八ッ場ダム、今日も何人もの公述の方たちがおっしゃっているように、下流都県の人たちが、早くつくってほしいと言っている方たちが、一般の住民の中にいません。地元の方々の中で早くつくってほしいと言っているのは、早くダムの、今までの重荷から解放されたいという思いでいらっしゃると思います。ダムそのものによる治水や利水の必要性を感じて早くつくってほしいと言っている方がいないダムで、そのダムが支障があったとしても誰も困りませんけれども、そこに住んでいる方たちの生活に支障があったら、私は大変なことだと思います。
 先ほどの質問に続きますけれども、ダム湖予定地周辺の住民がこうした災害によって被 害をこうむった場合、国交省はどのような補償措置を講じることにしているのか、具体的 に明らかにしてください。
【議長】 ただいまの質問に対して回答を願います。
【起業者(藤原)】 回答いたします。湛水に伴う地すべりが発生し、ダムの運用に支障となるおそれがある場合には、試験湛水時であればダム事業者が、ダム運用時であればダム管理者が、原因究明を含め必要な検討を行い、適切に対応していきます。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(渡辺)】 「ダムの運用に支障がある場合は」という言葉があったのですけれど、当然ながら、住民の生活に支障がある場合も、それは考慮に入れられるわけですよね。
【議長】 先ほどの回答はダムの運用に支障が生じたときということでしたけれども、例えば湛水による影響が住民生活に及んだときの対応はどうなるのかというご質問だと思いますが、それについてお答えください。
【公述人(渡辺)】 考えていないのですか。
【起業者(藤原)】 同様の回答になりますが、原因究明を含めまして必要な検討を行い、適切に対応をしてまいりたいと思います。
【議長】 公述を続けてください。
          (傍聴人より発言あり)
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(渡辺)】 補償をするということを考えていらっしゃらないのでしょうか。
【議長】 ご回答願います。
【公述人(渡辺)】 想定外なのでしょうか。
【起業者(藤原)】 繰り返しになりますが、原因究明を含めて必要な検討を行い、適切に対応してまいります。
【公述人(渡辺)】 繰り返しは結構です。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(渡辺)】 私たちは、この八ッ場ダムについて、実際に地元の方たちが大変な反対運動をされていたときに、都会に住んでそれを知らなかったことを非常に悔いております。ほんとうに申しわけないと思っています。今までの犠牲に対して何とおわびしてもおわびできないと思っています。ですから、これから地元の方たちがさらに犠牲になることは、そのために私たちの税金が使われることには絶対に反対です。そのことをよく考えていただきたいと思います。終わります。(拍手)
【議長】 ありがとうございました。降壇してください。
          (公述人・起業者降壇)
【議長】 それでは、18時15分までの間、休憩といたします。
          ( 休 憩 )
【議長】 次は、嶋津暉之さんから公述をしていただきます。嶋津さんは壇上に上がり、 -58- 公述人席に着いてください。また、公述人からは起業者への質問の希望がありますので、 国土交通省関東地方整備局の方も壇上に上がり、起業者席に着いてください。
          (公述人・起業者登壇)
【議長】 準備はよろしいでしょうか。
【公述人(嶋津)】 はい。
【議長】 準備はよろしいでしょうか。
 現在の時刻は6時15分です。ただいまから公述を開始し、30分間で終了するようお願いいたします。また、終了の10分前、5分前、1分前に呼び鈴で合図をするとともに表示によりお知らせしますので、目安にしてください。なお、終了時間までに終了しない場合には公述の中止を命ずることとなります。プロジェクターを使用しますので、少し照明を落とします。
 それでは公述を開始してください。
【公述人(嶋津)】 埼玉の嶋津と申します。私のほうからは、八ッ場ダム事業が必要性を喪失してしまっているということについて公述いたします。座ってしゃべらせていただきます。
 八ッ場ダムには4つの目的があります。1つは利根川の洪水調節です。これは虚構だということですね。八ッ場ダムはもう利根川の治水対策として無意味なものになっているということです。
 これは利根川の治水基準点、八斗島の年最大流量の推移を見たものです。カスリーン台風が昭和22年に来ました。1947年ですね。ここで毎秒1万7,000トンになっていますが、これは実際には1万5,000トン、毎秒そんなものなのですけれども、この洪水で利根川の流域に被害があったということで、そしてその5年後、1952年に八ッ場ダムの構想が浮上してくるわけであります。ただ、このカスリーン台風は、先ほど神原さんがお話しされたように、カスリーン台風の再来に備えるためにということで八ッ場ダムの構想が浮上したわけでありますが、皮肉なことに、カスリーン台風の再来に対しては八ッ場ダムの治水効果はゼロだということは、国交省がみずからの計算結果で示しているわけであります。これがその新聞記事であります。
 その後はどうかというと、これは政府答弁書で、政府が答えたものですけれども、その後、1951年以降、利根川本川では破堤がない、越流はないと政府が認めているわけであります。要するに、利根川ではカスリーン台風後に河道改修が進められて、江戸川を含む本川では過去65年間、洪水時の越流がなくなっているのです。だから浸水被害があっても、これは内水氾濫とか支川の氾濫なのです。本川からの越流はないわけであります。それをもう一度確認したいと思いますけれども、これは先ほど見ていただいた八斗島地点の年最大流量です。このカスリーン台風の後、たまに大きな洪水は来ますが、そこではもう、本川の越流はなくなっているということです。それで、過去65年間をとって一番大きな洪水というのは、平成10年、1998年の洪水であります。このとき、どういう状態であったかということを確認したいと思います。これは八斗島地点での洪水の水位の変化を見たものです。このように水位は上がるわけでありますが、そのとき、最高水位というのは堤防の一番てっぺん、天端から4メートル以上、下を流れておりました。十分に余裕がありますね。利根川で確保すべき堤防の余裕高は2メートルですから、その倍以上の余裕があるということです。ではそのとき、八ッ場ダムがあったらどれぐらい効果があるかということを、実績流量を使って計算してみました。わずか13センチだけです。4メートル以上、下を流れている洪水を13センチ下げても何の意味もないではないですか。
 これをもう少しわかりやすく、現場のイメージで示してみたいと思います。堤防があって、そこから4メートル以上、下を洪水は流れている。そこで13センチ下げても何の意味もないですよね。利根川の治水対策として意味が無い。そういう効果しか持ち得ないのが八ッ場ダムだということであります。
 ということで、今のところのまとめですけれども、カスリーン台風後に河道改修が進められて、もう利根川は十分な流下能力を有するようになっております。ですから過去65年間、洪水時の越流はなくなっているわけです。ですから、大きな洪水で浸水被害が起きることがあっても、それは、本川からの越水ではなくて内水氾濫あるいは支川の氾濫、そういうものです。八ッ場ダムがあっても何ら軽減できない、そういう浸水被害だということです。それで、八ッ場ダムの効果は、先ほど見たように、堤防余裕高に対してほんのわずかなものであって、意味を持たないということです。
 ところが、事業認定申請書を見ますと、この3つの洪水を取り上げて、昭和57年、平成10年、平成19年。こういう洪水が来て、利根川流域では被害があったから、だから洪水調節が必要だ、八ッ場ダムが必要だということを言っているわけであります。これらの洪水は全く、八ッ場ダムと関係ないですよね。全く効果がないわけであります。ということで、これを踏まえて起業者に質問します。この3つの洪水において、まず利根川・江戸川本川からの越水があったのかということ。これを確認させていただきます。もう一点は、この3つの洪水において、仮に八ッ場ダムがあった場合、浸水被害の軽減に八ッ場ダムが寄与したのかどうか。そこを明らかにしてほしいと思います。答えは簡潔にお願いします。
【議長】 2つの質問についてお答えください。
【起業者(小宮)】 お答えいたします。まず1つ目の質問、昭和57年9月台風など、3つほど挙げられておりますけれども、57年9月の台風18号、平成10年の台風第5号、平成19年の台風第9号において、利根川や江戸川の本川からの越流はありません。
【公述人(嶋津)】 はい、ないということですね。
【起業者(小宮)】 次のご質問にお答えいたします。ご質問のことでございますけれども、これにつきましては、実際、算出をしていないということです。お答えはできません。
【公述人(嶋津)】 できない。ということは、まず越水がないのだから、八ッ場ダムは浸水被害の軽減に役立つはずがないですよね。そのことはお認めになりますね。
【議長】 お答えください。
【起業者(小宮)】 まず、利根川に係る治水計画ですけれども、これは実績洪水を対象としているわけではありません。
【公述人(嶋津)】 そういう話はいい。この洪水でどうかを私は聞いているのです。
【起業者(小宮)】 カスリーン台風……いいですか。
【議長】 お答えください。
【公述人(嶋津)】 私はそういう経過の話を聞いているのではない。この洪水でどうかを聞いているのです。
【起業者(小宮)】 すみません。議長から答えるように指示があるので、お答えしてよろしいでしょうか。
【公述人(嶋津)】 いや、議長、ではこの洪水に対してどうかを答えるよう、求めてください。
【議長】 この3洪水が仮にあったとした場合に、被害が生じたのかということですか。
【公述人(嶋津)】 洪水の被害に八ッ場ダムは役に立ったかどうかということを明らかにしていきます。
【議長】 ではその点についてお答えください。
【起業者(小宮)】 ちょっと繰り返しになりますけれど、ご質問のことにつきまして、算出をしていないということですので、お答えできませんというのがお答えでございます。
【公述人(嶋津)】 ですけれど、越水がないのだから、八ッ場ダムで多少、水位を下げたって、越水がもともとないのだから、被害の軽減に役立つはずがないではないですか。それは認めるのですね。
【議長】 お答えください。
【起業者(小宮)】 これも繰り返しになります。治水計画は実績洪水を対象にしていることではないということですので、計画規模の洪水が発生していないことや、江戸川や利根川で……。
【公述人(嶋津)】 わかった。もういい。計画の話を聞いているのではないから。
【起業者(小宮)】 とめましょうか。
【議長】 では続けてください。
【公述人(嶋津)】 しようがないね。これは、とにかく、では認めたくないから答えないだけですよね。
【起業者(小宮)】 いや。
【公述人(嶋津)】 ではもう先に行きましょう。そこで、とりあえずまとめをします。
【起業者(小宮)】 答えなくてよろしいですか。
【公述人(嶋津)】 結構です。もう結構です。もう、同じ話しか言わないから。
 とにかく3つの洪水はいずれも、八ッ場ダムの洪水調節が利根川の浸水被害に全く寄与しない、そういう洪水だということです。このような洪水を申請書に書き込んで、あたかも八ッ場ダムがそのような洪水の被害軽減に役立つかのような、そういう幻想を与えるのは事実を偽るものですよね。これは事業認定書の信頼性を損ねるものだと。もともと信頼性はないのだけれども。そのように、事業認定書が事実を偽ったものだということであります。
 さて、もう一つ、洪水のことについて話をします。これは、時間がないので少し簡単にしますけれども、今年の1月24日に事業認定の地元説明会がありましたよね。私もそこに参加したのですけれども、ここで利根川の洪水時の堤防漏水事故を取り上げて、この3つだったかな、取り上げて、それで、この堤防漏水を防ぐために八ッ場ダムが必要という説明をしたのです。同様なことは、これは八ッ場ダムの中止という話が一時、出たときの、6都県知事の共同声明に書いてあるのですけれども、2001年に加須市で漏水事故がありました。こういう利根川の漏水事故が洪水時にあるから、だから八ッ場ダムが必要だということを、6都県知事は全く科学的な知識なしにしゃべっているわけでありますけれども、しかし考えてみてください。堤防の漏水は堤防を強化することでしか防げないのです。この加須市の大越の話なのですけれども、私のほうで計算してみました。八ッ場ダムがあった場合、どれぐらい漏水量を減らすことができるのか。わずか3%程度です。誤差範囲です。堤防の漏水は堤防の強化で防止すべきであって、八ッ場ダムにその効果を期待するのは筋違いで非科学的なのです。そういうことを1月24日の説明会でも話したし、今日の最初のそちらの公述でも話をしていましたね。ということで、このことについて質問します。①だけで結構です。仮に八ッ場ダムがあった場合、この3つの堤防漏水事故で漏水を防止できるのかどうか。漏水量がどの程度減るのかを明らかにしてほしいと思います。
【議長】 では、ただいまの質問についてお答えください。
【起業者(小宮)】 お答えいたします。まず、今、漏水をなくすためにも八ッ場ダムの洪水調節が必要だというご説明がありましたが、そういった説明をしたという事実はございません。説明会では、利根川における過去の主な洪水を示し、漏水、あと堤防の被害が発生したことを写真で示し、行ったものです。これらの洪水被害については、河道の整備はもちろんのこと、洪水調節施設の整備も行うことにより洪水流量を低減させ、想定される計画高水流量を安全に流下させることをお示ししたものです。
【公述人(嶋津)】 もう結構です。また、計画の話をしていますから。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(嶋津)】 これについて答えてください。この3つの洪水を取り上げたわけですけれども、漏水事故、利根川の堤防漏水。これで、もし八ッ場ダムがあって、効果があるのですか。漏水を減らすことができるのですか。それを明らかにしてください。
【議長】 八ッ場ダムと漏水防止というものの効果はつながっているのかどうかというご質問なので、それについてお答えください。
【起業者(小宮)】 今言いました、堤防漏水を取り上げて、それらの堤防漏水をなくすために……。
【公述人(嶋津)】 いや、これに答えてください。計画の話をしているから、もういいです。結構です。
【起業者(小宮)】 八ッ場ダムの洪水調節が必要だと説明したとありますが、そのような説明は行っていないという。
【公述人(嶋津)】 同じ話ですから結構です。
【議長】 聞いてください。八ッ場ダムと漏水防止というものが関係しているのか、それとも、説明していないということはわかったのですけれども、それは関係しているのか関係していないのか。八ッ場ダムの効果の一つとして漏水防止というのを含めるのか含めないのかということについてお答えくださいということだと思います。
【起業者(小宮)】 まずダムの計画と河道の整備というのはセットですから、河道の整備はもちろんのこと、洪水調節施設の整備も行うことにより洪水流量を低減させ想定させる計画高水流量を安全に流下させる必要があるということであります。
【公述人(嶋津)】 答えていませんので結構です。もう結構です。結構です。全然答えていない。結構です。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(嶋津)】 ということで、八ッ場ダムによる水位低下はわずかなものですから、堤防の漏水を減らす効果はほんとうに微々たる、もう誤差範囲内です。堤防の構造が脆弱だから漏水が起きるのです。それは、漏水をなくすためには、この堤防の強化をやるしかないのです。それをほっておいて、八ッ場ダムに効果があるなどと幻想を振りまくのはやめてください。
 では次に利水に移ります。時間の関係がありますので。八ッ場ダムの目的の2つ目、水道用水・工業用水の新たな確保というのが挙がっておりますが、これはまた虚構であります。利水面の必要性は、八ッ場ダムはなくなっているわけであります。先ほど何人かの方が公述されましたけれども、利根川流域、これは6都県の上水道の1日最大給水量の動向を見たものですけれども、かつては増えていました。しかし、1992年度以降は、一転して減少傾向。かなり急速に減ってきております。この20年間に、1日228万トンも減りました。この減少量は八ッ場ダムの開発水量143万トンの1.6倍にもなります。ところが国は、第5次利根川荒川フルプランという、水資源開発基本計画ですけれども、この予測ではこのように、実績はどんどん減っているにもかかわらず、予測ではどんどん伸びていくという、全く実績を踏まえない架空の予測を行って、八ッ場ダム等の新規水源が必要だと言っているわけであります。
 なぜこのように上水道の給水量が減ってきたかということですけれども、この図は1人当たりの給水量の動向を利根川流域で見たものですけれども、1人当たりのそれがどんどん減ってきているからなのです。これは節水型機器の普及等によるものであります。過去20年間で25%も減りました。すさまじい減り方ですね。節水型機器の普及等によるものですが、今後も節水型機器の普及によって1人当たりの水量の減少傾向が続くことは間違いありません。一方、人口はどうかというと、利根川流域6都県全体だとちょっとまだ 人口は増えております。東京と埼玉が少し増えているのです。ほかの4県はもう今、減少傾向ですけれども。ただ、この6都県全体の人口も、国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、2015年以降は減少傾向に変わります。その後はもうどんどん減っていくのです。ということで、人口も減っていくとなりますと、先ほど見ていただいた6都県全体の、上水道の給水量ですけれども、これはすでに減ってきているわけですが、今後も節水型機器の普及で1人当たりも減っていく。1人当たりの水量は今後も減っていく。それから人口も減っていくことになりますから、この給水量の減少が今後も続いていくことは間違いありません。これからは、水道用水の需要は縮小の一途をたどっていく。そういう時代になってきているわけであります。こういう時代において、八ッ場ダム等の新規水源開発が必要でないこと、皆無であることは明らかです。
 あと、工業用水も同様でありまして、これは利根川流域6都県の工業用水の動向を見たものですけれど、こちらのほうも過去20年間に80万トンも減っております。こういう時代なのです。水需要の規模がますます小さくなっていく。そういう時代であります。
 ただ、このことに関して、利水に関して、起業者はもう一つ別の問題を出しております。それは、先ほどの公述でもあったように、暫定水利権の問題を持ち出しております。八ッ場ダムには約毎秒11トンの暫定水利権がある。だから、八ッ場ダムをつくらないと、この暫定水利権がとれなくなりますよというおどしをかけているわけでありますが、実はこの暫定水利権という名前になっているものの、実際には八ッ場ダムなしで、ほとんど支障なく取水し続けているわけであります。特にこの中のほとんどを占める非かんがい期のみの暫定水利権がそうであります。
 その説明をしますと、非かんがい期のみの暫定水利権とはどういうものかというと、これはかんがい用水を水道・工業用水に転用したものです。特に多く抱えているのは埼玉県と群馬県です。この非かんがい期の水利権を、これは権利がないということで、八ッ場ダムで確保することが求められて暫定扱いになっているのでありますが、実際には非かんがい期というのはかんがい用水の取水量が激減しますので、利根川流域は余裕があるのです。だから、現状のままで支障を来したことがない。この非かんがい期の暫定は、古いものでは40年ぐらい歴史があるのですけれども、今まで取水に支障を来したことはほとんどないわけであります。そこで、このことについて質問です。八ッ場ダムの暫定水利権を約11トン示しましたけれども、これを、非かんがい期のみのものと、通年、1年を通しての暫定水利権、分けて示してほしい。それから、過去20年間において、利根川渇水、そんなに多くはない、ありましたけれども、それぞれにおいて、安定水利権に対して実施された取水制限率と、それから非かんがい期の八ッ場ダム暫定水利権に出された、実施された取水制限率、この数字を答えていただきたいと思います。
【議長】 では、以上、2つについてお答えください。
【起業者(小宮)】 お答えします。八ッ場ダムの暫定豊水水利権について、非かんがい 期と通年に分けてというご質問ですが、それにお答えします。まず群馬県の水道用水です けれども、毎秒……。
【公述人(嶋津)】 いや、ここの合計で答えてください。時間がないから。
【議長】 合計はありますか。
【起業者(小宮)】 わかりました。まず通年に係る暫定豊水水利権の合計ですけれども、毎秒1.957立方メートル。それで、非かんがい期に係る暫定豊水水利権の合計は毎秒9.012立方メートルです。
【公述人(嶋津)】 はい。
【議長】 2つ目のご質問に。
【起業者(小宮)】 2つ目のものについてお答えいたします。過去20年間で、利根川においては、平成8年冬、平成8年夏、平成9年冬、平成13年夏、平成24年夏、平成25年夏の6回、渇水が生じています。利根川において取水制限が行われた場合には、そのときの利根川の本川・支川の流量や利水者への影響等を勘案しながら、利根川水系渇水対策……。
【公述人(嶋津)】 そういう話はなしにして数字だけ答えてくださいよ。
【起業者(小宮)】 どうしましょうか。
【議長】 取水制限率をお答えいただければいいかと思います。ただ、取水制限率、もともとの質問の要旨のときには、主体別に違えばそれを答えてくれということでしたので、合わせてというわけには、なかなか答えにくいかと思いますけれども。
【公述人(嶋津)】 ただ、とにかくここで聞きたいのは、安定水利権に出された取水制限率と、非かんがい期の八ッ場ダム暫定水利権に出された取水制限率が違っているかどうかだけ答えてください。時間がないから。
【議長】 お答えください。
【起業者(小宮)】 まず安定水利権に関する取水制限ですけれども、平成8年冬の渇水は10%、平成夏の渇水は期間によって異なりますが、10%から30%、平成9年冬、平成13年夏の渇水、あと平成24年……。
【公述人(嶋津)】 違いを言ってくださいよ。そういう数字ではなくて。だからもう。
【議長】 暫定水利権に対して取水制限率を変えた、ですから、通常の水利権と暫定水利権で取水制限率が違うケースがあったかどうか。どういう差をつけたかというご質問だと思います。
【公述人(嶋津)】 時間がない。早く答えてください。今、あと10分と出てしまったのだから。ではもういいや。いいです。答えられないということは、差がないということでよろしいね。
【議長】 数字はありますよね。
【起業者(小宮)】 今お答えしているところだったのですが。
【議長】 すみません。暫定水利権と通常の水利権で取水制限率を違えたのは何年のときの渇水で、それは幾つと幾つだったのですかというお答えをいただければそれで。
【起業者(小宮)】 まず利水の、取水ごとに取水制限の正確な、ご質問に対しては、記 録が今ない。一概に違うか違わないかというよりも、記録がないということで不明です。
【公述人(嶋津)】 記録がないということですね。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(嶋津)】 ということですね。利水のまとめですけれども、利根川流域の水道・工業用水の需要は減少の一途をたどっているということです。これからますます縮小していくということです。そして、暫定水利権でそのほとんどを占めるのは非かんがい期のみの、八ッ場ダムの暫定水利権のほとんどを占めるのは、非かんがい期のみの暫定水利権だと。これは、実際には非かんがい期は利根川流況に余裕があるので、取水に支障を来すことはないということで、八ッ場ダムの手当ては不要だということです。
 時間の関係で次に行きます。3つ目の八ッ場ダムの目的は、吾妻川の流量維持ですね。これも虚構なのです。これは東電発電所の水利権更新で意味を失ってしまうのです。先ほどのそちらの公述にもありましたけれども、名勝吾妻峡の景観を保全するために、毎秒2.4トンの流量を確保する。これが3つ目の目的ですね。なぜ八ッ場ダム予定地で吾妻の流量が乏しいかという理由は、この上流に東電の松谷発電所の取水堰があって、そこで全量を取水しているからなのです。ところが、東電の松谷発電所、もう水利権の更新時期を迎えております。2012年3月末なのです。現在は東電の水利権更新許可申請書が、関東地方整備局、そちらです、出されておりまして審査中です。近年、ガイドラインといいまして、発電用水利権を更新する場合は、河川維持流量が法令で義務づけられているのです。今回の松谷発電所の水利権更新の申請書を見ますと、八ッ場ダム予定地で毎秒2.4トンを確保すると書いてあるのです。ということは、水利権の更新が完了すれば、八ッ場ダムの吾妻川の流量維持の目的はなくなってしまうのです。
 これが東電の水利権更新許可申請書の説明資料です。細かいので、重要な部分を取り出しますと、吾妻取水ダムから1.727トンを放流しますと。その残りの残流域で八ッ場ダムに行くまでに0.6732トン入ってくるから、合わせて2.4トンを八ッ場ダム地点で確保すると書いてあるのです。このことで質問します。まず東電から提出された松谷発電所の水利権更新許可申請に対して、関東地方整備局はいつ許可をおろすのですか。そして、この水利権更新の許可がおりれば、松谷発電所が八ッ場ダム地点で毎秒2.4トン確保するように水を流しますので、この2.4トンは八ッ場ダムなしで確保されるようになります。このことを認めるか否かということでお答えいただきたい。
【議長】 ではご回答ください。
【起業者(小宮)】 松谷発電所の水利権更新申請については提出されておりますけれども、現在、申請の内容について許可判断に基づき審査中です。書類の審査終了後、河川法に基づく必要な手続を経て許可することになりますが、現在のところ、審査期間や手続に係る期間については明らかでないため、許可の時期は明言できません。
【公述人(嶋津)】 それで2番目はどうなのですか。
【議長】 2つ目。
【公述人(嶋津)】 もっと手短に答えてくださいよ。要点のみを。時間があと五分しかなくなってしまった。
【起業者(小宮)】 ではお答えいたします。水利権の更新に伴う河川維持流量の放流に当たっては、放流口の地点の流入量が維持流量よりも小さくなった場合には、流入量の全量を取水口下流の河川に放流します。ただし、この場合には維持流量に対して不足する量を補う手段がないことから……。
【公述人(嶋津)】 答えていない。この事実を認めるか否か答えてください。
【起業者(小宮)】 必ずしも流量を確保するとは言えません。
【公述人(嶋津)】 言えない? 松谷発電所は2.4を確保すると言っているけれど、それで認めないの? あなたは。この事実を認めないということですね。
【議長】 今のご質問は、もともとこれが正しいのか誤りなのかを教えてくださいと言っているのですけれども、どちらですかという答えをまずしていただければ。
【起業者(小宮)】 そのようなことは明記されておりませんので。
【公述人(嶋津)】 何? 明記されていないというのは。
【起業者(小宮)】 一概に事実かどうかというようなものではないので。
【公述人(嶋津)】 だって、東電の水利権の更新申請書の中に書いてあるじゃないですか。何を言っているのですか。それぐらい確認して、今日、出席しなさいよ。もう時間がないからいいや。次に行こう。もう、しようがない。
【議長】 では公述を続けてください。
【公述人(嶋津)】 ということで、八ッ場ダムの目的3、吾妻川流量維持は、松谷発電所の水利権更新が行われれば、これは自動的に2.4トンは確保されますので、八ッ場ダムの吾妻川流量維持の目的は喪失するわけであります。なくなることが確実な目的を書き込んだこの事業認定申請書は無効であります。
 時間がないから、最後、発電。発電も目的に入っていますね。発電で、八ッ場ダムは発電も行うから、クリーンエネルギーを生み出すのだということを国交省は宣伝しているわけですが、実際には、この吾妻川で生み出される発電量は大きく減るわけであります。起業者の説明では、八ッ場発電所を群馬県が併設して、そして従属発電というやり方なのですけれども、年間で4,100万キロワット時の電力を生み出すことになっております。しかし、この吾妻川というのは、たくさんの水力発電所がへばりついておりまして、発電をしております。この八ッ場ダムの下流でも東電の発電所はたくさんあります。それで、八ッ場ダムに水をためるためには、東電の発電所に送っている水量を大幅に減らさなくてはいけません。ということで、それらの発電量が大きく減少します。
 どれぐらい減るかということで、国交省のデータを入手して計算してみました。そうすると、年間で1億4,100万から2億500万キロワット時になるのです。これは八ッ場発電所が新たに生み出す4,100万キロワット時の3から5倍。その発電量が失われてしまうということです。すなわち、八ッ場ダムができると、新たにクリーンエネルギーを生み出すのではなくて、水力発電量は大幅に逆に減ってしまうということです。
 ということなのですけれども、起業者の試算では、なぜかこの減電量がわずかになっているのです。400万キロワット時。先ほどお示しした数字の15分の1から10分の1なのです。なぜこんなに結果が違うかということで、そちらの計算の内容を点検しました。すると現実に合わない仮定が幾つも書かれている。恣意的な計算が行われているわけであります。その一つ、八ッ場発電所で使った水、放流水を、東電の原町発電所まで導水して減電量を減らすという仮定が置かれているのです。ところが、今回、群馬県が開示した資料、八ッ場発電所の全体計画には、この導水管の計画は全く入っていないのです。現実に計画がないものを盛り込んで、そちらは減電の計画をしているわけです。ということで、時間がなくなってしまったけれども、この導水管を設置する計画はあるのかということ。そして計画があるならば、どれぐらい金がかかるのか。どこがその導水管を設置するのかを、時間がないから簡潔にお答えください。
【議長】 起業者側、ご回答願います。
【起業者(小宮)】 簡潔にお答えします。導水路施設の有無を含めた具体的計画については、今後、関係者と調整を進めてまいりたいと考えております。
【公述人(嶋津)】 今、計画はあるのですか。ないのですか。
【起業者(小宮)】 何といいますか、導水路施設の有無を含めた具体的な計画については、今後、関係者と……。
【公述人(嶋津)】 何で。計算しているのでしょう、あなたたちは。
【起業者(小宮)】 東京電力の既設の発電所については、八ッ場ダム完成後の取水条件の定まった計画はまだない状況です。
【公述人(嶋津)】 まだ計画はないということね。
【議長】 公述を続けてください。もう時間ですので、最後、まとめてください。
【公述人(嶋津)】 わかりました。ということで、4つ目の目的は、発電をすることになっているが、実際には、八ッ場ダムができることによって、吾妻川の発電量は大幅に減ってしまうということです。ということで、この発電という目的も虚構だということです。ということで、最後のまとめとします。八ッ場ダムには4つの目的があります。洪水調節、水道用水・工業用水の確保、そして吾妻川の流量維持、発電。いずれも、この目的は虚構だということです。このように公益性が欠如した八ッ場ダム建設工事に対して、事業認定を行ってはならないということであります。以上で私の公述を終わります。(拍手)
【議長】 ありがとうございました。降壇してください。
          (公述人・起業者降壇)

【市民オンブズマン群馬・この項続く】

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